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時代劇の悪役姫になりました。~処刑は嫌なので、正義の味方をはじめます~  作者: 九條葉月


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和姫ちゃんと



 ――私は、少し薄暗い場所にいた。

 見覚えがある空間だ。

 銀髪のお姉さんのせいで気絶したあと。この身体の元々の持ち主・和姫ちゃんと出会ったところだ。


 精神の交流なのか、あるいはあの世に一歩足を踏み入れているのか。詳しい理屈はわからないけど、あの時と同じように黒髪の美少女・和姫ちゃんに会うことができた。


「ひさしぶり~」


『はい、お久しぶりです』


 まるで旧来の親友みたいに気安く挨拶する私と和姫ちゃんだった。いや和姫ちゃんは丁寧な挨拶だけど、これでも『いいとこのお姫様』にしては気安い挨拶なのだ。


「ごめんねぇ。まだ悲劇を食い止めるとかはできていないんだ」


 というか何のヒントもないから動きようもないのが正直なところだ。だってお姫様だから『町に出て調査!』とかもできないし。


 あと、言い訳するなら銀髪のお姉さんの『まずはこの世界に慣れてね』みたいな言葉に甘えたというのもある。実際、この世界の常識も分からないまま調査とか聞き込みもできないし。


 私の謝罪を受けて和姫ちゃんはふるふると首を横に振った。


『いえ、大丈夫です。とりあえず悲劇の進行も止まっているみたいですから』


「あ、そうなんだ?」


『はい』


 じゃあ、いい機会だからその『悲劇』ってなんなのか質問しようかなと思いついたところで――気づいた。


 今の和姫ちゃん、めっちゃそわそわしているのだ。


 …………。


 あー、これはあれか。もうすぐ婚約者である池田君との顔合わせだから緊張しているパターンか。池田君の肖像画を見たときの肉体の反応からして、どうやら和姫ちゃんは恋心を抱いているみたいだし。


「池田君に会えるの、楽しみ?」


『いえ! そんなことは!』


「別にごまかさなくてもいいのに」


『いえ、ごまかしなどでは……。それに、妾はもう死んだ身ですから。今さら現世に未練はありません』


 う~ん、真面目。私と魂が似ているとは信じられない真面目さだ。


「でも、和姫ちゃんが今どういう状況かは分からないけど、現世のことは分かるんでしょう? なら、少しくらい楽しんでもいいんじゃない?」


『楽しむ、とは?』


「お見合いのときに池田君の顔をじっくり見るとか? 起きているときにも和姫ちゃんと意思疎通できるなら気になることを代わりに質問してもいいし。……あ、元々この身体は和姫ちゃんのものなのだから、乗り移ることも可能なんじゃない?」


『乗り移る、ですか?』


「うん。憑依とも言うかな? 銀髪のお姉さんによると魂がそっくりらしいし。できるんじゃないのかなぁ? やってみないとわからないけど。たしか書庫にそんな感じの本があったはず……。上手くすれば池田君と会話したりもできるかもしれないよ? ――あるいは、私と完全に入れ替わったり(・・・・・・・)


 そうすると私がこの身体から追い出されてしまう形になるけど……まぁ、しょうがないんじゃないかな? 確かに私は病気で苦しまなくていい人生を望んだけど、他人の肉体を乗っ取るだなんて想定外だったし。元の持ち主に返せるのなら、それが一番いいに決まっている。


 まだ本を読んでいないので確かなことは言えないけれど、調べてみる価値はあるはず。


『いえ、しかし……』


「よし! まだできるかどうか分からないから、期待しないで待っててね!」


 和姫ちゃんに親指を立てる私。「あ、親指立てても理解できないか」と思ったけど、和姫ちゃんは魂で意味を理解してくれたのか微笑んでくれた。


『はい、お待ちしてます』






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