タマタマ・チョキチョキ
※いつも、読んでいただきありがとうございます!
この先、少しグロテスクな表現があります。
どちらかと言うと、医療的な方向で書いているつもりですが、念の為、R指定しております。
苦手な方は、この話を飛ばすか、
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この線の間を飛ばして読まれることをお勧めします。
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「ペロトラゴスの子供じゃねぇか。そいつはダメだ飼えねぇ」
村長は実咲の側にいる謎の動物を見ると、焦るように言った。
ミノリアギルドから帰りの馬車の中で、猫と謎の動物を飼っている話になり、どうせなら、謎の動物を村長に見てもらおうという事になったのだ。
村長は馬車からギルドで購入した資材を下ろしていた。
「えぇ?!こんなに大人しいのに?」
実咲は側にいたペロトラゴスの子供を抱き上げた。
「ああ、半年経てば、今のかわいさが嘘みたいにデカくなるぞ。それに草食だが発情期になるとオスは獰猛になるから、やめといたがいい。5年に1度は人が死んでる。
殺すか、山奥に逃してこい。」
「そんなぁ、今更、クロマルを手放せなんて無理です。あっ!その荷物はそのまま置いておいてください。」
村長は、実咲に言われた通り、木箱を馬小屋の前に置いた。箱を抱え通りかかった菜月がクロマルを眺めながら言った。
「発情期に獰猛になるなら去勢すればよくね…」
「あっ!菜月ナイスアイデア。」
「なんだ?そのキョセイって?」
「簡単にいうと、タマタマチョキチョキです。」
そう言うと、実咲はクロマルについてる男の証を切るジェスチャーをし、村長に説明した。
「ここには…ない…技術だな。」
村長はドン引きしながら言った。
「睾丸を切除する事で、ホルモンが抑制されて、発情しませんし、穏やかな性格になります。あと、肉質も良くなります。」
クロマルは、ぷるぷると震えだした。
「クロマル大丈夫だよ。食べないし、ちゃんと麻酔はかけてあげるから。眠っているうちに全て終わるよ。」
クロマルは震えながら、ぬぅ。と小さく鳴くと、目から涙を流し始めた。偶然、目のあった綾乃に助けを求めている。
「怪我してるんだろ?」
目があった綾乃は無駄だとわかりつつも、一応止めれそうな方法を探した。
「だいぶん傷も治って来てるし、大丈夫!それに子供の時でないと、余計に痛いよ。」
「なんか、かわいそうじゃね?クロマル。」
「果樹だって、甘い実をつけるために、わざとストレス与えて、弱らせたりするんでしょ。それと一緒、一緒!」
「確かに。なら、かわいそうだけど、しょうがない。
でも、実咲達にできるのか?獣医さんの仕事じゃない?」
「チッチッチッ!甘いな。家畜を扱ってると、点滴や多少の治療はやらないといけない。むしろ去勢は私たちの仕事。まぁ、薬品とかは獣医さんから許可もらって買わないといけないのもあるけど。」
「麻酔あるの?」
「うん。ギルドで、睡眠薬と麻痺薬を買ってきた!なんかの時に使えるかなと思ってたけど早速役に立つとは。」
「そうか!なら安心だな!」
綾乃は、クロマルを見ると諦めろと目で伝えた。クロマルは前脚で大切な玉を隠した。
荷物を下ろし終えると、村長は乗ってきた馬で帰って行った。
実咲と菜月は、荷物を下ろし終えた後も、鉄の棒を曲げたりして、何かを作っていた。その後、馬の世話が終わると、みんなが待つ家へと帰って行った。
綾乃は夕飯を終えると、実咲の部屋へと向かった。ドアを2回ノックすると、実咲がタオルを持って中から出てきた。
「うぉ!綾乃がここにくるなんて珍しいね!」
「うん。ちょっと、クロマルをモフりたくなって来た。」
「どうぞ、どうぞ!存分に触ったって〜」
実咲は、着替えをクローゼットから取り出すと綾乃に言った。
「綾乃、ごめん!私、明日も朝早いし、お風呂に入ってくるね!」
「了解!クロマルしばらく触っててもいい?」
「もちろん!」
実咲はそう言って、部屋を出て行った。
数秒経って再びドアが開いた。
「あっ!綾乃!部屋出る時は、必ずドア閉めておいてね!
