表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時代劇の悪役姫になりました。~処刑は嫌なので、正義の味方をはじめます~  作者: 九條葉月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/64

忍者ってすげぇ


 しばらく様子を見た結果。どうやら回復魔法によって纏わりついた魔力は数日で抜けきるみたいだ。つまり多少失敗して纏わりつかせちゃっても問題なしと。


「失敗はしないほうがよろしいかと思いますが」


 楓お姉さんが律儀に突っ込んでくれた。この忍者、ツッコミ上手である。


 ちなみに楓お姉さんは顔の下半分を頭巾(?)で隠しているので顔はよくわからない。……と、いうのは普通の人の感想だ。


 どうやら私の目には透視能力っぽいものがあるみたいで、集中することで色々と視る(・・)ことができるのだ。つまり、楓お姉さんの素顔も確認できるってこと。


 いかにも生真面目そうな、委員長系の黒髪美人さん。正直眼福だよね。いや私の恋愛対象は男だけど、それはそれとして美人さんを見ると心が豊かになるのだ。


「? 姫様。じっと見つめてきてどうしましたか?」


「ううん、なんでもなーい」


 テキトーに答えつつ、今日も藩士の皆さんの治療をする。彼らは毎日のように訓練しているせいで、それなりの頻度でケガをする。こういう言い方はあれだけど、治癒魔法の訓練にはうってつけなのだ。


 ……なんだか最初のころよりケガする割合が増えてきたから、「どうせすぐ治るんだし、ちょっとくらい無茶してもいいかー」と思われている気がしないでもない。


 まぁ、それはとにかく。

 最初は恐縮しまくっていた藩士の皆さんだけど、人間慣れるものなので今では気軽に雑談できるくらいには仲良くなっていた。


「そういえば姫様。最近は町で子供が行方不明になっていたんですよ」


「へぇ、子供が?」


「えぇ。三人だったかな? 近頃は治安も良くなってきたんでそんな人攫いとか滅多にになくなっていたんですよ。で、そんな状態で子供が三人も行方不明になったから奉行所も大慌て。うちの屋敷にまで聞き込みに来るほどでしたよ」


「へぇ……」


 奉行所って警察とか裁判所、役場が一緒になったところだっけ? ちょっと一カ所に仕事させすぎじゃない?


「だから姫様も気をつけてくだされ」


 噂話をしていた男性の頭を、別の男性が叩く。


「阿呆。姫様が町に出るはずがなかろう」


「おっと、それもそうであったな。もし不審な輩が屋敷に忍び込んだら、我らが切り捨てればいいだけだからな」


「おうおう、そのとおりよ」


 がっはっはっと笑う藩士二人だった。不審者即斬り捨て御免とか、やっぱり江戸時代というか名古屋時代なんだなぁ。


 でも、誘拐犯か。


 たぶん大丈夫だろうけど、念のために護身術程度の攻撃魔法は練習しておこうかな? それくらいなら力加減を間違っても大した被害にならないだろうし。



          ◇



 回復魔法に加えて、簡単な攻撃魔法の訓練も始めようと思う。


 それはいいんだけど、問題はどの魔法を勉強するかだ。


 炎系……。延焼が怖いなぁ。

 水系……。洗濯には便利だろうけど、攻撃で強いイメージがない。

 発展系で氷形というのもあるけれど、相手を凍らせちゃうと後始末が大変そう。

 土魔法……。ゴーレムを操るのがメインらしく、たぶん習得したらすごく便利だろうけど、さすがに目立ちすぎ。


 雷の魔法は……スタンガンみたいに使えると思う。


「ん~、というわけで。雷系の魔法を習得しようと思うんですけど、どう思います?」


 今日も近くに控えてくれていた楓お姉さんに意見を聞く。ちなみに出会ったころは陰に潜んでいたのだけど、なんだか落ち着かないので姿を見せてもらっているのだ。


「……よろしいのではないかと」


 なんだか反応が悪いような? いやいつもクールだから反応も大きくないのだけど、今日は輪にかけて鈍い感じだ。


 ん~?


 …………。


 ……ははーん? 理解した。理解しましたよ私。


「嫉妬してます?」


 私が詳細をぼかして問いかけると、


「いえ別に! そのようなことは! ただ、我らが護衛しているのに護身術など習う必要はないのにと考えているのは事実ですが!」


 はっはっはっ、別に護身術のことだとは口にしてないのに。()いやつめ。


 楓お姉さんを信頼していないわけじゃないけれど、携帯しなくていいスタンガンは便利なので練習して損はないはずだ。


「でも、私が最低限身を守れた方が、お姉さんの負担も減るでしょうし」


「なんと! 我らのことをそこまで気遣っていただけるとは――っ!」


 感動からかプルプルと震える楓お姉さんだった。チョロい。


 というわけで、簡単な雷撃魔法を練習してみる。もちろん中庭に出てからね。


「え~っと? ――雷よ、来たれ(トルス)!」


 なんとなく空に向けて手を掲げ、本に書いてある通りの呪文を唱えてみると、


 ――ぴしゃーん、っと。


 私の腕に、雷が落ちてきた。


「みぎゃあぁあああ!?」


「姫様!? ぐっ!」


 さらには私が被雷したことを見て取った楓お姉さんが私を支えるために近づいてきて、感電してしまったらしい。


 いや私には自動回復のスキルがあるから平気なのだけど、問題は楓お姉さんだ。


「だ、大丈夫ですか!?」


「は、はい。鍛え方が違うので」


「いやいや感電してたじゃないですか。かんっぜんに感電してたじゃないですか。大丈夫なはずが……」


 お姉さんの身体を()る。……あれー? ほんとに平気そうだぞー? 忍者ってすげぇー……。


 いやいや、でも一応回復魔法をかけて――よし、問題なさそう。


 あとは、これからどうするか。

 攻撃魔法を練習するなら、すぐ近くに控えている楓お姉さんに被害が及ぶ可能性がある。


 ……そういえば、自分の身を魔力で包む『結界』という魔法があったはず。これを任意の相手に発動する(・・・・・・・・・・)ことってできないかな?





お読みいただきありがとうございます。面白い、もっと先を読みたいなど感じられましたら、ブックマーク・評価などで応援していただけると作者の励みになります! よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