四畳半サバイバル
目が覚めると、扉が開かなくなっていた。
最初は寝ぼけているのだと思った。
取っ手を回す。引く。押す。
びくりとも動かない。
窓も同じだった。
鍵はかかっていないのに、押しても引いても外れない。
スマホを確認する。
圏外。
何度も機内モードを切り替え、再起動しても変わらない。
なぜ?
いつから?
冷蔵庫を開ける。
賞味期限切れの牛乳と、納豆が一パック。
これで全部だった。
これはまずい。
本格的にまずい。
一日目は混乱して終わった。
二日目は不安で眠れなかった。
三日目、空腹に耐えかね、私は畳を見つめていた。
「畳って、イグサだよな。草だ。草なら……」
爪で畳をめくり、食べてみる。
硬い。不味い。口の中に広がる青臭さに、涙が出た。
「無理だ!人間の食い物じゃない!」
四日目、壁紙を舐めた。
何の味もしない。
情けなくて、そのまま泣いた。
七日目、もう動けなかった。
床に倒れ込み、天井を見つめる。
ここで死ぬのか。
こんな、四畳半で。
その時、ガチャリと音がした。
扉が、開いた。
「助かった……!」
這うようにして外に出る。
しかし、そこにあったのは見たこともない景色だった。
紫色の空。
三つの月。
奇妙な形の植物が、風に揺れている。
周囲を見ると、同じように部屋がいくつも並んでいた。
扉から、人々が次々と這い出してくる。
全員、私と同じように憔悴しきった顔だ。
突然、空から声が響いた。
『地球の皆さん、お疲れ様でした』
地球?
『残念ながら、地球は消滅しました』
え?
『ここは新天地、プラネットXです。皆さんの生存確認が取れましたので、これより移住生活を開始していただきます』
呆然とする人々。
私も、膝から崩れ落ちた。
『それでは、サバイバル生活、頑張ってください』
声が消える。
見渡す限りの荒野。
未知の星。
逃げ場はない。
ここからが、本当のサバイバルだ。




