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ダーント国の魔女

謁見の間を出ると、廊下に侍女が5人ほど控えていた。

女王の後ろを8人がついていくと、その後ろから、侍女達もついてきていた。


女王が部屋の扉の前に来ると、侍女の5人のうち2人が、扉を開けた。


「どうぞ、お入りください。」


8人は言われるがままに中へと入った。

女王は扉の前で、クレヴィアだけ来るよう侍女達に伝えると、侍女が1人だけ王女の後ろからやってきた。


「お疲れでしょう。どうぞ、そちらにお掛けください。」


8人は女王に促され、大きなソファに座った。王女も座ると、ゆっくりと話し始めた。


「改めて、うちの子達が、大変ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません。」


「いえ、こちらこそ、女王様の大切なご子息に手をあげてしまい申し訳ございません。」


かすみが言うと、王女は一礼した。王女は、侍女のクレヴィアに目配せすると、クレヴィアは、部屋の外に出て行った。


「とんでもない。痛かったでしょう……」


クレヴィアはすぐに戻ってくると、氷を包んだハンカチをかすみの赤くなった右手に優しくあてた。


「お手を痛めながらも、ウチのバカ王子を教育してくださり、ありがとうございます。言葉と行動は乱暴でしたが、農耕をする国民への愛も感じました。」


「いえ、そんな…。」


かすみは、少し恥ずかしそうに俯いた。


「はっ!私とした事が。

申し遅れました、私はフロスディア・ナチュリアドと申します。」


フロスディア女王が自己紹介すると、8人は順番に自己紹介をした。


「かすみ様は、良い母親になりそうですね。」


フロスディア王女は、優しく笑った。


「いえ、そんな事ありません。」


「少なくとも、私よりは、まともな母親になるでしょう。私は、もう、叱ることさえ疲れてしまいました。」


フロスディア女王は、ふぅとため息をつくと続けた。


「最初の子は、私の後を継ぐ王にすべく、あらゆる教育を受けさせ、厳しく育てました。しかし、いざ、王座に着くと、彼は能力はあるものの、人を頼ることを知らず、孤独を感じ、ついには、自分で自分を追い込む形で自害してしまいました。」


フロスディア女王は少し間を置くと続けた。


「今の王太子には、勉強もさせましたが、厳しくはせず、欲しいものは好きなだけ与えることにしました。しかし、今度は、この世は自分の思い通りになると考え、人に頼りっきりで、欲しいものは全て手に入れようとする、わがままな子になってしまったようです。

