第一話 新しい家
私、黒江莉音は新幹線で揺られながら窓の外を見つめていた。
この窓から見える田舎の町で私は生まれてから今までの18年間を過ごしていた。
しかし、東京の大学を受け、見事合格した私は今日から東京で一人暮らしを始める。
そう‼︎私はやっとこの田舎から脱出できるのだ‼︎
心の中はもうどんちゃん騒ぎになっている。
この町は本当に何もなくて、私の心のオアシスであるアニ〇イトがなく、電車に乗って出かけないと存在しないのだ!だから私はでっかいアニ〇イトがあったり、他にもたくさん買い物ができる東京に住みかったんです!
そう私は小さい時からオタクで、特にラノベとかにめちゃくちゃはまっていた。
見た目もオタク相応で、ボサボサの長い三つ編み、丸眼鏡とマンガに出てくるようなオタクっぷりだ。
引っ越しで送った荷物の中にはたくさんフィギュアとかアクスタとかが入っている。
ああ、飾るのが楽しみ♪
***
引っ越し先のアパートに着き、手荷物を置いた。1LDKで前まで住んでいた広めの一軒家の時と違い、やっぱり狭い。まあ、都会だから仕方がないんだけど、でも逆に一人暮らし感がしてあの田舎から出て行けたんだと実感できる。
私は弾む気持ちを胸にまだ何もない部屋の真ん中に寝転んだ。
***
引っ越し業者も来て、部屋も整えた。
というわけで、早速出かけようかな。
私は慣れない都会に足を踏み入れた。
外は暗くなりかけていたが、まだひとはたくさんいた。
人通りの多いところを歩いていると私と同じ世代の女の子が目に入った。
やっぱ可愛いな、
やっぱりここにいる人たちはみんなオシャレで可愛くて、かっこよくて、
それに比べて私はどうだ、ジーパンに長袖ティーシャツという地味〜な服装だし、私自身がもともとイモい。
ここに来るまでの明るい気持ちが嘘のように、不安な気持ちで塗り替えられていく。
私、上手くやっていけるかな
劣等感を抱いた私は逃げるようにアパートへ戻った。
***
夕飯を食べるために出かけたのに結局家でピザを出前してもらった。
はー、こんな初日にネガティヴになってたら、更に都会生活が心配になって来るわ。
ピザにかぶりつきながら私は部屋を見渡した。
新しく住む私の家。見慣れない私の家。
もうあの田舎の家での生活には戻れないのだ。
「はあ、もうホームシックとか、後が思いやられるな…」
私はガクッと項垂れた。
あ、そういえば服はまだしまってなかったな。
やる気の出ない足取りで、作業に取り掛かった。
そしてクローゼットを開け-
「え?」
その中には謎の扉があった。この部屋は角部屋で構造上この扉の先は空中のはずだ。
もしかしたら非常用扉かも、と思い、扉に手をかけた。
いや、こんな所に非常用扉作る人間なんていなくね?
そう思い立ったが、時はすでに遅し。
私は扉を開けてしまった。
その扉の先はー
たくさんの人が歩くレンガ造りの街だった。
いや、人かどうかもわからない。
赤髪、青髪、緑髪、銀髪、猫耳、犬耳、長い耳ー
まるで、異世界の住人のような、いや、そのものだろう人間たちが普通に歩いている。
ならば、ということは、
私の家って、
「異世界につながってる?」