第2話 異世界
5秒ほどフリーズした。
「はああっ⁉︎」
突然大声を出した私に街の人たちは奇異なものを見るかのような視線を向けた。
しかし私はその視線を気にすることもできなかった。
だって異世界だよ?魔法や剣のファンタジーな世界だよ?まともでいられるわけないじゃん‼︎
私は思いっきり扉を閉めた。
「ゆ、夢だきっと。こんなこと現実で起こるわけないじゃん」
そう自分に言い聞かせながらもう一度扉を開いた。
「うそお…」
その先はさっきと変わらない街の景色が広がっていた。ほおをつねる。
「痛い…」
***
「つまりこの家は異世界につながってるというわけか」
私は家の床にあぐらをかきながらそう結論を出した。
何十分も熟考して結論を出したが、未だ信じられないな。
「まぁ面倒なことになりそうだし、関わらないどこ…」
そう思ったとき、飾っていたフィギュアが目にはいった。
あれ?これってもしかしてリアル異世界人と関わるチャンスじゃない?
美少女エルフとか、イケメンな獣族男子とか。
うわー、そそられる‼︎
結局東京じゃあ華やかに生きられる気がしないし、ちょっとぐらい楽しんでもいいよね?
こうして私は異世界に関わることを決めた。
***
思い立ったが吉日。私は早速異世界の街中を歩いていた。
繋がっている扉は、一度閉めても家に繋がっていたから帰れるはずだ。
しかし、周りの人がやたらと私の方を見てくる。
そういえば、パーカーとジーンズっていう格好だった。そりゃあ周りの人が見てくるわけだな。
どっかでこの世界で違和感無いような服を買わなきゃなぁ。
しかしどうやって金を手に入れる?こういう手のラノベでは所持品を売るのが定番だが、私はいま引越しして必要最低限の物しか持ってない(グッズは別)。
まあ、別にここで過ごさなきゃいけないわけではないし、決めたばっかだけど異世界と関わるのはやめるか…
私はそう思って、来た道を引き返そうとした。そのとき、目の前の角から突然帽子をかぶった金髪の青年が出てきて、思いっきり正面衝突した。
「うわあっ‼︎」
「きゃあっ‼︎」
ぶつかった反動で背中から転んでしまった。
「だ、大丈夫ですか?」
青年が手を差し出してきた、よく見ると凄いイケメンだ。
「大丈夫です。」
そう言いながら彼の手を握って起きる。
それじゃあ、と彼はまた走りだした。すると、彼の服のポケットから布を巻いたものみたいのがが落ちた。
「お兄さん、なにか落としたよ!」
それを拾って叫ぶと、やべって顔して戻ってきた。
「ありがとう、それ財布でさ。ちゃんと渡してくれるなんて優しいね君は。他の人だったら盗んでたかもしれないよ。」
財布だったのか危ない危ない。(しかし、異世界って治安悪いんだな)
その財布を渡すと彼は一枚硬貨を取り出して、私の手の中に握り込ませた。
「え?な、なんで?」
「ぶつかっちゃったことのお詫びと、拾ってくれたことへのお礼だよ。」
いらないと言いたかったが、青年の顔が無駄にキラッキラしてやがる。
青年は「じゃあねっ」というと、今度こそ颯爽と走り去っていった。
呆然としながら、手のひらの金色に光る硬貨を見た。