子育てというのは、なかなか、思うようにいかないものですね。

私もそろそろ、次の世代の王に任せたいのですが…今回もダメそうです。」


女王は、キョトンとしている8人を見て続けて言った。


「あら…長々と重たい話をごめんなさいね。こういう事は、王室と関係のない人でないと話せなくて…」


恵は、頭を振ると、女王に尋ねた。


「お辛かったですね…。私達でよければ、いくらでもお話しください!」


「まぁ!嬉しいわ。でも今日はこのくらいにしておきましょう。」


クレヴィアが、紅茶とお菓子を運んでくると、女王は真剣な顔つきになった。


「では、そろそろ本題に入っても、よろしいでしょうか?」


相変わらず、凛とした美しい女王の声には、知らず知らずのうちに、姿勢が正される。


「はい。」


恵が答えると、フロスディア女王は続けた。


「使者様が派遣される時は、基本的に世界が破滅へと向かい始めた時です。

使者様は、どのようなことを、依頼されてきたのですか?」


「実は…」


恵は、知恵の神であるオシエルから、依頼された内容と、魔法が力を持ちすぎ、豊穣の神ミノールが弱るほど、食糧危機が近づいていることを話した。


「…なるほど、それで豊穣の神、ミノール様から遣わされた事になっているのですね。」


女王は、少し考えると口を開いた。


「今までは、魔族との戦争や、堕ちた神の討伐などの依頼がほとんどでした。

今回の内容は、これまでに前例のない事です。そのため、口頭だけでは、他の国も信じようとしないでしょう。特に魔法で栄えているヘクセレイ国は…。」


「どうすれば信じてもらえるでしょうか。」


実咲が尋ねると、女王は紅茶の入ったティーカップを持ち上げた。


「そうですね…。200年前の堕ちた神の討伐では、その存在をヘクセレイ国が知らせました。その時の資料は残ってたかしら…」


女王は、カップを置くと立ち上がり、部屋に置かれた豪華な装飾のしてある棚を調べ始めた。


「ああ。これこれ。」


女王は箱を持ってくると、蓋を開け、多くの手紙の中から封筒を1つ取り出した。


「これが、その時の手紙です。この手紙を見て、私は現地に行き実際に確認をしました。」


その手紙には、目の前のフロスディア女王宛に使者の証言と、都市が1つ1夜にして無くなった事が、書かれていた。


「ん?…?」


「綾乃様、どうなさいましたか?」


「この事案が起きたのは200年前って言われました?」


「はい。」


「失礼ですが…。

フロスディア女王はおいくつですか?」


綾乃が尋ねると、フロスディア女王はクレヴィアに尋ねた。


「今は、何年だったかしら?」


「建国から543年でございます。」


それを聞くと、女王は答えた。


「そうね。正確には覚えてないけど、400弱ってところかしら。」


「えっ?!」


8人はその見た目からは想像できない年に言葉を失っていた。それを察して、フロスディア女王は説明した。


「この国では、神に功績を認められると、稀に不老不死や長寿と言った加護を与えられることがあります。

私は、30歳の時に、不老不死の加護をミノール様に与えられました。」


「すごい。羨ましい。」


綾乃は目をキラキラさせた。


「うふふ。綾乃様、そう良いことばかりではないですよ。」


そう言って、フロスディア王女は紅茶を一口飲んだ。


「………。

時間というものは残酷です。

歳を取れば取るほど、止まる事なく、むしろ早く進みます。それに、多くの大切なものを失うばかりです。」


「…国王陛下と、王子も不老不死なのですか?」


静まり返った空気の中、優衣が不思議そうに尋ねる。


「いいえ、あの2人は、まだ、そのような加護を得ておりません。」


「各国の王様や女王様はみんな不老不死なのですか?」


綾乃は優衣に続いて尋ねた。


「一部ですが、加護を受けた王族は他にもいます。しかし、戦が絶えぬような国は、数年周期で、次々に王が変わっております。

他にも、未だ加護が与えられていない国も多くあります。

今の所、私が1番長生きしている王族になりますね。

そのためか、周りの国から、私が魔女だと噂されてしまうようになりました。残念ながら、本当に小さな魔法しか使えません。」


女王はふふふと小さく笑った。


「話が逸れてしまいましたね。つまり、この手紙のような、何か1つを証明して納得させる事が必要です。まぁ、すぐには難しいので、後々、考えましょう。」


「ニセジャガ…。

あのフロスディア王女様。魔法で作った食べ物について、いくつか調べたいのですが。」


「さすがは、恵様。私もそれは気になっておりました。作り方については、極秘で調査を始めております。何か分かりましたら、情報を共有いたしましょう。」


8人はそれを聞いて頷いた。しばらくして、恵は思いついたようにゆっくりと話し始めた。


「それから、証明とは別にやっておきたい事があるのですが…。

魔法で作った食べ物より美味しい物が作れれば、農業は維持できるのではないでしょうか。

日本でやっていた品種改良や技術指導参考にして、この世界で農業改革やってみようと思うのですが…。」


恵は実咲を見た。


「確かに、どう転ぶかはわかりませんが、1つ1つやって行くしかないと考えます。」


実咲が言うと恵は頷いた。


「フロスディア王女様、地味な事ですが、魔力が尽きても、食べ物に困らないように、食糧生産の量を増やす為の研究してみます。」


「そうですね。こちらも、できる事を少しずつ行います。」


フロスディア女王はそう言って、にっこりと笑った。


「皆様も、何か必要な事があれば、いつでも、お申し付けください。

それから、他にも何か分かりましたら、私にも教えてください。」


そう言うと、フロスディア女王は、封筒を5つ渡した。


「これは私に直接届く、魔法施された封筒です。極秘の内容はこちらで送ってください。」


そう言うと、フロスディア王女は恵に封筒を渡した。


「さて、ダンオン村から来られて、お疲れでしょう。あまり、お引き止めするといけないですね。」


そう言うと、フロスディア王女は、立ち上がった。部屋を出ると部屋の外で待っていた侍女を連れて、8人を城の入り口まで見送った。

8人は、村長の待つ馬車に乗ると、城の中での事を村長に話しながら、ダンオン村へと帰った。

活動日誌12

日付 ブールクッロ.2(3月2日)

記録 天野 恵


今日は、クスにある王城まで行きました。女王様と、今後やる事を、相談して決めました。

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