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食糧危機!?




白い空間に置かれた椅子は、中世ヨーロッパの王室を思わせるような豪華で大きい椅子だ。


スーツの女はその椅子に腰をかけた。その瞬間、一瞬で姿が変わった。


後ろでひとつ結びになっていた黒髪は、綺麗な栗色の長い髪に、スーツできめていたスタイルの良い体には、白い布を幾重にも重ねたドレスを纏っていた。


「それで、お願いとはなんですか?」


恵が賞状と盾を持ったまま尋ねた。


「話せば長くなります。どうぞ、おかけください。」


8人の後ろには、不思議と椅子があった。


「私はとある世界の知恵の神をしています。その世界は魔法という技術が存在します。」


「キタキター」


綾乃の歓喜の声を、横にいる紫穂が手で塞いだ。


「しかし、魔法が力を持ちすぎ、世界は破滅の一途を辿っています。」


紫穂は不思議そうな顔をして「なぜ?」と尋ねた。


「魔法を応用すれば、人力より便利な物を作ることができます。それが、魔法道具です。

あらゆる人々が快適な暮らしを求め、魔法道具に頼りました。

しかし、世界全体での魔法量は有限です。」


「有限?!使いすぎると枯渇してしまうのですか?」


綾乃が紫穂の手を振り払い、驚いて尋ねた。


「はい。

この世界の生き物は魔法が有限である事に気づいていません。


ですので、さらに悪化する事態に傾いてきております。


王都や大きい街に人が集まり、食料を生産していた小さな街や村は人口が減り、畑の上に魔法施設などの建造物を建てるようになりました。


皆様には、この食糧危機から、どうにか世界を救ってほしいのです。」


知恵の神からの依頼に、8人は即答ができなかった。


「その世界では、人間ならみんな魔法が使えるのですか?」


実咲が、重い沈黙の中、口を開いた。


「いいえ。

神々がそれぞれに個人の能力に合わせた加護を与えるのですが、その際に魔法系の加護が与えられると、魔法が使えるようになります。」


実咲が頷きながら聴いていると、今度は、紫穂が尋ねた。


「加護と言うのはどのように与えられるのですか?」


「信仰した神によって与えらる力や方法が違います。


例えば、一番信仰の多い、武術、魔法の神は、生まれた時に一定の魔力を操る力や武力なのどの加護を与えます。


しかし反対に、


豊穣の神の加護は経験を積むことにより、後天的に与えられるます。


ほとんどの人々はすぐに手に入る武術や魔法の加護を求めるので、前者の神へと信仰する者が圧倒的に多いのです。」


「加護は違う神々から複数与えられることはできるんですか?」


「はい。しかし、とても優れた加護は人間1人に1つしか与えられません。」


「あの…魔法や武術が使えても、食料は需要がありますよね?どうして、生産が減ったんですか。」


恵が聞くと、女神は良くぞ聴いてくれたと言わんばかりに、話し始めた。


「10年前、人々はついに魔法から食べ物を生産する魔法技術を確立してしまったのです。


これにより豊穣の神に加護を求める者が急激に減り、豊穣の神は力を弱め消えてしまいそうなのです。


もう、残された時間は少ないのです。

どうか、お力を貸していただけませんか?」


「知恵の神様、助けたいのは山々なのですが、なぜ私たちなのでしょう。


その土地のことはそこに住む人々が1番知っていますし…。」


「私も驚いたのですが、私たちの見守っている世界と、皆様の住む日本という国が驚くほど似ているのです。四季があり、いくつかの野菜や果物、家畜も同じ物があります。


しかし、加護に頼り切っている世界に対し、自分たちで考えて維持している技術持つ世界とでは、圧倒的に差があります。」


「ちなみに、私たちは、どこまで援助していただけるのですか?」


綾乃が目を輝かせて尋ねた。


「家と、土地、それから必要な物は取り揃えられるように、現地の神官に伝えましょう。」


「日本の種苗とか農薬とか持っていけますか?」


優衣が尋ねると、恵がナイスと親指を立てた。


「いいえ、そこまで日本の文化を取り入れるわけには行きません。」


「私たちは日本に帰って来れるんですか?」


かすみが不安そうに尋ねた。


「……。

実は、異世界転生できるのが100年に1度、16歳から18歳までの人間に限られているのです。


皆様が目的を達成し、寿命が尽き、天界に帰ってきた際、今日と同じ場所、同じ年齢にお戻しすることができます。」


「えっ!?」


8人はその場で固り、沈黙した。

転移すれば、天寿を全うするまで帰れないのである。


重い沈黙を破ったのはももかの明るい声だった。


「みんな、どうしたの!?

向こうで1つ人生を終えたら、また、戻って来れるじゃん!」


ももかは天真爛漫な笑顔を皆に向けた。

突然、実咲が笑い出した。


「あはははは!

ももか流石だよ!

そうだよ。難しく考えてもどうにもならないし!

せっかく貴重な異世界転移のチャンスだし、やってみようか!!」


「うん!そうだね!

みんなで、いっちょ世界の危機を救っちゃいますか!!!」


恵がそう叫んで、立ち上がると、それに続き7人が一斉に立ち上がった。


「知恵の神様、私たちが、食糧危機に立ち向かいます!!」


「ありがとうございます。

では、これ以上は時間が惜しいので、送りますね。

皆様地に足がつくまでは、その場を動きませぬようお願いいたします。」


知恵の神は、そういうと、片手を上げた。


8人の下には、輝く光と共に、巨大な魔法陣が現れた、虹色の輝きは徐々に光を強めていく。


8人の体は宙に浮いた。


恵は、あまりの不安に、目をつぶった。


20秒ほどたった頃だろうか、地に足がつき、ゆっくりと目を開けた。


活動日誌1 〜メンバー紹介〜

記録 天野 恵


今日は、女神様に食糧危機から世界を救ってほしいと、課題研究をお願いされました。これから共に頑張っていく、メンバーを紹介します!


天野 恵(18)

農業科3年

プロジェクトリーダー


牛原 実咲(18)

畜産科3年

プロジェクト副リーダー


丸山 ももか(17)

農業科3年


田尻 綾乃(18)

果樹科3年


花田 優衣(17)

園芸科2年


馬渡 菜月(17)

畜産科2年


小野 かすみ(17)

加工食品科2年


大塚 紫穂(18)

農業機械科1年







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