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「ッー!?!?」
「あぁっ!!やっと起きた!
きわッ大丈夫かっ?!」
「…あっ…。兄ちゃん…?」
目の前には、心配そうな顔で今にも
泣きそうな兄と木で玄関の白い屋上が見えた。
「全く!何でこんな所で倒れてたんだ??
お兄ちゃんッ心配で心臓止まるかと思ったぞッ!!
しかも雨に濡れて来るなんて!!
っ…け、けしからんっ…!!実に破廉恥だッッ!」
ーー あ…。あれ…夢だったんだ…。
「ってあれっ?!
私、倒れてたの?!なんで?!」
「 コッチが聞きたい!!
帰って来たら倒れてるし、何度呼んでも起きないし
揺すってもダメだったからッ…ッ! にぃちゃ…ッにッ…兄ちゃんはなぁああーッ!」
「あっ!ごめんごめんっ!兄さんごめん!」
「ううっ…!!に…ッズズッ!にぃちゃ…ッほんとっ…ッ!!お前にもしもの事があったらってっ…!」
「はいはーい。
もう大丈夫だから泣かないでよ!
兄さん、心配してくれてありがとう。」
抱き付いたまま泣いて
剥がれない兄の背中を撫でながら
毎度の出来事に呆れていた。
ーー はぁ…。面倒くさい…。
我が兄ながら 心底面倒い。
こんなのがあの 地獄の番人
だなんて考えられない。
その異名とは かけ離れた情けない長男。
白羽 凪 は、国家公安員をしており
23歳という年齢にして、その実力はトップ幹部の中でも群を抜いていとても優秀な刑事。
が。 自我も認める相当の妹溺愛。
顔も頭も良く。背が高く型位もいいが…
つねに妹優先なので
モテるのに 直ぐ別れてしまう困った兄。
「じゃあ私、お風呂入って来るから
兄さんも着替えて来なよ。」
「ッ…そっ…そうだな。早く入って来なさい
その間に兄ちゃんが夕飯作ってくるからな」
復活した凪は、ピンクのオーラを振り撒きながら
スキップでキッチンへと向かった。
その後ろ姿を呆れながら見送った後
入浴所へ向かい少し乾いて
湿った制服を脱ぎ冷えた躯を温めた。
ーー それにしても…。
あの夢は何だったのだろうか…。
確かにあの光景は非現実的で
夢でよかったと本気で思ってるけど…。
あんなにも現実と近い感覚がしたのは始めてだった…。痛みも、物体に触れた感触だってあった。
それに…。 知らぬ間に自分が
倒れた事にも全く気づかなかった…。
あの夢は一体……?
あの不思議な少年は 何者だったの…??
「まぁ…。夢だったんだから気にしなくていいやッ!!あぁー!今日の勝負は負けたけど!!明日こそ勝つッッ!」
結局、その疑問は模索せず放置し
もう頭の中には違う話題で一杯だった。
数時間すると あの夢も薄れて
あの少年の言葉もすっかり消えていた。
ーーー もし…。 ーー
この時…少しでも。
あの異様な夢の違和感に気づいていたら…
姫和は今でも平和で幸せな
日常を過ごしていたかもしれない…。
今思えば…全てはこの日。
この夢を見た瞬間から
もう手遅れだったのかもしれない…。
だが、その事に気付く事でさえ…。
今は… まだ誰も知らない…。