謎の…
実咲と菜月は、鶏小屋に来ていた。持ってきていたのは、大工道具である。木材も倉庫から使えそうな物を調達してきていた。
小屋に入ろうとすると、中でカサカサと音がした。
「あれ?なんか物音するね?」
実咲が菜月と目を合わせた。菜月は無言で頷いた。鶏小屋の扉を少しだけ開けてみる。
ボーリングの玉くらいの黒い影がさっと目の前を横切った。
実咲は扉をゆっくりと開けた。
鶏小屋のすみに、頭に2本の角を生やした、真っ黒い犬のような幼獣がいた。2人を見て怯えているのか、小刻みに震えている。
((……なんの動物かわからんけど、かわいい!!!))
2人はしゃがむと、時間をかけて寄っていく。
腕を伸ばせば届く距離まで近づき、謎の動物の様子をじっと見つめた。
しばらくすると、謎の動物は、2人が何も危害を加えないとわかったのか、徐々に震えが止まった。
実咲は、手をゆっくりと出し、匂いを嗅がせた。そのあと顎の下を撫でると謎の動物との接触に成功した。
「おとなしいみたいだね。」
「うん…」
「まだ子供かな?」
「たぶん…」
2人が30分程撫で続けると謎の動物は眠り始めた。
「寝ちゃった…」
菜月が微笑みながら小声で言った。
「作業しないといけないから、どこかに運ぶ?」
「でも、起きそうじゃない?」
「確かに。じゃあ、とりあえず、これに入れておこう。」
近くにあった木箱を持ってきた。
謎の動物をそっと抱えると、木箱の中に入れた。相当安心しているのか。謎の動物はぐっすり眠っている。
「あ、後ろ足のところ怪我してる…。」
美咲に言われ、菜月も後ろ足のところを見た。
「本当だ。痛そう。」
実咲は馬小屋からヨードチンキの入ったスプレーを持ってきた。箱の中の謎の動物の後ろ足にヨードチンキを振った。
「とりあえず、小屋の修繕終わらせちゃおうか。」
2人は、穴が空いているところを簡易的に木で塞いでいった。少々歪だが、これで雨風が小屋に入ることはなさそうだ。
「もう、そろそろスプちゃんとオーちゃん小屋に戻さないと。」
実咲と菜月が作業を終えると、すっかりと日が傾いていた。謎の動物は、木箱の中で目を覚まし、おとなしく座っていた。菜月はその木箱を抱えると実咲に尋ねた。
「この子どうする?」
「とりあえず、そのまま連れて行こうか。」
2人は持ってきた道具を元の場所へ戻すと、馬小屋へ向かった。謎の動物の入ったままの木箱を置くと、放牧場に向かい、2頭の馬を連れて帰ってきた。
その後、飼付(餌やり)を済ませると、きちんと戸締りをし、木箱を抱えて家に戻った。




