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思い出 壱

前回の終わりがサックリでつまんなかったかも……

 雪江さんの事件から1週間ほどたった。

 特段変わった依頼は少ない。


 すぐに解決してしまうので面白みもない。


 そういえば、あの大河さんはなぜ出頭したのか

 なぜ名前を聞いたのか、いまいちわからない。


 「亡霊さんに名前を教えてはいけないのは」

 「何でなんですか?」


 「この前君も少し体験したのではないか?」


 「そうですけど、良くわからなくて……」


 「亡霊と怪異の違いは話したよね」


 「ええ、能力を持つか持たないかですよね?」


 以前紫雨さんに亡霊と怪異の違いは教わっていた

 

 「ではなぜ怪異は能力を持つのか」

 「それは、亡霊に器がないからだよ」


 「器……ですか?」


 「お互いの名前を通じて、肉体と魂を繋げるんだ」

 「悪意がなければので乗っ取られることもないけど」


 つまり亡霊には質量がなく、怪異には質量がある

 といった話だろうか。


 「稀に共存している奴もいるが、お祓いとか」

 「なんでもいいけど、片方が死ぬと片方も死ぬ」


 「それが、デメリット……ですか」


 「そう、共存している奴はすぐ死ぬ。あっけなく」


 そうか、でもお祓いとか霊が死ぬことをしなければ

 どちらも死ぬことはない、ということだろう


 「でもメリットの方が大きいのでは?」


 「そんなことはないよ。共存タイプは」

 「上位種に睨まれるだけで死ぬからね」


 上位種とはなんだろうか?

 鬼とか?


 「妖怪とか、妖とかだね」

 「本当に簡単に死ぬよ」


 「妖怪……なるほど。よくわかんないです」


 あははと笑う紫雨さんは思いついたように

 立ち上がる。


 「少し、昔の話をしようか」

 「ちょうどいいから」


 紫雨さんは1枚の紙を持ってくる。

 思い出すようにゆっくりと、正方形を折っていく


 「折り紙……ですか?」


 うん、と小さく呟いた紫雨さんは何度も正方形を折り

 ようやく手を止めた


 「時雨、これが何かわかるかな」


 紫雨さんの手にはエジプトのアンクみたいな形の

 あっ、これは


 「ヒトガタ……人形ですかね」


 「そう。私達の中にはこれを、身代わりと」

 「そう呼ぶやつもいる」


 人の形をしているから、身代わり……

 

 「これに名前をつけるとしようか」

 

 辺りを見回した紫雨さんは窓の先を見て

 思いついたような顔をする


 「スズメ、そう名付けよう」

 「名前をあげた所で、話を戻すよ」


 私の横に座った紫雨さんは話し始めた


 「いつの事だったかは覚えていないんだけど」

 「私には相棒が居たんだ」



 あの子は突然現れたんだ。

 

 「あなた! 危なかったわよ」


 私は探偵をしていた。

 当時としては珍しい、怪異の専門家も兼業で


 あの日の私は怪異退治をしていた

 2体の怪異退治の依頼だったが、1体を倒した後

 もう1体に背後から襲われる所だったらしい


 「誰だかは知らないけど、助かったよ」

 「ありがとう」


 私の目の前には髪を後ろで結わった

 綺麗な黒髪の女の子……15歳くらいだろうか


 「分身の妖なんて珍しい」

 「あなた、名前は?」


 「あぁ、私は……」


 私が名前を言おうとした時、少女は話を遮る


 「もちろん、偽名よね?」


 不思議なことを聞く少女だ、と私はそう思った。

 

 「いいや、私に偽名はないよ」


 当時の私に偽名はなかった。

 少女は信じられないといった顔で私に言う。


 「じゃあ考えたげる! もう夕刻だし」

 「黄昏……とかかしら」


 「ははは、面白いが……却下させてもらうよ」


 その時、激しい雨が降った。

 夕立、驟雨……


 「ああ、もうそんな季節なのね」

 「村雨……むらさめ。むらさ……紫雨!」


 「悪いけど、紫雨も却下だ」


 少女は他にもたくさん名前をあげたが

 全て却下させてもらった


 「もういいわ」

 「私の名前は"雫"。よろしくね、紫雨」


 「……却下したはずだけどね。よろしく」


 それから私達は依頼を共にすることが多くなった

 私は謎解き、雫は呪詛返し。

 

 そんな時だった。


 「東の方から依頼よ」

 「山を1つ崩すから、怪異を退治してほしいって」


 当時の私は山に居る怪異や亡霊の恐怖を知らなかった

 知っていても、私達は行くしかなかったが。


 山のふもとに集まった人間の中には

 名のある陰陽師も目に留まる。


 「山を崩すなんて罰当たりだ……」


 「でも依頼よ。拒否なんて出来ない」

 「私達はただ怪異を退治すればいいの」


 専門家は私達の他に8人ほど見えた。

 ひとりひとりが名のしれた専門家である


 「そなた達が五月雨組(サミダレ)か」

 「話には聴いておるぞ」


 そんな中、私達へと声をかける袴の男

 

 「優秀な主らよ。3日じゃ……死なんようにの」


 3日のうちに山の怪異を殲滅し、下山する

 今回の依頼内容である


 それから私は雫と共に山に入り、2日ほどかけて

 下段の亡霊をすべて祓った。


 「イカれてるわ……いくらなんでも人数が足りない」

 「それに、亡霊だけじゃない。怪異もいる」


 「お疲れ様。雫、助かっているよ」

 「私は武闘派じゃないからね」


 それから私達は半日かけて上段を制覇。




 「できたら良かったんだけどね」

 「山を降りた時には私は1人だったよ」


 見ていた映画を途中で止められた気分だ。

 相棒の雫さんがどうなったのか、


 「雫さんはどうしたんですか……?」


 「その前に、この封筒を開けてみてほしい」


 そう言った紫雨さんは小さめの茶封筒とヒトガタを

 私に渡して、開けろという顔をする。


 封筒を開けると中に四つ折りの紙が入っている

 紙の表には"春雨様"と書かれていた


 「その紙、広げてみてよ。時雨」


 四つ折りの紙を広げた

 私は息が出来なくなり、胸を抑え丸くなる


 「……っがぁ、ハッぁっ、ぐぁっ」


 苦しむ私の額にヒトガタを付け、紫雨さんは言う


 「スズメ」


 「がはっ……あれ、苦しくない……?」


 紫雨さんの言葉で、先程の苦しみが嘘のように

 消え失せた。


 「これは呪詛だ。時雨……大丈夫?」


 申し訳無さそうな顔で私を覗く紫雨さんに見惚れる


 「大丈夫です……さっきの紙のせいですか?」


 「そうだろうね。身代わりがなければ、どちらかが」

 「死んでいたよ。あの人形もいまや灰だ」


 床には胸に穴の空いたヒトガタの焼き跡。

 私は起き上がりながらあの紙に目がいってしまう


 "久しぶり。やっと見つけた

 本当に便利な時代になったらしい。


 紫雨、人を使ったな? なんでもいいけど、

 そろそろお前を殺そうと思う。 じゃあね"


 四つ折りになった紙に書かれていた言葉

 紫雨さんは暗い顔をしていた。


 「軽い頭痛程度の呪詛だと思ったが」

 「本当に殺す気で来たらしいね」

 

頑張って面白くするね

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