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スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦ってる  作者: かませ犬
魔法少女編

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加速するストーリー

 体が重たい


 一歩、足を動かす度に全身に激痛が走る。もう、どこが痛いのかすら分からない。気を抜けば意識が飛んでしまいそうだ。


「⋯⋯はぁ、はぁ」


 建物の壁に体を預けながら一歩一歩前へと進む。暗い裏路地を抜ければ大通りに出る。そこまで行ければいい。


「⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」


 どれだけ時間がかかったかは分からない。ようやく裏路地を抜けることが出来た。


 軽く周囲を見渡すが人の気配はない。この時間は特に人通りが少ない。


 大きく息を吐いてから、建物に体を預けて地面に座る。バイクスーツの胸ポケットから取り出したスマホで、タクシー会社に連絡して場所を伝えた。10分ほどで到着すると言っていた。

 

「純平⋯⋯」


 頭の中に後悔ばかりが過ぎる。


 オレのせいで、純平は今頃⋯⋯。


 最悪ばかりが頭の中に浮かんではオレの心に傷を残して消えていく。吐き気がしそうだ。




「⋯⋯ごめんな」




 ───オレにとって五十嵐(いがらし) 純平(じゅんぺい)は最愛の人だ。この世界で一番、愛していると言っていい。


 一人の男として、五十嵐 純平を愛している。


 オレが純平への好意に気付いたのはいつだったか⋯⋯思い出そうと思えば鮮明に思い出せる。あの日は確か親父の葬儀の日だった。


 親父の死を受け入れられず泣き喚いていたオレをそっと抱きしめて、一緒に泣いてくれたその姿に心が惹かれた。オレが純平を好きになったのは、きっとその時だ。


 男が好きだったわけじゃない。好きになった人がたまたま同性だっただけだ。


 オレはその想いに蓋をした。当時まだ幼いオレでもこの想いがおかしい事には気付いていた。普通じゃないって分かっていた。


 男が男を好きになる。それは普通じゃない。オレの想いを純平に伝えれば、オレたちの関係は壊れてしまうかも知れない。それが怖くて自分の中にしまい込んだ。


 都合がいいことに親父の死をきっかけに目覚めたオレの能力(アビリティ)は、オレが知りたい事を教えてくれた。


 淡い期待でオレが純平に好きだと伝えたら、告白したらどうなるか⋯⋯子供らしい好奇心で聞いてみた。その結果はオレの望むものではなかった。


 だから今の関係よりも先を望むのはやめた。親友として純平の傍にいれたらいい。オレの想いは、全て蓋をすればいい。そうすればオレたちの関係は壊れない。




「お客さん!大丈夫かい、お客さん!!」




 知らない男性の声にはっと我に返る。物思いにふけている間に、タクシーが到着していたらしい。男性の視線がボスに撃ち抜かれた足や、ボロボロの体に向けられている。


「お客さん⋯⋯病院に行きたいのは分かるけど、タクシーじゃなくて救急車を呼んだ方がいいよ」


 そんな事は見知らぬ人に言われなくても分かってる。体は重症だ。けど、命に別状はない。医者に見てもらわなくても能力を使えば自分がどういう状況かは直ぐに分かる。


 今のオレは肋の骨が数本折れて、足を撃たれただけだ。幸い、大事な血管や骨は外れている。止血さえしておけば今すぐにどうこうという事はない。


「オレが行きたいのは⋯⋯病院じゃない」


「え?でも⋯⋯その怪我、というより足⋯⋯普通じゃないよ」


「いいから、ここまで乗せて行ってくれ」


 救急車や警察を呼ばれては面倒だ。スマホに行きたい住所を打ち込んでタクシーのドライバーに見せる。


 反応は良くないな。このまま通報されるかも知れない。


「あんた⋯⋯未成年と援交した、だろ」


「な、なにを言ってるんだ急に!」


 悪いがオレも手段を選んでいる場合じゃない。一般人を巻き込むようで申し訳ないが、無理矢理にでもオレの意志を通させて貰う。


 この男は女子中学生と援交をしているクズだ。オレの能力で弱味を聞けば、確認するのもバカバカしくなるくらい淫交を繰り返している。それを元に脅せばタクシードライバーは何も言わなくなった。


