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スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦ってる  作者: かませ犬
愛の契り編

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契約

 本人の衣装が肌色面積の多いスケベ衣装なのもあるのだが、彼女が戦う度に服が破けて色々と見えたり、性欲丸出しのセリフで漆原に迫ったり⋯⋯色々あって読者の中でドスケベくノ一という言葉が定着した。


 戦い方はスタイリッシュでかっこいいのだが、エロさの方が前面に出てしまう。少年誌だぞ、ここと出る作品間違えたキャラクター。それはさておき。


 俺の向きからでは後ろ姿しか見えないのだが、黒い忍び装束とでも言えばいいのだろうか?時代劇に登場するくノ一のような姿をした女───爐が魅力的なお尻をフリフリしている。


 今の性別が男じゃなくて良かったと思う程度にはなんとも目に毒な光景だ。男だったら勃起してたと思う。


 お尻の動きに合わせて首元で纏めているポニーテールがユラユラと揺れているな。爐の表情は俺の向きからだと見えないが、俺の対面にいる漆原の額に青筋が浮かんでいるのは分かった。


「おい、爐⋯⋯」


「はい!貴方様の雌豚はいつでも覚悟できております!」


 服に手をかけて今にでも脱ぎそうな雰囲気をしている。なんでエロゲの世界観の俺より先に原作キャラが脱ごうとしているんだ⋯⋯不思議で仕方ない。


 とはいえ漆原の表情から、そのような展開になるとは思えない。理由は不明だが、明らかにキレている。


「いくつか言いたいことがある」


「なんでございましょうか!ワタクシ⋯⋯いつでも心の準備はできております」


「誰の許可を得て天井をぶち破った」


「⋯⋯あっ⋯⋯」


 爐が天井を見上げたのに合わせて俺も見上げてみる。人が一人通れるくらいの穴がしっかり空いているな。視線をそのまま床に落とすと、天井の破片が散らばっていた。


 俺をこの部屋に案内した時に『いい部屋だろ』って自慢していたから、漆原のお気に入りだったりしないか?なら、今の状況で漆原がキレてる理由は分かる。


「天井は後で直しておけ」


「はい!」


 あ、意外と怒ってなかった。となると別件か。


「で、お前はいつからこの部屋にいた」


 漆原の問いかけに俺も固まる。電話をかけてから登場するまでにかかった時間は約5秒。あまりに早すぎる。つまりこの部屋の天井裏で待機していた可能性が高いわけだ。


 え?いつから?


「ボスがこの部屋に入ってきた時からでございます!」


「え?───」


 つまり、全部見られていたって事?


 自分の顔が赤くなっていくのが分かる。羞恥心がやばい。赤ちゃんプレイをしている漆原もやばいが、それをあやしている俺も客観的に見ると普通にやばいやつだ。


「ワタクシに言って頂けたらいつでもボスの望み通りにしました!必要であれば今すぐにでも!」


「まな板に母性を求めるほど飢えていない」


 ガーンっと分かりやすく爐がショックを受けている。原作でも度々いじられていたが、爐は胸が控えめだ。漆原が言っていたようにまな板⋯⋯とまではいかないが、膨らみは本当に小さなものだ。


 むしろそれが良いという読者もいるだろうが、漆原はお気に召さないらしい。


 というより、ボスの醜態を見て受け入れてる爐が凄いなと思いました、はい。俺が逆の立場ならドン引きして現場から逃げてると思う。


 それくらい見ていられない光景だったぞ、あれ。俺も当事者だから⋯⋯その、辛い。今振り返ってもきつい事してたな俺。啓吾には絶対見せられない姿だった。


 対して漆原は部下に恥ずかしい姿を見られたというのに平常運転。メンタル強すぎて笑うしかない。


「爐⋯⋯」


「はい!」


「最初からいたって事はそこの女がオレ様の所有物って分かった上で殺気を飛ばしたってことか?あぁん!?」


 返事の良かった爐が黙り込む。漆原が言ってる事が正しいってことか。え?殺気なんて飛ばされたのか?全く気付かなかった。


「オレ様の懐刀だって自覚があるんならてめぇの判断で斬る対象を決めてんじゃねーよ。オレ様に失望させんな、爐⋯⋯」


「申し訳ございません」


 それもう綺麗な土下座を爐は披露する。俺の向きからだと生足だったり少し大きめなお尻だったりが見えて、眼福な光景になってる。読者歓喜な見え方だな。


 今のやり取りで分かる通り、漆原は爐に対して絶大な信頼を置いている。左腕と漆原本人が言っていたくらいだからな。それは高すぎる忠誠心であったり、爐の持つ能力(アビリティ)が主な要因だ。




