説得
和姫ちゃんを慰めるために、町へ出ましょう。
そう、あくまで和姫ちゃんのため。私が半引きこもり生活に飽きたとか、時代劇~な町を歩きたいとか思っているわけではない! ないのだ!
崇高な使命を抱いた私は、崇高な使命を達成するために、崇高なる正面突破をすることにした。
「というわけで。楓お姉さん。私、町に出たいです」
「は、はぁ……?」
とうとう気でも狂ったかというような顔をする楓お姉さんだった。泣きそう。
「あの屑野郎から受けた屈辱を晴らすためには! 町に出て気分転換しなきゃいけないと思うのですよ!」
これぞ秘奥義☆正 面 突 破 ! である。
「……なるほど、たしかに気分転換は必要でしょうが……」
難しげな顔をする楓お姉さんだった。岡山藩の次期藩主を『屑野郎』呼ばわりしたことに対するツッコミはないらしい。
「しかし、仙台藩の姫君が町に出るというのは……」
「バレなきゃいいんですよ、バレなきゃ」
「その銀髪赤目で……?」
「ぬぐっ」
ドストレートなツッコミに押し黙るしかない私であった。さすが忍者、ツッコミの切れ味が鋭いぜよ。
う~ん、髪は染めるにしても、瞳の色はなぁ。誤魔化しようがないよなぁ。サングラスでも作っちゃう? 逆に目立つか。
「……あ、そうだ。変装用の魔法があったはず」
流し読みしただけだから詳しくは知らないけど、マジカル☆変装なら髪色とか瞳の色も変えられるんじゃないのかな?
魔法ならできるかもしれないと思ったのか、楓お姉さんが「うげぇ、マジで町に出る気かよ」とした顔をする。
「姫様、町に出るのは危険すぎます」
「楓お姉さんが守ってくれるのでしょう?」
「無論。――くっ!」
反射的に肯定してしまい、即座に後悔する楓お姉さんだった。愛いやつめ。
「いやしかし、町娘の服などないですし……」
「お里さんは元々町娘みたいですし、持っているのでは?」
「ぬぐっ、いやしかし、姫様がいなくなれば、皆が心配しますし……」
「あ、それは大丈夫。土魔法のゴーレムなら私そっくりの『土人形』を作れるみたいですから」
攻撃魔法を探していたとき、土魔法のゴーレムのことを知ったのだ。便利そうだったからあのあとじっくり調べていたんだよね。
さすがに対面で長時間のやり取りをさせるのは難しいけど、「婚約破棄でショック! 誰も部屋に入れないで!」的な言い訳をすれば十分誤魔化せるはず。
「……姫様はなぜそんな悪知恵が働くのですか……」
痛そうに頭を抱える楓お姉さんだった。
「そりゃあまぁ、『悪徳姫』なので」
「あくとくひめ?」
「というわけで、そろそろ諦めてくれません?」
「何という正面突破……」
「伊達家らしいのでは?」
「いくら武の名門でも斯様な正面突破はしないかと……薩摩じゃあるまいし」
流れ弾を被弾する薩摩藩に泣いた。こっちの世界でも頭チェストらしい。
楓お姉さんはうーんうーんと悩み抜いた末、大きな大きなため息をついた。
「……承知しました。では、上司と相談させていただきます」
お?
「つまり、前向きに検討を?」
「えぇ」
「我ながら意外な展開なんですけど?」
「ここで反対しすぎますと、姫様はこっそり屋敷を抜け出そうとしたり、忍びをなぎ倒してでも町に出ようとするかもしれませんし。それならば最初から協力をした方が被害は少ないでしょう」
「…………」
こっそり抜け出したり忍者を倒してでも出て行くような女だと思われているらしい。泣いた。
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