 今のオレは重症だ。逆上して襲ってきたら⋯⋯なんて思ったが、オレを反社会的勢力の人間だと思ったらしく素直に言うことを聞いてくれた。


 痛む身体を無理矢理動かしてタクシーに乗り込む。目的地を打ち込んだスマホをもう一度見せると、タクシードライバーはオレに怯えながら発進した。


 今日は組織の命令で能力者と戦った。念の為用意していた包帯が役に立つ日がくるとは、な。


「お客さん⋯⋯本当に病院に行かなくて大丈夫かい?死にそうな顔をしているよ」

 

 ボスに撃たれた箇所の止血をしていると、タクシードライバーが話しかけてくる。なるほど、確かにバックミラーに映るオレにはまるで生気が感じない。


 けど、これは肉体的なものじゃない。体はボロボロだが⋯⋯それ以上にメンタルがやられている。


 オレなんかを護る為に、純平がその身を犠牲にした。その事実がオレの心を蝕んでいく。


「オレの心配はいい⋯⋯運転に集中しろ⋯⋯無事についたら、援交の事は⋯⋯全て忘れる」


「わかったよ」


 座席に背を預け、天井を仰ぐ。


 オレは無力だ。ボスを前に何一つ出来なかった。昔と何も変わらない。


 オレが組織に入ったあの日から、何一つ⋯⋯変わっていない。


「⋯⋯⋯⋯」


 オレの能力を欲したボスが、オレを無理矢理に組織に加入させた。断ればオレの大事な人───純平を残酷に殺すと言って。選択肢はなかった。


 純平を巻き込んだのはオレだ。オレがこんな能力を持ってしまったばっかりに⋯⋯オレが純平に好意を持ってしまったばかりに⋯⋯。全てオレのせいだ。


 後悔ばかりが募っていく。


「⋯⋯お客さん、言われた場所に着いたよ。本当にここでいいのかい?」


 タクシードライバーに言われて外を確認する。着いたのは病院ではない。ただの一軒家だ。ここにオレは用があって来た。


「ここで、間違いない」


「あまり深入りはできないけど⋯⋯病院に行った方がいいよ」


「余計なお世話だ」


 オレに脅されているにも関わらずオレの体を気遣う。この優しさがあるのに、なんでこのおっさんは未成年との援交なんかをやってんだ。性欲ってのは判断すら鈍らせるのかも知れない。


