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無意識自殺未遂 壱

この事件は世界観とキャラクターを知ってもらいたくて書いたので、面白みは薄いかもしれません。

でも、次の事件は面白くするから!切らないで!


前回。

主人公が「春雨時雨」を名乗り、探偵である「春雨紫雨」の助手となりました。

 「……チッ。知ってんのかよ」


 頭の中で声が響いた。

 

 「予想通りだ。やると思ったよ」


 「うるさいぞ紫雨」

 「お前には我らの気持ちはわかるまい」


 脳内の声と紫雨さんは口論を始めた。

 

 「祓って欲しいとの依頼かな? 喜んで受けるけど」


 「あー、もう俺が悪かったよ。頼み事があって来た」

 「そうじゃなきゃお前なんかに頼るか」


 「では早速、依頼を聞こうじゃないか」


 脳内の声は次第に影を作り出し、ヒトガタとなった。

 全身が黒く、目があるはずの場所は青く輝いている。


 「俺が憑いている婆を助けてやってくれ」


 さっきの化け物感がある話し方はすっかり消えていた


 「怪異は絡んでいないね? それなら受けよう」


 それから紫雨さんは淡々と依頼内容を聞いていた。

 時折、タバコを吸いながらメモを取っている。


 「承った。私が解決させてもらうよ」


 「癪だがまぁ良い。頼んだぞ」


 黒い影は地面に沈み、悪寒は消え去った。

 そこに残ったのはごく普通の神社であった。


 「さて、君はどこまであれが見えたかな」


 「えっと、黒い影が見えました……」


 「やはり、君には才能があるようだ」

 「あー、それと"いい名前"だ」


 微笑む紫雨さんに私は見惚れることしか

 できなかった。


 「それでは仕事を始めようか」


 紫雨さんはタバコの煙を吐き、話し始める。


 「依頼を受けたお婆さんについてだけどね」

 「先日、自宅で首吊り未遂だそうだよ」


 「自殺しようとしていたってことですか……?」


 私は聞き返してしまった。

 自殺志願者を止めることは簡単なことではない。

 ましてや老人となると難易度は上がる。


 「でも、あの亡霊は言っているんだよ」

 「"自殺なんかする人じゃない"ってさ」


 私達は神社の階段を下り始めた。

 さっきまで降っていた雨はもう止んでいる。


 「探偵らしいことをしようか。時雨」

 

 「探偵らしいこと……ですか?」


 「そうだよ。()()()()だね」


 私の新しい名前……春雨時雨という名前。

 紫雨さんに呼ばれて少しドキッとした。


 「聞き込みってどこに行くんですか……?」 


 「ん? 決まっているだろう」

 「そのお婆さん……"氷雲 雪江(ひぐも ゆきえ)"さんの家だよ」


 「いきなりですか!? いや、でもぉ」


 「こういう時は直球で行くんだよ」


 私と紫雨さんは古くなった住宅街を歩く。

 古い家の中に一軒、明らかに異質な家があった。


 「あの家だけ新しいんですね」

 「他の家と比べて綺麗……」


 「そうだね。あれが雪江さんの家だ」


 雪江さんの家だというあの建物は、

 つい数年前に建てられたような綺麗さだった。


 紫雨さんは長い襟足を整え、呼び鈴を押す。


 「はぁーい。ちょっと待ってねぇ」


 「さて、聞き込み開始だ」


 少し間をおいて出てきたのは白髪混じりの

 お婆さんだった。

 

 「あら、どちら様でしょうか?」

 「ごめんなさいね〜、最近物忘れが激しいみたいで」


 お婆さんの問いに答えるように紫雨さんは名刺を出す


 「私は春雨紫雨。探偵です」

 「この子は手伝いをしてくれている時雨と言います」


 「探偵さんねぇ……誰かの依頼ってことかしらね」


 お婆さんはこちらを警戒している気がする。

 突然来た探偵は警戒されるだろうが、

 それだけではないような……そんな気がする


 「警察の人から自殺未遂をされたと聞きまして」

 「個人的に話し相手になってあげてほしい、と」


 淡々と嘘を付く紫雨さん。

 心なしかお婆さんの顔が優しくなった


 「あの人かい……世話焼きだね」

 「折角来たんだ。二人ともお上がり」


 私達は客間に通された。

 椅子や机は高価な物だろうか、模様が凝っている。


 「全く、守秘義務はどうなってんだか……」

 

 お茶を人数分持ってきた雪江さんは座りながら言う。


 「依頼主から”私の事は秘密で”と言われましたが」

 「隠し事はしない主義なのでね」


 「それは探偵としてどうなんだい……」


 「今回のは依頼ではないですから」

 「個人的なものですよ」


 紫雨さんは話しながらに私に目を配る。

 話に加われと言うことなのだろうか


 「と、ところで雪江さん」

 「この家、周りの家より新しいですよね」


 私は気になっていることを聞いてみた

 些細なことでも、置物になるのは嫌だから


 「ええ、そうなのよ」

 「うちの娘夫婦が補修工事をしてくれて」


 雪江さんは喜々として話してくれた。

 心を開いてくれるといいな……


 「それはそれは、お優しいですね」

 「雪江さんの育て方が良かったのかな?」

 

 紫雨さんも会話に混ざり、私に微笑んだ。

 ”よくやった”と言われたようで嬉しい


 「ところでご家族のことを聞いても?」


 「ええ、いいわよ」


 紫雨さんはタバコに火をつけ、

 用意された灰皿を自分側に寄せる。


 「息子が1人に娘が1人、あと孫がいるわ」

 

 紫雨さんは雪江さんに見えないように

 机の下でメモを取っている。


 「へぇ、お孫さんですか」

 「やっぱり、おばあちゃん子なんですかね?」


 「うちの孫が? どうだろうねぇ」

 「あの子達はあまり顔を見せないから」


 「すいません、失礼なことを聞いて……」


 「いえいえ、いいのよ」

 「最近、久しぶりに顔が見れたもの」


 最近? 最近というと自殺未遂をした時か

 考え事をしていると、ある物が目に入った。


 「仏壇……?」


 そう呟くと雪江さんは慌てたように言葉を重ねた


 「ああ、ごめんなさい」

 「普段人が来ないもので、この部屋に置いてるの」


 「その仏壇はどなたの……?」


 紫雨さんが雪江さんに聞く

 柔らかい口調でやけに落ち着く話し方だ


 「主人のなのよ……つい最近」

 「って言っても数年前なのだけれどね」

 

 「わわ、ごめんなさい! 思い出させてしまって」


 私は慌てて謝罪する。

 

 「いいのよ。主人は入院中に病死してねぇ」

 「そこの病院の先生が娘の夫になったの」

主人公:春雨時雨

探偵:春雨紫雨

お婆さん:氷雲雪江

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