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第3話 どこへ…

新連載の作品になります。

個人的にノエルみたいな令嬢が好きです!

馬車がゆっくりと走り、草原が広がる中、ノエルは不安が押し寄せ、エヴィリオに対して呟いた。

「まだですか?一体どこまで行くのです?」


隣でエヴィリオは、無表情ながらも口調には冷静さを漂わせて答える。

「そう焦るな。もうすぐ着く」


退屈そうにノエルが再度問いかける。

「それって後どのくらいで着きますか?……王宮で暮らせると思ってたのに、なんだか悲しいです」


エヴィリオは顔をしかめ、少し苛立つように答える。

「この距離を待てないって本当にお前は貴族なのか……。少し走らせただけだろ。」


ノエルはため息をついた。

「はぁ……すでに王宮のふわふわのパンが恋しいです」


エヴィリオが苦笑しながらそれに答える。

「領の屋敷では、王宮と同じ食事、寝室、大理石の浴室が整っている」

 

ノエルは目をうるうるさせ歓喜した。

「本当ですか?なら到着まで、どんなに時間がかかっても我慢できます!」


「な、ならいい…」

 

続けて彼女は、不安と疑問が入り混じった表情を浮かべた。

「でも、なぜエヴィリオ様は王宮で暮らせないんですか?」


エヴィリオは顔をしかめ、少し呆れたように心の中で呟いた。

(本当、この女は…デリケートな話を躊躇なく、聞いてきやがる)

 

ノエルは続けて小さな声で疑問をぶつける。

「貴族や王族の事よく分からないですが、第二王子が王宮で暮らせないのは、変だと思いまして…」


するとエヴィリオは、ため息をつくように続けた。

「俺もお前と同じで、神脈の加護しんみゃくのかごの力を持っていなかったからだ。王宮に住めるのは、神脈の加護に選ばれた王や騎士だけだ。」


国では、貴族と王族は作法を学んだ後、最後に神脈の指輪を付け、神脈の加護の力の有無を区別される。

王族はほとんどの者がその力を得るが、貴族では50年に1人と言われ、非常に稀な存在とされる。

エヴィリオは、王族でありながら神脈の加護の素質がなかった。

 

ノエルは困惑したように首をかしげた。

「え?それなんですか?神脈の加護?」


「この国で天災が起きないのも、雨が定期的に降るのも王宮に住んでいる俺の家族と、Sランクの白蓮びゃくれん騎士が、神脈の加護の力で守ってくれているからだ。」


「それにお前も作法を学んだ後に、力の持ち主か確かめられただろう?」

神脈の指輪をはめて、指輪が金色に光ると、神脈の加護の持ち主とされ王宮で暮らす事になる。


「え?あの…作法を学んでいないから私は、その神脈の加護とかいう力の持ち主か試されなかったということですか?」


「力の持ち主であったとしても、作法を学んでいないと王宮では暮らせないからな」


王が所作に厳しいのも理由の一つ。

だが、意思疎通が通じない者と裏切り者の区別がつかないのが、最大の理由だ。

ノエルのように所作で意思疎通が通じないとなれば、些細な事で大事に至る可能性があるので、王宮では暮らせない事になっている。

だからこそ作法を一通り学び終えて、初めて神脈の加護の持ち主か有無を見定められる。


「そう言えば、お前の言動や食べ方は酷いが、作法はどこまで学んだんだ?」


「……。」


「えーっと、その…ドレスの着付けまでで止まってます……。」


エヴィリオは笑いながら返す。

「はぁ?それって最初じゃないか。今までどうやって過ごしてたんだ?」


ノエルはこれまでの振る舞いについてエヴィリオに伝える。

「無口でニコニコして、なんとか凌いでました……」


エヴィリオは目を細め、皮肉混じりに心で呟いた。

(このビジュアルおばけめ。こんな阿呆な妻だと先が思いやられる…。)


笑うエドワードを見てノエルは心があたたかくなった。

(冷酷と言われる王子も、案外、子供のように笑うのね)

 

しばらくの沈黙の後、ノエルは思い切って尋ねる。

「そういえば、エヴィリオ様はどうして恐れられているんですか?噂では、冷酷非道、血も涙もなくて、容赦なく人を切り捨てると聞いていました。でも、私にはそんなふうには見えません。」


エヴィリオはただ、無表情に「……そうか」とだけ答えそれ以上は何も語らなかった。

その横顔は、どこか寂しげにも見えた。


その後、馬車はようやく目的地に到着した。

「ついたぞ。ここが、お前の住まいになる領だ。」


エヴィリオは低い声で告げ、馬車を降りた。


その領の名前は、エドリック領――

別名:グラウド王国第2施設。主に傭兵の育成を行っている。


まるで戦士の砦のような、堂々たる石造りの城館。

城壁の上では訓練をする兵士たちの姿が見える。

それでいて、広大な庭園には手入れの行き届いた花々が咲き誇り、

王宮とは違う、強さと美しさを兼ね備えた荘厳な風景がそこにあった。


「ここが、私の住まい……?」


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