探索!野菜チーム
探索はそれぞれ、農業、果樹・花、畜産、開発と部門ごとのチームに分かれることにした。
野菜チームは、農業科の恵とももかだ。
2人は家の裏にある、広大な畑を見に行くことにした。
「あっ!ももか畑を見に行く前にちょっとだけまって!」
「いいよ〜!」
恵は、クスの街からダンオン村に来る途中で立ち寄った道具屋で買った最高最低温度計と最高最低湿度計を2つずつ持っていた。それぞれを1つずつ入り口に設置する。
「よし行こう!」
2人は、玄関から裏手に回るとすぐに畑だった場所に来た。地面から30cm程の柵が畑を囲っている。その柵にもう1つの最高最低湿温度計と最高最低湿度計を設置した。
ももかは柵をぴょんと飛び越えた。
「うわー!広いねー!」
「うん!みんなの食糧は確保できる広さだね。でも、荒れてるな…。」
5年間手入れされてないだけあって、雑草だらけである。恵は、畑の中にあるものを見つけ急に足を止めた。
「げっ!厄介なのも生えてる…
まだ、穂はついてないね。今のうちに根こそぎ取っておきたいな。倉庫にスコップあるかな。」
「見に行ってみよう〜」
「おー!
ってももか。そっちは倉庫じゃないよ。」
「あっ!じゃあ、あっちか!」
「そっちも違う…。」
えへへとももかは笑うと、恵について行くことにした。
倉庫には見慣れた道具もあれば見慣れない道具もあった。
「村長さんに使い方聞いておけばよかった。
…えっと、スコップ…スコップ。
あっ!剣スコあった〜!」
恵はお目当てのものを見つけ、ももかの姿を探すがどこにもいない。
「ももか〜?」
倉庫は思いのほか広く物も多かった。
恵はきょろきょろと辺りを見回しながら、中を探す。
(あっ!いたいた。)
ももかは、ブーメランのようなものが円形に並んでいる機械に釘付けになっていた。
数秒じーっと眺めると、人差し指で触れてみた。
「痛っ!!!!!」
「何やってるの?!」
ももかの人差し指から血が垂れている。
恵は急いで、桃佳に駆け寄ると、ブラウスの袖についていたレースの裾を引きちぎって、桃佳の指に巻き止血をした。
「なんか面白そうだなと思って。」
恵はやれやれとため息をつくと、救急箱を探しにももかと家に戻った。
ももかは、面白そうな物や、仕組みを知りたい物を見つけると、危ない物でも、躊躇なく触ってしまうタイプだ。
これまでも、鎌の刃先、らせん杭などで、怪我している。さすがに作動中の刈払機の刃を触ろうとした時は、先生とクラスメイトが全力で止めたものだ。恵は、すっかりそのことを忘れ、油断していた。
救急箱は、2階のダイニングの棚でやっと見つけた。イスに座ったももかは、じっと出血している指を眺めている。
「ももか、指洗おうね。」
「はーい。」
ももかはもう痛みを忘れたのか、にこにことしている。
洗面台で血を洗い流す。
「意外と傷は浅いね。よかった。」
恵は、茶色の小瓶を出した。蓋を開けると、独特の匂いがする。おそらくヨードチンキだろう。
「少し沁みるよ。」
恵はヨードチンキを染み込ませた豆ガーゼで、傷口を消毒した。その後すぐに、四角の清潔なガーゼを傷口にあて包帯で巻いた。
「おー。ありがとう。
さすが恵だね!」
「2年間、ももかのそばにいると、これくらい楽勝に覚えるわよ。」
「私のおかげね。」
ももかは誇らしげに胸を張った。
「いや、ほめてない、ほめてない。」
ひと段落すると、2人は作業着に着替えた。
「ギシギシ取れる分は取っておこうか。」
「うん。」
2人は作業着に着替えると、畑に出た。
手にはしっかりと剣スコップが握られている。
「ももかは無理しないで!」
「はーい!」
「ももかいい?
丸ごと根っこから取るのよ!」
「はーい!」
「ギシギシの繁殖力は強いからね。
実生でも増えるけど、根っこでも増える。
しかも、根っこのカケラでも残ってたら、そこから芽を出すし。
これが食べ物だったら、いいのにな〜。」
2人は、広大な畑で日が暮れるまで、雑草を掘り上げていた。
用語説明
最高最低温度計…気温の最高気温と最低気温が測れる温度計
最高最低湿度計…湿度の最高湿度と最低湿度が測れる湿度計
剣スコップ…先の尖ったスコップ。主に土を掘る時に使用するスコップ。
らせん杭…杭の先端側がらせん状になっている杭。ビニールハウスや、ハウスバンドを固定する時に使用する杭
刈払機…取り付けた刃を高速回転させて雑草などを刈り取る機械