 ───『契約(アクエルド)』。




 自分が決めた取り決めに対して相手が同意した場合の(・)み(・)ルールや制約を相手に課す事が出来る能力(アビリティ)。


 簡単な一例でいうと。


「今すぐリンゴを100円で買って来い」


「わかりました」


 このように相手が同意した場合、相手は100円でリンゴを買ってこなければいけない。文字通り100円で。リンゴが100円より高かった場合は制約によって買えない為、安いリンゴを探し回る羽目になる。


 逆に相手が同意しなかった場合は契約の成立とならない為、従う必要はない。そもそも買う必要はない。


 相手が納得する条件を提示、それを相手が同意した場合に成立するのが契約だ。爐の能力は相手を納得させなければ効力を発揮できない。同意を強制する力がないからだ。


 爐の能力は正直使い勝手は良くないと思う。交渉事には向いてはいるが、こと戦闘においては役に立たない。戦闘中に相手が契約しようなんて言って同意する訳がないからな。戦闘向きの能力(アビリティ)ではないのは確か。


 けど、今回のように横に漆原がいるなら別だ。力で無理やり従わせればいいだけの話だからな。どんなに理不尽な条件やルールであっても、相手に断らせない状況を作れば同意となる。


 俺の場合なら合意しなければ啓吾を殺すなんて、脅せば済む話だ。その取り決めが『啓吾を殺せ』だったら絶対に同意しない。

 

「お前はオレ様だけを見とけばいい。オレ様が命じた事を忠実にこなせばいい。オレ様に黙ってついてこい」


「はい!ワタクシはボスの⋯⋯漆原さまの伴侶として一生お傍で控えさせていただきます!」


「⋯⋯⋯⋯」


 あ、漆原が眉間にシワ寄せて頭が痛そうに額に手を添えてる。うん、まぁ気持ちは分からないでもない。原作でも雲雀たちに対して漆原の嫁だって、自己紹介したり色々とぶっ飛んだ発言を度々している。


 その度に漆原が頭を抱えてたり胃を痛めていると思うと面白くて仕方ない。内心でもっとやれと応援しているくらいだ。


「好きにしろ⋯⋯それより、そこの女の契約に入るぞ」


「承知しました」


 そこで漸く、爐が俺の方へと向いた。第一印象は原作通りの美人。やはり胸は控えめ⋯⋯俺はどちらかと言うと巨乳派だったから良さは良く分からないが、貧乳はステータスらしいぞ。


 特徴的な丸い眉毛⋯⋯まろ眉なんて言うのだろうか?現実ではあまりに見かけしないが、アニメだったり漫画だったりでたまに見るアレだ。爐のチャームポイントしてその眉毛が良く上がるな。


 顔は全体的に整っている。愛嬌の良い美人と言うよりは仕事の出来るクールな女、といった印象が強い。喋るとクールでもなんでもないが。


 黒い瞳が俺へと向けられているが、見ているようで見ていない。そこにある物として捉えられているが、関心を向けていない様子だ。漆原の言葉を忠実に守っている証拠か。


「それでどのような契約に致しましょうか?」


「そうだな⋯⋯」


 漆原が俺へと提示したものは単純なもので『組織を裏切る行為を禁ず』というものだけだった。


「もう少し厳しめの条件にもできますけど、構わないのですか?」


「この女には組織の任務以外にもやるべき使命がある。必要以上に縛れば後々めんどうだ」


 最低限で十分という判断の漆原と、もう少し厳しめにした方がいいと考える爐。もっとも優先させるのは漆原の意見なので、ここから覆ることはないだろう。


「承知しました。では、契約と参ります」


 爐の黒い瞳が赤く変わる。


「ワタクシが五十嵐 純平へと提示する条件は組織への裏切り行為の禁止。契約違反の場合は命をもって償って頂きます。同意して頂けますか?」


 普通ならこんな条件飲むはずがない。なぜなら、俺にメリットが何一つないからだ。デメリットしかない。この契約に同意し組織を裏切る行為をした場合、契約の強制力によって俺の体は意思に反して動き自殺することになる。


「爐⋯⋯契約違反の内容を変えろ。間違ってもこの女を殺すわけにはいかない」


「そう、でしたね」


「裏切った場合はオレ様への絶対服従で構わない」


「承知しました」


 俺が死ねばこの世界が終わる事を漆原と爐は知っている為、直ぐに契約違反の際の内容が変わる。


 最初から漆原への絶対服従を条件にしなかったのはなんでだろうな。自分の意思で俺にママになって欲しいとか?そんなんだったら普通にキモくて嫌だな。何か別に狙いがある、という事にしておこう。


「契約と参ります。ワタクシが五十嵐 純平へと提示する条件は組織への裏切り行為の禁止。契約違反の場合は漆原ロウへの絶対服従、身も心も全て漆原ロウに捧げて頂きます。同意して頂けますか?」


