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スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦ってる  作者: かませ犬


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勘違い(白目)

「屋上で待つ、ね」


 階段を登りながら流し見した手紙には女子特有の可愛らしい字で簡潔に要件が書かれていた。


 手紙を裏返しても白紙で要件以外は書かれていない。


 つまり差出人は不明。


 けど、俺の靴箱に転校生───赤坂(あかさか) (すずめ)がこの手紙を入れていたのを目撃したからな。


 なんの要件で俺を呼び出すのか⋯⋯まぁ、心当たりしかない。素直に呼び出しに応じるとしよう。


「⋯⋯⋯⋯」


 それにしても今日は色々とおかしな事が起こりすぎた。転校生との出会いから始まり、彼女に巻き込まれて変なピエロ野郎と戦う羽目になった。


 死にものぐるいで逃げ惑っていたら変な能力に目覚めるし、そのせいで能力者同士の殺し合いに巻き込まれる?


 笑えない冗談だな。


「『Los Lobos(ロス・ロボス)』⋯⋯か」


 それが転校生、雀を狙ってきた組織の名前だ。俺が倒したピエロ野郎は組織の末端戦闘員に過ぎなかった。


 上から雀を攫うよう命令されただけで、奴は何も知らなかった。


 何故、雀を狙うのか?


 何故、能力者を殺すのか?


 闘いが終わった後も正直、謎だらけだ。


 真相を知っていそうな雀はピエロ野郎を回収すると言いたいことを一方的に言ってから消えていった。かと、思えば何事もなかったように学校に戻り授業を受けていた。


 ふざけるなって叫ばなかった自分を褒めてやりたい。


 俺も巻き込まれた当事者なんだから、説明くらいして欲しいものだ、まったく。


「雀と出会ってから振り回されてばかりだな」


 思わずため息を吐く。


 屋上で待つって事なら、もちろん説明はしてくれんだろうな!


 階段を急ぎ足で登り切り、屋上の扉を勢いよく開ける。そこにいる筈の人物を見て、文句の一つでも言おうと思った。


 しかし、俺の視界に入ってきたのは赤い髪ではなく⋯⋯金色の髪。


「⋯⋯⋯⋯」


 思わず閉口する。


 人違いだったからではない。そこにいる人物の格好があまりに浮き世離れしていたからだ。


 学校の屋上に、テレビのアニメから飛び出てきたようなピンクを基調としたフリフリの可愛らしい衣装を着ている者がいれば、誰だって口を閉じる。


 後ろ姿だけ見てもこの場であまりに浮いている。


 テレビの撮影会場ならまだ分かるが、ここは学校だ。なんでこんな魔法少女みたいな格好をした人が学校の屋上に?


 不審者として、通報するべきか?


 正直悩んだ。


 もしかしたらこの学校の関係者の可能性もある。通報は短絡的すぎるか?一旦、声をかけてから判断しよう。


 もし、不審者だったなら取り抑えればいいだけの話だ。


「君は⋯⋯」


 ここで何をしているんだ? そう言葉を続けるつもりだった。


 俺の声に反応して振り返った彼女を見て、俺は喉元まで出かけた言葉を紡ぐ事が出来なかった。


 そこにいたのは感情のない、人形のような少女だった。


 人間なのか、人形なのか⋯⋯彼女が瞬きするまで分からなかった。


 まるで一つの芸術を見ているようだった。


 職人の手で丁寧に造られたビスクドールのように無駄のない容貌。風に揺れる金糸を編み込んだような金髪。宝石を連想させる翡翠の瞳。


 幼さと美しさが混ざり会う甘美な毒のような美しさ。見ていてるだけで、自分のモノにしたくなる⋯⋯そんな欲を掻き立てられる、あまりに美しい少女だった。


「⋯⋯⋯⋯」


 無言の時間が続く。


 美しさのあまりに言葉を失っていたとはいえだ、俺から話しかけておいて黙るのはあまりに、無作法。


 とはいえ、何て言葉をかけたらいいのかパッと浮かんでこない。⋯⋯ん?よく観察すると、頬を涙が伝った跡がある。泣いていたのか?


