女の言葉
女の話を纏めると以下の通りだ。
・世界観、地形、戦闘技術、魔法体系などゲーム内の根幹システムといえる部分は基本的に同じ。
・以前のゲームの世界での技量をそのままに転生されている。
・聖石の力を取り戻すには『大聖石のかけら』がある8か所の守護者を倒す必要がある
・聖石の力を奪われて、この世界の人々は魔物等敵対する種族との戦闘で不利となっている。
不利なことは以下
1.蘇生魔法に制限が発生している。
2.一部の街や地方が封印され、往来がなくなった。
3.本来、聖石のかけらがある箇所には魔法でテレポートができたがこれも封印。
こんなところだろうか。2についてはまずは移動に制限のないエリアの守護者を倒せばよいらしい。
本来の聖石の力を、結界の力に変えてるから可能なんだとか。
(概ね理解したが、レベルや技能がそのままならそんなに難しくないんじゃないか?それにしてもそんなに都合よく似通った世界が存在するのだろうか?できすぎな気がするが…)
「…」
女は何も答えない。何か怪しい。聞いておこうか。
「なぜここまで都合がいい世界、というかゲームが存在したんだ?それにゲームのキャラが転生するというのは少しおかしく感じるのだが?それにレベルが最大まであがっているプレイヤーは数多くいたはずだ。俺である必要性を感じない。なぜ俺なんだ?」
「それは、本来のあるべき世界をサンプルにゲームが開発されたのでしょう。その後の質問については今は多くを語れません。ですがあなたにしか頼めない、そして全てあなたが望んだことです。会話できる残りの時間も多くはありません。私が消えるその前にいくつか伝え忘れていたことがありますのでそれをお話しします」
「俺が望んだってどういうことだ?消えるってなんだ?」
「時間がないので優先すべきことを話します。前世での肉体能力は168時間に90秒だけ開放可能です。これはレベルに相当するものです。次にあなたにとっては一時的にですが、向こうの世界の言葉が通じません。きっと忘れてしまっているでしょうから。そして最後に。聖石の力はすべて使い果たしました。私はその化身です。早く解放してくれるよう願っています」
「え?それって超雑魚ってことじゃない?すごく重要じゃない?伝えるの遅くない?詐欺じゃない?あと言葉通じないって詰んでない?ちょっと待って」
水面に向かって叫んだが既に女の姿はなく、そして同時に自分の身体が発光し、ゆっくりと転移していくのを知覚した。