第9話
戦争開始八日目
「ジリジリジリジリジリジリ」
朝、前線への緊急出動が命じられた。
昨日よりも張りつめた空気が、はっきりと分かる。
今回は補給ではないのだ。
押し込まれている地点の防衛。
最前線に出るのだ
つまり、交戦の可能性が高い任務、いや、交戦がほぼ確実したような任務だ。
装備を整えながら、手が少し震える。
銃の重さが、昨日よりも増したように感じた。
「守成」
マイケルが声をかけてくる。
「無理するな」
ケビンも小さくうなずいた。
「三人一緒だ」
その言葉に、少しだけ落ち着いた。
現地に到着すると、建物の陰に展開するよう指示が出た。
遠くから、断続的な銃声が聞こえる。
心臓がうるさい。
呼吸が浅くなる。
「敵、接近!」
その瞬間、空気が一変した。
視界の先に、人影が走る。
間違いない。敵兵だ。
銃を構える。
照準が定まらない。
(撃たなきゃ……)
だが、体が言うことを聞かない。
そのとき、すぐ近くで衝撃音がした。
マイケルがとっさに伏せる。
「守成たのむ!」
ケビンの叫び声で、我に返った。
このままじゃ、誰かがやられる。
守るために来たんだ。
歯を食いしばり、深く息を吸う。
教官の言葉を思い出す。
呼吸の合間だ。息を整えろ
引き金を引いた。
「バァァン」
音が響いた。
反動で腕がぶれる。
結果は分からない。
ただ、人影はその場から姿を消した。
戦闘は数分で終わった。
味方部隊の増援が来て、敵は撤退したらしい。
周囲を見回す。
誰も欠けていない。
マイケルも、ケビンも無事だった。
安心した瞬間、足の力が抜けた。
基地へ戻る途中、誰も喋ることはなかった。
夜、ベッドに横になっても眠れない。
昼間の感触が、頭から離れなかった。
引き金の重さ。
銃声。
自分の震える手。
「……これが、戦争なんだな」
小さくつぶやく。
守るためだった。
それでも、心は軽くならない。
それでも後悔だけはしなかった。
あのとき動かなければ、仲間がどうなっていたか分からない。
弱いままでも、怖くても、
それでも前に出た。
戦争は続く。
そして、僕はもう戻れない場所まで来てしまったのかもしれない。
心のざわざわが止まらない。
これからどうなってしまうのだろう。
戦争開始八日目終了
18:00ごろに投稿するかも
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