かすみとクロマルが鉢合わせするといけないから!」
「うん。わかった。」
「よろしくね!」と言うと、実咲はドアを閉め、大浴場へと向かった。
綾乃は、クロマルの頭を撫でた。昼のことを怒っているのか、クロマルは綾乃を一目見ると、プイっとそっぽを向いてしまった。
「怒ってんのか?」
「ぬっ!!」
クロマルは、怒ったような鳴き声をあげたが、綾乃に背中を触らせている。
「そんなに怒んなって!お前にチャンスをやりに来たんだから。
明日の朝、実咲と菜月が馬の世話をしてる間に、ここのドアと玄関のドアを開けといてやるから、出て行きたかったらここから出ろ、その代わり、ここには戻ってこれないと思ったがいい。
でも、一緒にいたかったら、諦めて去勢手術受けろ。あいつらも実習で手慣れてるとは思うから、負担は少ないぞ。たぶん。」
あいかわらず、クロマルは綾乃に背を向けたままだった。
「じゃあな。今夜ゆっくり考えろよ。」
綾乃はそれだけ言い残すと、実咲の部屋を出て、ドアを閉めた。
翌朝、山の方の空が少し明るくなった頃、実咲と菜月は、馬小屋へと向かっていた。
しばらくすると、実咲の部屋のドアが少し開いた。クロマルは、ゆっくり起き上がると、部屋の外に出た。それから階段を降り、玄関の扉の前で、立ち止まった。
少し開いた扉からは朝日がこぼれている。
クロマルは、1度玄関の外に出てみた。
ここまで来るのに足が重いのは、きっと一生懸命に怪我の治療をしてくれた実咲と菜月のことがあるからだろう。それに、ここにいれば、魔獣に会うこともない。
しかし、このままでは、大事な男の証がなくなってしまう。それに、ただ餌をもらっているだけの自分は、ここで役に立てるのだろうか。
馬小屋の方では、実咲と菜月の声がする。
クロマルは意を決して、外へと駆け出そうとした。ここは居心地が良いが、やはり、痛いのは嫌だ。
しかし、2歩目の足の感覚が無くなった。クロマルが目を開けると体が宙に浮いている。
「危ない…ドア、開いてる…」
紫穂は、クロマルを抱き上げると、家の中に入った。それから玄関のドアをしっかりと閉めた。
クロマルは何が起きたか分からず、魂を抜かれたような表情を浮かべている。
「迷子か?…」
紫穂は、それだけ言うと、クロマルを実咲の部屋へと入れた。クロマルはぬぅ!ぬぅ!っと声を上げ、ジタバタしたが、紫穂は慣れたように、しっかりとクロマルを抱えている。
「ここも…不用心…」
紫穂は開けっぱなしドアを見て言うと、こちらもしっかりと扉を閉めた。そのまま紫穂は、実咲の部屋にクロマルを残して、部屋から出て行った。
クロマルは頭が真っ白になっていた。最後のチャンスを逃し、もう後がない。
その後は、あっという間にお昼が来た。
お昼を食べ終わると、実咲はクロマルを抱きかかえて、菜月と一緒に馬小屋の方へ向かった。
2人は馬小屋に着くと、体重を測り、クロマルに甘い水を与えた。もちろん中に、睡眠薬と麻痺薬が入っている。量は体重に合わせて、調整していた。
クロマルがうとうとしながら睡魔と戦っている間に、実咲と菜月は、手を洗ったり、器具の消毒をしていた。最後に清潔な手袋をするとクロマルは熟睡していた。
「睡眠薬すごいね。」
実咲はそう言いながら、クロマルの後ろ足の付け根あたりをツンツンと指でつついた。
「麻痺薬も効いてるね。」
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菜月と目を合わせて頷くと、菜月がアルコール綿で、クロマルの股を拭き消毒した。その後実咲がヨードチンキのスプレーをクロマルの陰嚢に吹きかけると、陰嚢の中の睾丸を少し上にあげた。
「睾丸のつき方は牛だけど、大きさは子豚くらいだね。」
実咲はそう言うと、煮沸消毒していたハサミで陰嚢の下側を切った。
すると、中から細長い睾丸が2つ出てきた。
菜月は消毒してある太い針金を曲げた器具を取り出し、実咲に渡した。
実咲は2つの睾丸を交差させ、針金の先の細長い輪に睾丸の付け根から引っ掛けた。それから、針金の先を回転させ、2つの睾丸を交差させながら捻っていく。
ある程度回転させると、両方とも同時に、睾丸が捻じ切れた。
念の為、ヨードチンキを傷口の辺りに吹き付けると、去勢手術が終了した。
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クロマルは、ぼんやりとしながら目を覚ました。
「あっ!クロマルが起きた!」
実咲が言うと、菜月が少し血のついた手袋を外した後、様子を見に来た。
クロマルはしばらくは、ぼんやりと周りを眺めていたが、ゆっくりと立ち上がり、水を飲み始めた。
「うん。ちゃんと立ち上がったし、問題なさそうだね。」
実咲はクロマルの頭の撫でた。
「よく頑張ったね。」
「ぬう!」
クロマルは褒められて、少し嬉しそうに鳴いた。
2人は木箱にクロマルを入れると、実咲の部屋へと運んだ。少し傷口が痛むのか、いつもより耳と尻尾もだらんと垂れている。
クロマルは大切なものを失ったが、これからも実咲や菜月と一緒に暮らせるのは正直すごく嬉しかったようだ。
夜になると、食欲も戻っていた。実咲と菜月はクロマルが眠るまで様子を見守っていた。




