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第2話 王宮……

毎日更新ではありません。

面白かったら評価:ブックマーク頂けると幸いです。


更新頻度は高めだと思います。

「ノエル様、明日に備えて早めに食事と入浴の方を」

王宮の侍女から翌日の結婚式のために、今夜は食事と入浴を済ませ、自室で休むよう告げられた。


「はい!」

彼女は心の中で歓喜した。

(待ってました、ついに王宮生活が始まるんだ!)

胸は期待で高鳴っていた。


少しすると、夕食が運ばれてきた。

テーブルには、これまで見たこともないほど豪華な料理が並んでいる。

スープにはしっかりとした肉が入り、パンはふわふわでバターの香りが漂っていた。

(こんな美味しい食事を毎日食べられるなんて……!)

ノエルは感動しながら、いつも通り食事を始めた。


ーーその時、不意に冷たい声が響いた。


「お、おい、食べ方が汚すぎないか?」


驚いて顔を上げると、そこにはエヴィリオの姿が。

貴族の作法を心得ていないノエルの食べ方は、王族の彼からすると、衝撃的なものだった。


「あの、ちょっと食事中くらい静かにしてください。味わって食べてるのが台無しです。」

ノエルは眉をひそめて言い返した。


「な、なんてがさつな女だ。こんな奴が俺の妻なのか。」エヴィリオは呆れたように呟いた。


ノエルは物怖じせず、自分の思ったことを率直に伝える性格。王子として常に周囲から気を遣われ、冷酷と恐れられていたエヴィリオにとって、これは初めての経験であり、彼は言葉を失った。


ノエルが食事を終えた後、侍女が静かに近づき、丁寧に頭を下げた。

「ノエル様、入浴の準備が整っております。ご案内いたします。」


「ありがとうございます。」

ノエルは微笑みながら立ち上がり、侍女の後に続いた。王宮の浴室は、彼女がこれまで見たこともないほど豪華で広々としていた。大理石の床と壁が輝き、中央には大きな浴槽が湯気を立てている。

窓から差し込む柔らかな月明かりが、室内を幻想的に照らしていた。


「ごゆっくりお寛ぎください。」


侍女が静かに部屋を後にし、ノエルはゆっくりと浴槽に足を浸した。湯の温かさが全身を包み込み、彼女は思わずため息を漏らした。これまでの緊張や疲れが、一気に溶けていくようだった。


「こんな贅沢、初めて……。」


ノエルは湯の中でそっと拳を握った。新しい環境、新しい人々、そして新しい自分。彼女は、これから始まる日々を想像し、喜びの舞を浴室で1人踊るほど、幸せだった。


入浴を終え、ノエルは用意された寝着に着替え、与えられた部屋へと戻ると、そこには、ふかふかのベッドが彼女を待っていた。

ノエルはベッドに飛び込んだ。

「うわぁ……!こんなに柔らかいなんて……!」


彼女の目には涙が浮かんでいた。

これまでの寝台は硬く、寝返りを打つたびにきしんでいた。しかし、今はまるで雲の上にいるような心地よさだった。


「……白い結婚でも、これなら全然ありよね!」

ノエルは満足げに頷いた。王子の悪評など、どうでもいい。


それに——

(顔がめちゃくちゃ良いってだけで、目の保養になるし!)


豪華な生活に、白い結婚とはいえ、美しい容姿の旦那様。彼女は幸せを感じながら眠りについた。


――翌朝、披露宴が始まった。

煌びやかな宴会場に現れたノエルは、まるで生きた花のように華やかで可憐だった。

淡いピンクのドレスは、彼女の繊細な体躯を優雅に包み込み、銀色のセットされた髪は光を受けてキラキラと輝いていた。


一方、エヴィリオは、黒を基調としたシンプルながらも洗練されたドレスアップで現れ、その容姿はまさに王子の風格を放っていた。

精悍な顔立ちに、引き締まった体躯。彼の彫刻のような端正な顔は、鋭い眼差しとともに、見る者に強い印象を残した。立ち振る舞いには、絶対的な自信と凛とした威厳が漂っていた。


しかし、大人数から祝福されるわけでもなく、儀式は淡々と進み、すぐに終わった。


「白い結婚に意味はないからな。こんな儀式は早く終わった方がいい。」

エヴィリオが冷たく言った。


「私もそう思います。それに、そもそも白い結婚は披露宴すら必要ないと思います。」


ノエルも同意した。


「……そうか。女は披露宴にこだわると思っていた」

エヴィリオは短く答えた。


「お前がミラージュのような美しさと言われているか知らんが、俺がドレス姿を見たら惚れるとでも思ったか?」


彼は皮肉っぽく笑った。


「いえ、何とも思ってません。最初にお伝えしたとおり、エヴィリオ様からの愛は求めてませんから。」

ノエルは淡々と答えた。


「……そうか。」

エヴィリオは再び短く返した。


披露宴はこうしてあっさりと終わった。


披露宴が終わり、宴会場から離れたノエルは、王宮の広い休憩室へと案内された。

休憩室には、絹張りのソファーが置かれており、まるで抱擁してくれるかのようなクッションも並んでいた。


ノエルはそのソファーに身を沈め、しばしの安堵の時を楽しんだ。

(さて、この後は紅茶を飲みながら読書をする優雅なお嬢様タイムを過ごしますか。)

彼女はそっと目を閉じ、心の中で次のひとときを計画していた。

 

「おい、何をしている?」

突然、エヴィリオの声がした。


「何をしているって、お、お嬢様タイムを……」

ノエルは戸惑いながら答えた。


「何を言っている、帰るぞ。」

エヴィリオは言い放った。


「へ?どこにですか?」

エリーナは驚いて尋ねた。


「婚姻の儀式で王宮に来ただけだ。俺は第二王子だぞ。当然、住まいは別の領地だ。」


彼の言葉に、ノエルは愕然とした。

「そ、そんな……王族や貴族の仕組みはよく知りません!私はここに住みます。」


彼女は必死に訴えた。

「無理に決まってるだろ。ほら、馬車が来ている。行くぞ。」

エヴィリオはノエルの手を取り、馬車へ強引に連れて行くことに。


ノエルは心の中で叫んだ。

(王宮で暮らせると思ってたのに……あの、ふかふかのベッド、ふわふわのバターの香りがするパン、大理石の浴室、まだ一回しか経験していないのに……私はどうなってしまうの?)


彼女にとっての新しい生活は、予想外の展開で進んでいく。

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