「大丈夫か?泣いているようだけど⋯⋯」


 俺の声に堰き止められていたものが切れたように、宝石のような瞳から涙が零れ落ちた。


 その頬を伝う涙を止めてあげたい。そんなバカな考えが浮かんだ。




「なくしちゃったから」




 その声はあまりに悲哀に満ちていた。声を聞くだけで彼女の慟哭が伝わるようだ。


「なくした?」


「うん。大切な相棒⋯⋯」


 彼女の頬を伝った涙が地面に落ちた。


 これはただの推測だ。


 彼女には相棒と呼ぶほどに、心を許していた人物がいた。


 けど、何かしらの悲劇が起きていなくなってしまったんじゃないか?


 俺は⋯⋯そのような悲劇は起こす連中に心当たりがあった。


 ───『Los Lobos(ロス・ロボス)』!


 奴らが、彼女から大切なものを奪ったんじゃないのか?




「もう⋯⋯この世には存在しないから」




 彼女の涙は相棒───大切な人の死を受け入れるためのもの。


 悲哀に満ちていた声で、彼女は前へ進もうと決意するように⋯⋯大切な相棒への想いを振り払うように、事実のみを口にする。


 静かな怒りだ。


 そうだ。静かな怒りだ。


 自分でも驚くほど冷静に、彼女から大切なものを奪った『Los Lobos(ロス・ロボス)』に怒りの感情を向けていた。


 許せないと心から思った。


 彼女は初めてあった赤の他人。


 誰かも分からない謎の人物だ。


 普通ならこんな感情は抱かない。


 けど、俺の心は彼女を一目見た時から囚われてしまっていた。


 この感情が何かは分からない。けど、彼女の為に動きたいと思った。


「さようなら」


 俺にできる事なら何でもする!共に『Los Lobos(ロス・ロボス)』と戦おう!


 彼女に少しでも近付きたい、そんな打算こみの話をする前に彼女は空を飛んでその場からいなくなった。


 俺の声は届いていないようだった。


「⋯⋯⋯⋯」


 空を⋯⋯飛んだ。


 彼女もまた、能力者という事か。


 となると、先ほどの俺の考えは間違っていない?


 ───『Los Lobos(ロス・ロボス)』は能力者を殺そうとしている。


 能力者である彼女の相棒も、また能力者である可能性が高い。奴らのせいで彼女は大切なものを失った。


「俺がやるべき事は今のところ一つだな」


 俺が能力者である以上、『Los Lobos(ロス・ロボス)』に狙われるのは確定事項だった。


 降りかかる火の粉を払う程度の心持ちでいたが、やめだ。


「⋯⋯ん?」


 階段を登ってくる音がした。振り返れば屋上の扉を開けて駆け込んでくる赤い髪の女───雀がいた。


「間に合った!」


 俺が先にこの場にいる以上、間に合っていないのは一目瞭然だが⋯⋯まぁいいか。


「あれ、先にいたのね⋯⋯雲雀」


「見ての通りだ⋯⋯なんで呼び出した本人が後から来ているんだ?」


「それは⋯⋯色々あるのよ!それより⋯⋯覚悟は出来た? まずはそれを確認したいの」


 ───覚悟⋯⋯か。


 ピエロ野郎を倒した時、雀は言っていたな。


 能力に目覚めた以上、必ず奴らは俺を狙ってくる。逃げる事はできない。戦うしかない。だから覚悟を決めなさい。覚悟ができたなら⋯⋯共に戦う仲間として全てを話す⋯⋯だったか?


「覚悟か」


「そう、覚悟よ!今まで平穏に生活してきた貴方にはなかなか決められないと思うけど⋯⋯」


 脳裏に涙を流す彼女の姿が浮かぶ。


 許せないという思いと。彼女を護りたいという思いが込み上げてくる。


「そんなもの既にできている」


「え!嘘!」


 彼女を泣かした奴らを許すわけにいかない。


 それに能力者である彼女が奴らに狙われる可能性は高い。なら、俺が奴らを倒して彼女を危険から遠ざけるだけ。


 あわよくば、もう一度彼女に会いたい。


 奴らと戦っていればまた、縁が結ぶように彼女と会えるかも知れない


「『Los Lobos(ロス・ロボス)』を倒す。そうだろ、雀」


「うん!!」


 もし、またどこかで会えたら⋯⋯君の名前を教えて欲しい。


 俺の───初恋の人。

 

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