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夢のマイハウス

「おい!綾乃〜!!本ばっかり読まずに手伝え〜!」


綾乃と優衣は、雑草が全て刈り取られたハウス予定地にいた。

綾乃は朝ご飯の後から、ずっと紫穂からもらった本を読んでいる。

優衣はハウスの柱を建てるための印をハンマーや杭、メジャーを使って印をつけていた。


「……魔力の素であるティクルを感知する。なるほど。」


綾乃は、ぶつぶつと呟いている。


「あーやーのー?!」


優衣は測量を終えると、ついに、綾乃から本を取り上げた。


「あ!ごめんごめん。ハウス設置ね!さぁ、やろうやろう。」


さすがに、まずいと思った綾乃は、立ち上がると、先が緩くカーブした細めのパイプを持ってきた。

そのパイプを優衣が地面に印をつけたところに並べていく。

10分もしないうちに、左右で35本ずつ、計70本並べ終わった。次は、パイプの下の方に付けてある印のところまで、地面に埋め込んでいく。

この時も、簡単に抜けないように、パイプを刺したところを、足でしっかりと踏み固めていた。


「これ、今日中に終わるよな?」


綾乃はふと思った事を口にした。


「真面目にやれば、終わると思う。」


優衣はそれだけ言うと、もくもくと作業を続ける。


「そういえば、いつのまに資材運んだんだ?」


「昨日、恵が荷受けした時に、気を利かせて馬車を回して置いておいてくれたみたい。」


「さっすが、リーダーわかってるぅ!

完全に重い資材を一輪車に乗せて運ぶ事を覚悟してた。」


綾乃は「ラッキー」と呟くと、次のパイプを印のところで埋め込んでいく。


「しかし、こっちの世界にもハウスがあるのは驚いたな。」


「うん。この世界の人も同じ事考えて研究した人がいたんだね。」


「でも、部材の少なさから見ると、この世界の方が上手だな。」


「まぁね!」


2人はお昼なお弁当の時間までに全てのパイプを埋め込み終えていた。


「やっと休憩だ。」


綾乃は座り込んだ。


「お疲れ様〜」


優衣がお弁当と飲み物を持ってくると、綾乃に渡した。


「この分だと今日までには終わりそうだな。」


「うん。さすが私達。」


2人はイェイと言って、片手でハイタッチをした。

体を動かした後のご飯はなぜかとてもおいしく感じるものである。2人は夢中になって食べ終えると、休憩もそこそこに、作業に戻った。


「なんか、お菓子食べたいよな。」


「甘いもの食べながらだと、作業が捗りそうだよね〜」


「家の手伝いの時は、おやつ休憩があった。」


「え〜!何その幸せタイム。」


「ここ、学校じゃないし、普通におやつの時間作ってよくね?」


「確かに!今度、かすみにお菓子作れるか聞いておかなきゃ。」


優衣と、綾乃はそれぞれ脚立を取り出すと、午前中に埋め込み終わったパイプの間に置いた。

脚立を登り、上の方に座ると上部にくの字に曲った金具をつけて両側のパイプを接続していく。

全てのパイプを接続すると、優衣は直管のパイプを持ってきた。


「本当にこれで固定できるのか?」


綾乃は連結球と書かれた箱に、いっぱいに詰められた銀色の球体を見て言った。触った感じは粘土のような感じだ。


「うん。組み立ての説明書には、それで固定するって書いてあるよ。」


「マジか…」


綾乃は「よっ」と脚立を登ると、長い直管のパイプをくの字の金具の下に持ってきた。

くの字の金具と直管のパイプが交差したところに、連結球を下から当てると、連結球は金具と直管パイプの隙間に、すっと消えるように潜りんだ。


「これ本当に大丈夫か?」


綾乃は、後ろで作業している優衣にきいた。綾乃と同じように連結球をつけると、連結球をつけたところを手で揺らしてみた。


「おお!溶接したくらい、しっかりしてる!」


優衣が言うと、綾乃は「マジで!?」と驚きながら、同じように揺らした。


「本当だ!これ、普通に日本にも欲しい。」


2人は、もくもくと、上を見ながら作業をした。全ての直管のパイプを連結球で繋ぐと、だいぶん、ハウスらしい形になった。


「あと少しだね…」


「うん。」


2人は間口と呼ばれる入り口になる面のにもパイプを設置し、扉とレールもしっかりと組み立てた。あとはシートを張るだけだ。


「……?急に雑じゃね?」


綾乃は説明書を読むと眉をしかめた。


「どれどれ、見せて〜」


優衣が横から覗き込むと、"あとはシートを被せ柱のフックにシートの留め具を掛けると完成です。"とだけ書いてあった。


「本当に雑…。そういえば、パッカーとかも無いよね。」


「とりあえず書いてある通りやってみる?なんかシートも特殊素材っぽいし。」


綾乃が言うと2人はシートをハウスの側面で広げ始めた。シートの端と2m毎にロープを繋ぐと、反対側にロープを投げる。

2人は反対側に移動すると、ロープを少しずつ引っ張りながら、シートを上に張っていく。

シートが下まで来ると、支柱の下の方についている留め具でシートを留めた。

ハウスを一周ぐるりと留め具で留めて回ると、2人の予想通り、シートの余ったところが、だらしなく垂れ、隙間ができていた。


「これやっぱダメじゃない?」


優衣はハウスに背を向け綾乃の方を見ると、少し苛立ったように言った。


「あっ!シート動き出したよ。」


綾乃は、優衣の後ろを指さして言った。

優衣が振り向くと、シートはパイプにピタッと貼り付くように、どんどん隙間がなくなっていき、最後には見慣れたハウスが完成していた。


「やばっ…。」


綾乃もこれには言葉が出てこなかった。


「一応、中に入っとく?」


優衣に言われて、綾乃はハウスの扉を開けた。

中に入ると、外より少し、暖かい気がした。


「このシート、魔法道具だな。ティクルを感じる…」


「ティクルって?」


「魔力の素だよ…まぁ、感じるってのは嘘だけど…」


「あっそ…」と優衣は話を流すと、外に出た。


「綾乃、手伝ってくれてありがとう。」


「うん。だいぶん魔法技術に助けられたけどな。」


「あと2棟建てる予定だから、今後もよろしくお願いします。」


「マジかよ…」


外は、日がだいぶん落ち、夕闇が近づいていた。2人は慌てて、後片付けを始めた。


「明日、ギルドに行ってくるけど優衣はどうする?」


持ってきた道具を一輪車に乗せながら、綾乃は言った。


「うーん。特にいるものないし、私はお留守番かな…」


「了解〜」


「何?寂しいの?」


「べ、別に〜」


「強がんなくていいって〜」


優衣は綾乃の肩を軽く叩いた。


「そういえば、明後日は雨って言ってたな。」


「うん。春が近づいてきている証だね。」


綾乃は忘れないように一輪車に本を載せると、優衣と家を目指して歩き始めた。


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