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「……何してるの?」
異常すぎる程真っ赤に染まった部屋に
全身黒尽くめの男がいた。
よく見ると服はボラボロで 手には小さい刃物。
フードと前髪で隠れた小顔で 僅かに深い碧が覗いている。
男は、ゆっくり姫和の方に躯を向け
射抜く様な真っ直ぐな視線が向けられた。
その瞬間。 得体の知れぬ存在に
全身に躯が硬直し、今まで感じた事の無い感覚に 少しの興奮と恐怖を覚えた。
「 アナタは誰? 何で私の部屋にいるの?」
「…」
「後、コレどうなってんの?
何で私の部屋が増えてるの?!それに何か赤いのが飛び散っている事も気になるし…。
それ以外は全く同じなのも気になるわ。
ねぇ!どういう事なの?!」
次々に浮かぶ疑問を問うが
男は変わらず此方を見るだけで
無言のままその場を動く事としない。
ー まぁ。この際 男の正体は目を瞑ろう。
けど、この状況には答えて欲しい。
そもそも これは本当に現実??
もしかして まだ夢見てる??
ためしに頬をつねった。
「……うん。 痛い。」
大きく溜息をつきながら 顔を上げた時。
男が鼻が付きそうな程近い距離にいた。
「うわっっ!!ちょっ…?!何?!」
いっ…いつも間に?!?!ってかウソ!?
近付いて来た事に全く気づかなかった…。
コイツ! 本当に何者ッ?!
「……アイツ…」
「…え…?」
「…アイツと目を合わせるな。」
「ッへ…?!」
「声を聞いても無視しろ。」
「…え…アイツ…?」
小さいけれど
よく聞こえる声が頭の中で響いた。
男は姫和の両肩を掴み
鋭い眼でじっと見つめた。
ーー…絶対に YES と言うな…。