第3話 お買い物
青年からもらった硬貨をにぎり、私はその場に立ち尽くしていた。
「どうしよこれ、」
青年の姿はもう見えなくなっている。返そうにも返せない。交番に届ける?
いやこっちに交番なんてないでしょ。治安も相当悪いみたいだし…
もらっちゃうか。服も欲しいし、
私はそう割り切ることにした。
***
私は服屋にいた。町の人に軽く聞き込みをして、ここがいいと言われたからだ。
さすが中世風異世界。日本の普通の服屋には売ってないコルセットとかローブとかがある。
どの服がいいかな?できるだけ着るのが簡単そうなヤツがいいな
すると丈の短いローブとロングスカートのセットの服を見つけた。
あ、あれだったらスカートもボタンだし、簡単に着れそう。
私はその服と、yシャツ、革のブーツを手に取り、レジに運んだ。
「大銅貨7枚と中銅貨三枚ですね!」
ハキハキとした明るい女の子の店員が金額を言った。
そういえば私、貨幣のこととか知らないな、
「すみません、実は私、かなりの郊外から来たもんで貨幣のこととかわからなくて…」
「ええ!?そんな事ある⁉︎あなたどれだけの世間知らずなのよお!」
私の言葉でその女の子はカウンターから身を乗り出した。
「キリシカ!お客様になんて態度とってるのですか‼︎」
「すみません‼︎」
キリシカ、というのだろう、その女の子は気持ちを切り替えるように咳払いをした。
「貨幣のこと、知らないんですね。今だったらお客も少ないのでご説明できますよ!」
この街での通貨はレンドというらしい。でもほとんどが硬貨の名前だけを使っているそうだ。
小銅貨は十レンド、中銅貨は百レンド、大銅貨が千レンド、小銀貨が一万レンド、大銀貨が十万レンド、小金貨が百万レンドで、一番大きい大金貨が千万レンドになるそうだ。
一桁ずつで大きくなるみたいだ。
平民や普通の普通の冒険者に手が届くのは小銀貨くらいで、一部の富豪で大金貨に届くかどうかくらいだという。貴族はそれら平民と違い余裕でお金を使えるみたいだ。
「お金についてはこれくらいね」
「ありがとうございます!あ、じゃあ支払いますね」
私はもらった硬貨を出した。そういえばこの硬貨はどれなんだろ、色はー金
「うえええええ!?」
キリシカさんは食い入るように硬貨を見た。
「あんたなんてもの持ってんのよ…」
「え?」
「これ、大金貨じゃないの!!!!」
***
さっきキリシカさんを叱りあげてた女性は「お釣り出せるかしら」とつぶやきながら店の奥へ行った。
私はというと、
「どうして郊外にいた世間知らずっ子が大金貨なんて大金持ってるのよお!!!!」
キリシカさんに尋問されてた。
「おじいちゃんに訳も分からず持たされて…」と即席の言い訳を放った。
「いや、そのおじいちゃんどういうお財布観念してるのよお‼︎」と突っ込まれてしまった。
突然質問ラッシュをやめ、キリシカさんは何か考えてるのか、うなりだした。
「もしかしてそのおじいちゃん、没落貴族なんじゃない?」
?
よくわからないけど、ちょうどいい
「うん、たぶんそーかも」
店の奥からさっきの女性がお金を持って出てきた。
「では、これ、お釣りです…」
心なしか元気なさげに見える。
きっと金貨はかなり高騰なのだろう
「ありがとうございます。」
やっぱもうちょっとこの世界のこと知っといたほうがいいのかもな…
私はそう思い、図書館の場所を尋ねた。
「図書館ならこの街の一番大きい通りの先にあるわよ。貴族街の方ね。通りはこの店の西側にあるわ。」
よし、じゃあ次はそこに行って情報収集でもしようかな。
ありがとうと言い、店を出ようとすると、「ちょっと待って!」とキリシカさんが止めてきた。
「あなたさあ、本当世間知らずで危なっかしいからさ、困った時は相談してよね!」
「え?」
それはかなり助かる。
「いいんですか!?助かります!」
「敬語いらないわよ!なんでも相談してね、私ここで働いてるから。」
キリシカさん、いやキリシカちゃんはにっこり笑った。
「私はキリシカ・リーゼル。あなたは?」
「く、黒江莉音。」
「クロエちゃんっていうんだね!今ちょっと訛ってた?」
あれ?苗字が名前として見られちゃった?まあいいか。ここではそう読むのが普通だし、クロエ・リオンって読み方も違和感ないからこのままで行こう。
「じゃあこれからは頼りにさせてもらうね!キリシカちゃん。」
***
外に出ると、だいぶ暗くなっていた。
「そろそろ帰ったほうがいいかな。」
酔っぱらいたちの笑い声も聞こえるし、早く帰ったほうがいいだろう。
私は家に繋がってる扉へ向かった。
扉を開けると部屋の中が見えた。
「よかったちゃんとある。」
時間経過でなくなってたらどうしようとおもったが大丈夫なようだ。
私は部屋に入った。
「あれ?」
こっちはまだ夕方だった。しかも私が異世界へ行ったときとあまりかわりがない。
「時空が違うのかな?」
そういえば、あっちで歩き回ってたはずなのに疲れは全くと言っていいほどない。
「不思議。」
まあでも、異世界と日本だ。時空がゆがんでいてもおかしくない。深く考えるのはやめとこう。
私は買ってきた服をベッドにおいた。
「そういえばあの男の子なんで大金貨なんて持ってたんだろ…」
私は小さく呟いた。