「代金は置いておく、⋯⋯釣りはとっておけ」


 ポケットから取り出した現金を後部座席に置いておく。正確な数字は数えないと分からないが50万くらいはあるだろう。


「え⋯⋯ちょ、こんなにいただけませんよ!」


「座席にオレの血がついた⋯⋯その迷惑料と、口止めの料だ⋯⋯素直に受けとっておけ」


「え⋯⋯はぁ⋯⋯」


 そこまで言ってようやく受け入れたタクシードライバーは、オレを下ろしてから直ぐに逃げるように発車した。


 よくわからんおっさんだ。


「ここか⋯⋯」


 表札には「霧崎(きりさき)」と書かれている。


 オレの能力(アビリティ)がここへ行けと導いた。深呼吸を一度してから、インターホンを押す。直ぐに誰かが出た。女性の声だ。


「あの、何か御用でしょうか?」


「雲雀君に用事あってきました。いらっしゃいますか?ソルシオンって言えば分かります」


 インターホンに顔が映らないように気を付けながら、気を引き締めて言葉を話す。たったこれだけ、喋ることすら今のオレにはつらいものがある。


「少しお待ちください」


 それから間もなく、玄関の扉が勢いよく一人の少年が姿を表す。ほんの数時間前にやり合ったターゲットの能力者───霧崎(きりさき) 雲雀(ひばり)。


「何しに此処にきた!」


 警戒むき出しの霧崎に対して、両手を上げて戦う意思がないことを伝える。


「オレに戦う⋯⋯意思はない。お前と少し⋯⋯話がしたいだけだ」


「それを俺が信じろと?」


 ほんの少し前まで命のやり取りをしていた相手の言葉を簡単に鵜呑みにするほどバカではないらしい。警戒心の高さを褒めてやりたいが、現状ではただただ億劫だ。


「見ての通り⋯⋯オレは立ってる事すら、やっとの重症人だ⋯⋯その気になればお前なら⋯⋯簡単に、倒せる」


「⋯⋯⋯⋯」


「話が、したいだけだ⋯⋯頼む」


「わかった⋯⋯少し待ってろ」


 玄関を閉めて霧崎が家の中に入っていく。30秒ほど待っていると玄関が開いて霧崎がまた姿を表した。


「妹にはリビングで待っているように言っておいた。話があるんだろ?オレの部屋まで案内する」


「助かる」


 足を引き摺りながら歩いていると霧崎がオレの傍まで寄ってきた。


「肩、貸してやるよ」


「ありがとう」


「一個確認するけど、俺⋯⋯ここまでやってないよな」


「安心しろ⋯⋯やったのは別のやつだ」


 オレの負傷の殆どはボスにやられたものだ。霧崎にやられた傷はさほど大きくはない。霧崎が罪悪感を感じているようだったので、しっかり否定しておく。


「それなら良かった、そんなにボコった記憶はなかったからな」


「オレの傷は⋯⋯ボスにやられたものだ」


「ボス?『Los Lobos(ロス・ロボス)』のか?」


「そうだ⋯⋯」


 玄関に入って直ぐ正面に階段と右側に部屋が見えた。霧崎の部屋は2階で、右側にあるのはリビングだそうだ。


「妹はリビングでイヤホンして音ゲーをしてるから多少声を出しても大丈夫だと思う」


「そうか⋯⋯」


 とはいえ、こんなところで話す内容ではない。霧崎に肩を借りながら階段をゆっくりと登る。そのまま霧崎の案内で部屋へと入った。これといって特徴のない部屋だ。


「歩くのも辛いんだろ? 椅子に座れよ」


「すまない」


 部屋に入って直ぐに、霧崎がオレの為に用意してくれた椅子に座る。霧崎はオレに向かい合う形でベッドに腰を下ろした。


「それで何があったんだ?」


「端的に、言おう。任務を失敗した⋯⋯オレを、ボスは殺そうとした」


「俺に負けたからだよな⋯⋯?」


「お前が⋯⋯気にする事じゃない」


 霧崎に敗れた後、組織のNo2 若鬼(ルオグイ)に任務の結果を報告するためにアジトに向かった。そこで待ったのは若鬼ではなく、ボス。


 顔を合わせた時から機嫌が悪かった。嫌な予感がして能力(アビリティ)を使って対処しようとしたが、オレが任務を失敗したと知るや否やオレを殺そうとした。まるで聞く耳を持たなかった。


「オレは本来、そこで死ぬはずだった」


「ん?けど今は生きてここにいるよな?上手く逃げ切れたったって事か?」


「違う⋯⋯」


 どうしてあの場に純平がいたかは分からない。ボスがオレの足を拳銃で撃ち抜き、オレを床に蹴り倒した直後に純平がアジトに入ってきた。あとほんの数秒、純平が来るのが遅かったらオレはその時点で死んでいた。