「⋯⋯同意します」


 同意したからと言って目に見えて何かが起こる訳ではない。目の前の爐の目の色が元に戻ったくらいだ。漫画の表現では鎖に縛られるような演出があったが、あれは契約を交わされる側のイメージだろうな。


「契約は交わされた。裏切るなよ女」


「はい⋯⋯」


 爐の後ろに控える漆原の鋭い視線が、俺に有無を言わせなかった。啓吾を守るために身を犠牲にした以上、既に選択肢など残っていないのも確かだ。


 とはいえ、そこまで重くはみていない。契約を交わしたからもう逃げる事はできない!終わりだーみたいな絶望的な状況では、まだないからな。


 契約の内容の裏切りというのは原作を見る限りだと、かなり曖昧だ。組織に対して敵対行為をしたり、敵対勢力に情報を売るような事をしなければ問題なかったはず。


 俺と同じ契約を交わされていた原作キャラが雲雀に好意を持って告白しても、裏切り判定にはなっていなかった。そのキャラが死んだのは組織の人間に攻撃した瞬間。


 だから、この契約を交わしても啓吾や雲雀に会えなくなるわけではない。それがせめてもの救いか。

 

「一つお聞きしたいのですが」


「なんだ?」


「啓吾にも私と同じような契約を?」


 以前も話したと思うが『Los Lobos(ロス・ロボス)』は全員が全員、漆原に忠誠を誓う組織ではない。啓吾や俺にしたように無理矢理組織へと加入させられた者もいる。


 ぶっちゃけ組織にとっては不穏分子でしかない。それを契約によって押さえつけているわけだ。なら、啓吾も俺と同じように契約を交わしている可能性が高い。


「いや、あいつは爐が加入する前に組織に入った。仕事は忠実にこなしていたからな。若鬼が首根っこを掴んでいる間は問題ないと言うから契約を交わしていないはずだ」


「ありがとうございます」


 言ってしまえば啓吾が組織への貢献した実績によって契約を免れたということか。契約を交わしていないのなら、組織を裏切っても問題はない。


 啓吾は⋯⋯俺を助ける為に動くだろう。俺を護る為に組織に入ったようなやつだ⋯⋯必ず俺を救う為に動く。ワンチャン、主人公(ひばり)の元へいっていないかな?


 その方が漆原を倒せる確率が上がる気がする。


「もう帰っていいぞ。ただし、オレ様が呼んだら必ずこい。連絡したら必ず出ろ⋯⋯わかったな」


「はい。あの、連絡先の交換を」


「⋯⋯⋯⋯」


 爐が見守る中、漆原と連絡先の交換をした。凄いシュールだったな。無言でスマホを操作して電話帳から送り合うだけだったもん。


 漆原の先のセリフはあらかじめ交換しておかないと格好がつかない。申し訳ないことをしたと思いました、はい。


「じゃ、帰ります」


 なんとも言えない雰囲気の中、俺は漆原と爐が残る部屋を出てお店の中を進む。特に人に会う事もなく外に出れたな。


「あっ⋯⋯啓吾の」


 アジトを出て直ぐに、啓吾のバイクがまだ店先にあることに気付いた。


「そっか⋯⋯足撃たれてたもんな」


 啓吾が怪我が原因でバイクに乗って帰れなかった。となると、このまま置きっぱなしか? この後、啓吾が取りに来るとは思えないし。仕方ないから俺が乗って帰るか。


 店の中へと戻って床に転がっていた啓吾のヘルメットを拝借。魔法少女の姿のままバイクに乗るのは流石に色物過ぎるので変身を解除。


 部屋着のジャージ姿でバイクに乗るのもあまりに絵にならないな。とはいえ仕方ないことだ。


「まさか役に立つ日がくるとは」


 バイクの免許は啓吾と一緒に夏休みに取りにいった。学校の規則は緩かったので先生の許可さえ得られれば取りにいけた。


 そして、俺は何故か啓吾のバイクのスペアキーを持っている。啓吾がバイクを買った時に何故か俺にくれたものだ。本当に何故か未だに分かっていない。


 それでも今回は役立ったから良しとしよう。


 ひとまず家に帰ろう。啓吾には後でバイクの件や今日のことで話がしたい。出来れば会って話がしたいな。⋯⋯⋯⋯啓吾に会いたい。


「⋯⋯送っちゃった」


 啓吾とのメッセージのやり取りは昨日の夜で終わってる。あの後、啓吾は俺にメッセージを送ってはいない。


 無性に啓吾に会いたくなった俺はメッセージで『会いたい』と、短く送ってしまった。これが正しいか分からないまま、啓吾のバイクに乗って家へと帰った。
















 あ、ミューの事⋯⋯忘れてた。ま、いっか。

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