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時代劇の悪役姫になりました。~処刑は嫌なので、正義の味方をはじめます~  作者: 九條葉月


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婚約?


 体調の回復という(てい)で各種習い事をお休みしつつ、魔法の練習に明け暮れていたある日。少し困った顔をした爺が部屋を訪ねてきた。


「いや、姫様。ご回復されてきたようで何よりです」


「いやぁ、ご心配おかけして……」


「ははは、お気になさらず。子供というのは大人に心配をかけるものですからなぁ。殿も、姫様がお倒れになっている間は祭壇を組んで祈りをささげるほど心配しておりまして……」


「そ、そうだったんですか……」


 あの筋肉マッチョなお父様が神頼みを……とは思ったけど、この時代だものね。神頼みも普通のことなのか。それにしたって祭壇はやり過ぎだろうけど。


「それで、ですなぁ……。姫様も回復してきたということで、そろそろ婚約者との初顔合わせを、という話になっているようでして……」


「婚約者というと……池田なんとか君でしたっけ?」


「ご存知でありましたか。えぇ、岡山藩のご嫡男、池田保教(やすのり)様で御座います。姫様が倒れられたことで延期しておりましたが、体調に問題がないならと」


「もう婚約は済んでいるんですか?」


「えぇ、家格も丁度良かろうとのことで、幕府からの許可も下りております」


「へぇー」


 仙台藩は大きかったと聞くし、そんな仙台伊達家と家格が丁度いいって凄い家なんだろうね池田家って。


 ……あ、よく考えたら岡山藩なんだから岡山城があるところか。あの真っ黒でデッカイお城。そりゃあ家格も凄そうよね。


「ただ、殿からは無理をしなくてもよいとのお言葉を賜っております。さらには、病によって結婚生活に耐えられないという理由で破棄をしてもよいと」


「え?」


 よく知らないけど、こういうのって家と家の利益とか政治バランスとかで決まるものじゃないの? いや確かに結婚しなくていいならその方がいいんだけど、私の個人的感情で反故にするのもなぁ。今の時点でもお待たせしているみたいだし……。


「まぁ会うのは別にいいですけど」


「よ、よろしいのですか? 姫様の知らぬ間に決められた婚約ですが」


「でも、私が記憶を失う前は知っていたんでしょう?」


 正確に言えば『抜け殻』になった肉体に私の魂が入ったのだから元々記憶はないのだけど、体外的には記憶喪失ということにしているのだ。


「それは、そうで御座いますが……」


「あ、でも初顔合わせということはまだ顔も知らなかったのですかね?」


「いえ、肖像画は届いておりましたので。こちらで御座います」


 こういう展開になることも予測していたのか、爺が巻物を差し出してきた。掛け軸みたいな感じだろうか?


 開いていると、まだ年若そうな少年が格式高そうな和服を着て座っている肖像画だった。


 なんというか、意外と西洋風の、リアルタッチな肖像画。天下統一したという織田信長は西洋の文化が好きそうだし、影響を受けたのかもね。


 そんなリアリティ抜群に描かれた池田君の顔は――かなりイケメンだった。顔は薄めの、いわゆるしょうゆ顔だけど、なんだかさわやかな少年っぽい感じがする。


(……ん?)


 なんだか胸に違和感が。苦しいというか、きゅんとしたというか……?



 正直言って、池田君は私の好みじゃない。私が好きなタイプは『信春騒動記』の主役、若様みたいな濃い顔のイケメンなのだ。確かに池田君はイケメンだけど、胸が高まる系じゃない。


(まさか、和姫ちゃんが……?)


 この身体の元々の持ち主、和姫ちゃん。

 家が決めた婚約者。その肖像画を見て、淡い恋心を募らせていたのだとしたら……?


 なにそれ素敵。


 と同時に、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう私だった。いや和姫ちゃんは私がこの世界に来る前に死んでいて、私がその抜け殻に入ったってことは分かっているんだけどね。






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