「霧崎⋯⋯」


「なんだ?」


「お前には、好きな人は⋯⋯いるか?」


「っ、急になんだよ!話が逸れてるぞ」


 これだけ露骨に反応すれば、いると言っているようなものだ。


「オレには⋯⋯好きな人がいる、幼い頃からずっと好きだった⋯⋯愛している人がいる」


 オレは純平が好きだ。愛している。男でも女でも、性別なんて関係ない。あの日、オレの心を救ってくれた純平に心底惚れている。


「オレは⋯⋯その人を人質に取られ、『Los Lobos(ロス・ロボス)』に、加入した」


「無理矢理ってことか⋯⋯そんな事までするのかよ」


 聞けば組織の者の中にはオレと同じように組織に入れられた者もいる。忠誠心なんて微塵もない。だが、誰も組織を裏切れない。


 ボスの圧倒的な強さと、冷酷さに⋯⋯心が折れてしまっている。


「手段は選ばない、それが組織のやり方だ⋯⋯。オレは大好きな人を、護るためならこの手を血で汚しても良かった」


 意識して止めようとしても言葉に感情が乗る。


「オレは護りたかったんだ⋯⋯」


 どうして⋯⋯あんな事になったんだろうな。


 いや、分かっている。最初から気付いていた。


 純平がオレを護る為に身を犠牲にしたのは、オ(・)レ(・)が(・)弱(・)か(・)っ(・)た(・)せいだ。


「その言い方だと、護れなかったのか?」


 霧崎のストレートな言葉が胸に深く刺さる。その言葉通り⋯⋯オレは純平を護れなかった。いや、それどころじゃない。オレは逆に護られてしまった。


 純平はその身を犠牲にして、オレの命を救うことを選んだ。


「そうだ、オレは護れなかった⋯⋯。オレは、好きな人を犠牲にして、こうして⋯⋯生き長らえている」


「それは⋯⋯」


「オレには⋯⋯ボスに勝てるだけの実力がない⋯⋯だから、」


 椅子から立ち上がり、痛む足に無理をして正座をする。そのまま霧崎に向かって深く頭を下げる。所謂、土下座だ。


「恥を承知でお前に頼む!!!オレと一緒に!『Los Lobos(ロス・ロボス)』を、ボスを倒してくれ!!」


 敵対していた相手に頼み込むなんて、なんてバカなことをしているんだと自分でも思う。けど、ボスに勝てる人間は⋯⋯霧崎しかいない。


 オレの能力(アビリティ)は霧崎だけが、ボスを倒せると告げている。


「本来ならオレの力でボスを倒すのが筋だ!けど!オレだけの力じゃボスに勝てない!純平を救えない!頼む⋯⋯オレに、力を貸してくれ」


 情けない姿だと思う。それでも純平を救えるならなんだってやる覚悟だ。靴だって舐める。犬の真似事だってやってやる。


 純平をボスの魔の手から救えるならオレは組織を裏切っても構わない!


「頭を上げてくれ⋯⋯」


 霧崎の声に頭を上げる。真剣な表情の霧崎と目が合った。


「純平って人が、あんたの大好きな人か?」


「そうだ⋯⋯」

 

 男の名前だ。それが普通じゃない事をオレ自身がよく分かっている。引かれようと、気持ち悪がられようが構わない。


 そう思っていたが、霧崎が浮かべていたのは優しい笑みだった。


「俺にもさ、純(あや)っていう好きな人がいてさ⋯⋯その人が同じ目にあったら⋯⋯俺も同じ状況になったら、どんな事をしても好きな人を助けると思う。それが敵に頭を下げることであっても」


「霧崎⋯⋯」


 霧崎がベッドから立ち上がる。そのままオレの傍にやってくると手を差し伸べてきた。


「俺で良ければ力になるよ。俺も『Los Lobos(ロス・ロボス)』を⋯⋯あのムカつく野郎をぶっ倒してやりたいって思ってたところだ。一緒にぶっ倒してやろうぜ」



「ありがとう」


 霧崎が伸ばした手を掴むと、引っ張り起こしてくれたのでそのまま起き上がる。霧崎と目が合った。オレと同じだ。愛する者の為に戦う⋯⋯男の目をしていた。


 この男なら信頼できる。


「よろしく頼む」


「これからよろしくな!」


 待っていてくれ、純平。オレたちの手で必ずボスを倒して⋯⋯お前を助けてみせるから。少しだけ、待っていてほしい。



 ◇


 こうして作中屈指のチート能力が主人公陣営に加わったことで、ストーリーが大きく加速する事になるのだが⋯⋯










「ママ、撫で撫でちてー」


「はーい、ママでちゅよー」


 この時の俺はまだ何も知らなかった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

これにて第一章『魔法少女』編は終わりとなります。

次章からはイチャラブを目標とした『愛の契り』編がスタートいたします。主人公が誰と結ばれるか全く予想できないですね、はい。


一応、ここまでを早く書きたくて一日二回更新とハイペースできた訳ですが、二章からは少しペースを落とします。毎日更新なのは変わりませんが7時頃の更新一回のみとなります。ご了承ください。

引き続き本作をよろしくお願いいたします

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