第10話
朝、出動命令が出たとき、嫌な予感がした。
理由は分からない。
ただ、胸の奥がざわついていた。
任務は前線の一角の防衛。
昨日よりも緊張した空気が漂っている。
「終わったら、ちゃんと休もうぜ」
「俺、明日妹に会いに行くんだ」
ケビンがそう言って笑った。
いつもより、少しだけ声が明るかった。
「そうだな」
守成は短く答えた。
マイケルも黙ってうなずいていた。
配置についてしばらくした頃、突然、指示が飛んだ。
「敵、右側から接近中!」
混乱の中で銃声が響く。
守成は必死に周囲を確認した。
その瞬間だった。
「……っ!」
すぐ近くで、ケビンが崩れるのが見えた。
「ケビン!」
駆け寄ろうとしたが、指揮官の制止が入る。
「持ち場を離れるな!」
戦闘は長くは続かなかった。
運よく増援が来て、敵は退いた。
静かになった戦場で、守成はケビンのもとへ向かった。
呼びかけても、返事はない。
医療班が首を横に振る。
それだけで、十分だった。
基地に戻ってからも、現実感がなかった。
ケビンのベッドは、空いたままだ。
「僕のせいだ・・・」
守成は呟いた。
「あのとき、もっと早く動けていたら」
「俺が代わりに前に出ていれば」
言葉が止まらない。
「もう駄目だ・・・」
「守れなかった・・・」
膝に力が入らず、その場に座り込んだ。
そのとき。
「守成」
振り向くと、マイケルは泣いていた。
声を震わせ、必死に言葉を絞り出す。
「俺だって怖かった」
「ケビンだって、怖かったはずだ」
「でも、あいつは最後まで決して逃げなかった」
マイケルは拳を握りしめる。
「守成が自分を責めるなら、俺はそれを否定する」
「三人で決めたんだ。ここに来るって」
「なにがあったって、走り続けるしかないんだよ」
「終わったことに泣いたって、叫んだって、ケビンは戻ってこない」
「だから、走り続けろ」
「行くぞ、守成」
「明日は指揮官から休みをもらった」
「走り込みに行くぞぉぉ」
涙を拭いもせず、続けた。
「折れていい。でも、立ち止まるな」
「ケビンは、そんな終わり方、望んでない」
守成の胸が、ぎゅっと締めつけられた。
泣いていい。
弱くていい。
でも、逃げるわけにはいかない。
「・・・ありがとう」
小さくそう言うのが精一杯だった。
その夜、二人は何も話さず、同じ部屋で過ごした。
空いたベッドを見ないようにして。
守成は心に刻む。
忘れない。
無駄にしない。
ケビンがいた証を。
ここで生きていたという事実を。
戦争は、容赦なく続く。
でも、守成はまだ立っている。
僕とマイケルは生きているんだ。
仲間の想いを、背負いながら。
戦争が終わる、その日まで。
戦争開始九日目終了
ケビンが欠けてしまった日
今日は投稿終わりにしようかな・・・
好評だったら20:00くらいに超速で投稿する
第1部はあと2話で終了の予定




