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死にゆく世界に決別を  作者: ぬゐぬゐ
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奪われた世界

気が付くと自分の部屋ではない、どこかにいた。

一言で言うなら気味が悪い場所というべきであろう。

毒や瘴気を思わせるようなおどろおどろしい色合いが目に広がる。

足元を見れば濁った水の上に浮いている、それとも立っているというのが適切だろうか。

腐った台地にある汚い池の上に。

「ここは?」

幸いといえばいいのだろうか。汚水には沈むことがないらしい。

なのでまず何が起こっているのか、と考える。

ありえない空気、ありえない場所、それと少し前の記憶。

「夢?夢の中で夢に気づいたやつか?」

たどり着いた結論。気味が悪い夢のでそれなら早く覚めろと体を動かす。

手を回し、そして足を動かす。思い通り動く。

思い通りに動いたからこそ気づいた違和感。視界の高さと目に映る自分の手足、その細さ。

両の手を広げてみれば見慣れたものと違う大きさやそのフォルム。

足元、水面に目をやれば濁った鏡がおぼろげに反射する姿、目を凝らして観察する。

「猫っぽい人間?ってこれ俺じゃん!」

俺。俺は俺でも仮想の俺。

せっかくプレイするなら女性キャラでと、せっかく女性なら俺好みに、と。

わかるだろ?わからん?わかんないかなぁ…。

とにかく俺。身長の高さから腰回りの細さや顔の造形まで納得のいく限り理想を形にした俺。俺でありながら俺の嫁のようなものだ。それとも娘というべきだろうか?自分で作ったんだし?

おー。すごい。リアルな質感、きれいな肌!

夢のせいか綺麗という情報がダイレクトに脳に伝わるこの感じ!

腕を捻り手を観察し理想の肢体を嘗め回すように観察する。顔はきっとにやけてるだろう。

夢の中で創造した体を動かす。夢ならだれも見ていない!

ゲーム中のモーションを再現するよう体を動かす。

超絶かわいい&かわいい俺の娘!!

「それにしてもなかなか夢から覚めないな。もう満足したんだんが」

一連のポーズに満足し、視界の中で唯一腰掛けれそうな黒い岩に腰掛ける。

「そう。それはよかった。抵抗されたときはどうしたものかと思いましたが。それに体もうまくなじんでいるようで安心しました。」

声、それは指向性のないためどの方向から発せられているのかわからない。突然のことに声を上げる。

「誰だ?」

前後左右、首を振っても声の主は見当たらない。

「あなたの下ですよ。声はその石に触れている限り伝わります」

足元を見ると濁った水面の下に逆さまになって立っているように見える。汚れた水なので顔はよく見えない。

(水中って苦しくはないのだろうか。いや、夢ならなんでもありか?)

「汚くないです。そして夢ではありません。助けてくれると約束したでしょう?だからあなたを呼び寄せました。この世界を救ってほしいのです」

(夢ではない、のか。もし夢ではないとしても…どうなるんだ?その前に世界を救う?そんな話は聞いてないし想像もつかない。とにかく情報、状況が全然わからん。)

展開に追いつけず今ある情報でどうにか整理をしようとしていると女は言った。

「この世界は聖石の力を奪われ、人々が闘う力を大きく落とした世界。そして私は聖石の化身。今現在も聖石の力を取り戻すため、有志に助言を与えながら戦っています。しかし力が及ばず知識が足りず非常にマズい事態となっています。そのため非常に似通った世界の英雄であろう貴方に助けを求め、貴方はそれに了承しました。なので貴方にはこの世界を救うべく戦ってもらいたいのです。」

「なるほど。状況は理解できたのだが、その前に俺の思考が読めるのか?なんか気持ち悪いんだけど…」

「あなたが座っているその石に触れている間であれば。ええ。あなたが今、『この真っ黒い石?聖のかけらもなさそうな?』と思った石が聖石です。付け加えていれば本来澄んだ美しい石ですが、聖石の力を奪われたため、くすんだ石のようになっています。ほんの5分前まではもう少し綺麗でしたが、あなたを呼ぶため聖石の力を使い果たし、もはやすべての力を失ったといえるでしょう」

「わかったが、まず思考を読んで会話してくるのをやめてくれ。気持ち悪いというか不愉快というか。いろいろ説明してくれて助かるのだがやはりまだわからない。時間かけて会話してよいか?」

「わかりました。口頭での会話に反応するようにしましょう。長々と説明したいところですが訳あって時間は長くありません」

「そうか。それならさっそく話しあおうか」

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