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死にゆく世界に決別を  作者: ぬゐぬゐ
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理想の世界


願ってた世界なのに…

理想の世界だったハズなのに…


切られた右手を押さえつつその場に崩れ落ちる。

力が足りなかった

認識が甘かった

…それがこの結果だ。


周りに顔をやればどうなったか、どうなっているかがわかる。

理解したくない。理解できない。ワカラナイ。ワカリタクナイ。


あちこちに人が倒れている。右を見ても左を見ても。


あそこにいるのは、定食屋の主人だ。

...定食屋の主人だったモノか。


いつもの服装だからすぐにわかった。清潔感のある真っ白なシャツと茶色のエプロン。主人のトレードマーク。

シャツもエプロンは殆どが赤く染まってる。

もう動かない。息をしていない。

当然だ。胸を貫かれている。その後に踏みつぶされたのかもしれない。

ボロ雑巾のように打ち廃れ、転がっている。


主人の近くには戦うための装いをした男性が前のめりに倒れている。

あぁ、あの男は先日森で助けた若いエルヴァ人だ。

低ランクの、最低ランク装備の。

以前、少しでも助けになればと耳飾りを渡した男だ。


武器は最後まで手放さなかったのだろう。

左手に青銅の剣を握っている。

しかし右手は、右腕は見当たらない。

彼がいる石畳は血だまり、そしてピクリとも動かない。


駆け寄る気力が出ない。すぐにでも駆け寄って助けたいのに。

助けたい。助けたいのに。


どうやって?


あれはもう死んでいる。

死んでいるものは助けられない。

助けるというのは生きている間に、生きている人間に行えること。

死んでしまった人には何をやっても無駄だ。


当たり前なことなのに、当たり前じゃない。

願っていた世界なのに、願っていた世界ではない。


虚ろな視界が滲む。

虚無を感じていた心が現実に追いつく。

表情が歪む。


それでも処理しきれない感情を音にして吠える。

言葉にならない想いを呪詛のように吐き出す。

子供のように、赤子のように喚き散らす。

叫びも無意味に空に消える、想いも虚しく宙に消えた。

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