ひよこ導入!
朝ごはんを終えると、実咲は馬車の練習をしていた。だいぶん、1人で乗れるようになっていた。
倉庫に荷台を戻しにいくと、綾乃と優衣が困ったように一輪車を見つめていた。
よく見ると周りに道具が置いてある。どうやら、一輪車に全て乗らないようだ。
「馬車の練習してるんだけど乗ってく?」
綾乃と優衣は目を輝かせた。荷台に荷物を積み終えると、馬車を走らせた。果樹園で、2人を下ろすと、倉庫に戻り、馬車からスプリングとオータムを順番にはずし、放牧場へと連れていった。
実咲は菜月と合流すると、改修の終わった鶏小屋の隣にある、育雛室に来ていた。
いよいよ、注文していた、ひよこ200匹がやってくる予定だ。
2人は、4段になっている幼雛部屋の掃除を終えると、加温加湿自動調整機のスイッチを入れた。温度27℃、湿度65%と表示されたのを確認し、ひよこ用の小さい給水機をひよこの部屋にそれぞれ3個ずつ置いた。
その後は、少し濡らしたひよこ用の餌と籾殻を床にばら撒いた。
お昼になる少し前に、ピヨピヨと鳴く荷台を引く馬車がやってきた。
「こんにちは。ギルドからの依頼です。ひよこの納品に伺いました。」
「待ってました!」
2人は、保温された、木箱を抱えると、育雛室へと運び、ひよこを4段の部屋に50匹ずつ入れた。
伝票にサインすると、納品に来た業者のおじさんは帰って行った。
「温度いい感じだね。」
「うん…。」
幼雛室の小さい窓から、ひよこが、お互いに遊んだり、眠ったりしているのを見て、実咲が言った。菜月は、可愛いひよこを夢中になって、見つめている。
「これ…品種何?」
菜月はふと気になって聞いてみた。
「ロードアイランドレッド種」
実咲と菜月は数秒無言のまま見つめあった。
「こっちにも、いたんだ。」
「うん。ギルドで見つけた時びっくりした。やっぱ、最初は卵肉兼用種だよね〜!!
でも、知らない品種もいくつかいたから、今度、調べて、飼ってみようと思う。」
「へー、今度、私も一緒に行きたい。」
「いいよ!……あっ!水飲んだ。」
実咲はひよこが水を飲んだのを確認すると喜んで言った。
「明日は朝から、スプちゃんとオーちゃんにご飯あげて、ひよこ達の水換えと、床掃除して、出発しないとだね。」
「うん…。」
「あっ!そろそろお昼かな〜!菜月、家に戻ろう!」
「了解…」
菜月は、ひよこに手を振ると、実咲の後を追った。
お昼を済ませると、2人は雑草や、野生化した牧草が生えている採草地にいた。
「ここも、そろそろ手をつけないとね~。」
そう言って、実咲は草刈機を取り出し、土地を斜めに歩いた。実咲が菜月の所まで戻って来ると、草刈機が動き出した。
「すごっ!楽じゃん…」
菜月は、驚いたように言った。
「ねー!これなら、2人でも、牧草作れそうだよね。」
「うん。」
「よし。ここは機械に任せて、馬小屋の運動場の修繕に向かいますか!」
「おー!」
実咲と菜月は大工道具を持つと、馬小屋へと向かった。馬房の奥には運動場が付いていたが、柵が折れていたり、釘がむき出しになっていたりと危なかったので、修繕することにした。
実咲は、折れ曲がり、先がむき出しになった釘をバールや片口ハンマーを器用に使い、抜いていく。
菜月は木材を持ってくると、途中で途切れてしまった柵を修繕していた。
運動場の柵が全て終わる頃には、日が傾き始めていた。
「スプちゃんとオーちゃんを帰さないと。」
2人は採草地の草刈機を回収して、道具を倉庫に直すと、放牧場に向かった。
2頭の馬は、出入り口で2人が来るのを待っていた。
「おー!2頭とも今日も良い子だね〜。」
菜月は全力でヨシヨシすると、無口頭絡にロープをつけた。
2頭をそれぞれの馬房に戻すと、餌箱に餌を入れた。
「さて、私達も帰りますか。」
「うん…。」
2人は、家に帰ると、まず大浴場に向かった。
2人は頭、顔、体を順に洗うと、湯船に浸かった。
「ふー。明日は、国王陛下に呼び出されたから、行かないとだね。
運転、菜月に任せて大丈夫?」
「うん…」
「きつい時は交代するから、いつでも言ってね。」
「うん…」
「菜月?」
「うん…?」
「乳を見ながら話すのやめてもらっていい?」
「………?
何食べたら、そんなに大きくなる?」
「んー。わかんない。でも、小さい頃から牛乳は飲んでたからかな〜。搾りたて〜!」
「ふーん。チッ!」
「聞いておいて、キレるんかい。」
実咲は一笑した。
「牛乳苦手…」
「そういえば、そうだったね。チーズとかは?」
「なぜか、加工品は食べれる…」
「でも、豆乳の方が効果あるって、聞くよね〜」
「あれも、畑の乳だ。苦手…」
少しの間が空いて、実咲は「ふふふっ」と笑った。
「やっぱり、菜月って、面白いよね。
あっ!私、そろそろ限界。先に上がるね〜!」
「私も上がる!」
2人は着替え終わって、食堂に向かうと、4人が心配そうに話していた。
「うーん。もう少し待ってみる?」
かすみが料理を並べながら、心配そうに言った。
「でも、もう暗くなり始めてるから、呼びに行かないと!私行ってくる!」
恵は上着を羽織った。
「どうしたの?」
その様子を見て、実咲が尋ねた。
「まだ、綾乃と優衣が帰って来てないの。さっき、倉庫も見に行ったんだけど、いなくて。そろそろ日が暮れて危ないから、私呼んでくる。」
「ちょっと待って、私と菜月で行ってくるよ。馬の方が早いし。
それに、朝、すごい荷物乗せたから、馬車の方がいいかもしれない!」
「じゃあ、実咲と菜月にお願いできる?」
「お任せあれ!」
「うん…」
2人は同時に返事をすると、外に飛び出した。走って、馬小屋に向かった。
「スプちゃん、オーちゃんごめんね。少しだけ手伝って。」
2頭は立ち上がると、素直に馬車に繋がれた。
御者席に菜月が座ると、馬車は果樹園を目指して走り出した。
荷物を片付けている2人の無事を確認すると、実咲が声をかけた。
「2人共、大丈夫〜?」
馬車は荷物と4人を乗せると今度は家に向かった。
一番星が輝き始め、馬車からスプリングとオータムを外すと、馬房へと戻した。
「2頭ともありがとうね。助かった。」
と言って菜月は、おやつのにんじんを2頭にあげた。2頭はブルルと返事をすると、嬉しそうに食べた。
「じゃあ、明日もよろしくね〜」
それだけ言うと、家に走って戻った。
戻ってきた4人を見て、かすみが安心したように「おかえり〜」と言った。
4人はそれぞれ、「ただいま〜」と言い、中に入ると、ドアを閉めた。




