草刈り2
綾乃と優衣は、敷地の花の場所を確認しながら、ハウス建設予定地を目指していた。優衣は、所々立ち止まっては、手作りの地図に印を付けていく。
ハウス建設予定地に到着すると、午前中紫穂が教えてくれた草刈機を使うことにした。
「まずは、お試しだ!」
「なんで、ここ?」
優衣が不思議そうに聞いた。
「だって、威力によっては、みかんの木傷つけそうじゃん?」
「たしかに。」
綾乃は、午前中説明を受けた通り、草刈機を起動させ、ハウス予定地を斜めに歩いた。
草刈機に''5a''と赤い文字で表示され、草刈機に手をかざし、握り拳を作ると、''30秒後に起動します。安全な距離を保ってください''と表示された。綾乃は急いで、優衣のもとへと戻ってきた。
草刈機はまず、予定地の輪郭を四角に刈り始めた。そのまま渦を巻くように、外側を四角にたどりながら中心へと向っていく。
途中、荒地に生えていた低木に草刈機が近づいて行く。
「あれ、どうなるかな?」
大きく成長し硬くなった草も柔らかい草も難なく切り続けている草刈機に可能性を感じ綾乃はワクワクしているようだ。
「さすがに、あれは切れないんじゃない?」
優衣は低木のそこそこ太い木の幹を指差した。
「どうだろうな?なんかいけそうじゃね?」
全くペースを落とさずに草を刈り続ける草刈機を目で追いながら、綾乃は答えた。
草刈機は、どんどん近づき、低木を難なく粉々にすると、一定の速度で進んでいく。
「すごい!全然余裕で切れちゃうじゃん。
てか、これ果樹園で使えないんじゃない?」
「はぁっ!たしかに。みかんの木、粉々じゃん。」
綾乃はガクッと肩を落とした。
「なんか、果樹園モードとか、別の機械あるかな?」
「全部は覚えてないからわかんない。また、紫穂に聞いてみれば?」
「うん…」
「ここで、試しておいてよかったね」
「それな。」
綾乃はしょんぼりと返事を返した。
一方、草刈機は半分ほど切り終えたところだった。ペースを落とすことなく進んでいた。しかし、残り3分の1くらいの所で急に停止した。
「あれ?なんか、止まってね?」
綾乃と優衣は草刈機に近づいていく。草刈機は、赤い文字を点滅させていた。
''生体反応を感知しました。緊急停止します''
綾乃と優衣は顔を見合わせた。1m程先の枯れ草がカサカサと鳴った。
「えっ?!なに?」
優衣が不安そうな顔を浮かべた。
綾乃は音の鳴った方から目を離さずにゆっくりと後ろに下がった。
「魔獣とかだったら危ないから、ここから離れよう。」
綾乃はそう言って、草刈機の電源を落とすと、慎重に抱えた。その時、草陰から小さなグレーの生き物が現れた。
「なんだ。猫じゃん。驚かすなよ。」
綾乃は草刈機を置くと、にゃーと鳴いた子猫を抱えた。
「かわいい。」
綾乃は猫を畑の端まで運ぶと猫を地面に下ろした。
「危なかったな。さぁ、大自然の中で自由に生きろよ。」
綾乃は猫にお尻を向けると、まだ草の残っているところに戻り、再度、草刈機を起動した。
''緊急停止が解除されました。再度作業を続けますか?''
浮き出た緑の文字の下には、''はい''と''キャンセル''の文字が浮かんでいた。
「途中から再開できるじゃん。ハイテク、ハイテク〜♪」
綾乃は草刈機から距離を取ると、優衣に近づいて言った。「ミィ〜」と声がして、綾乃が足元を見ると、先程の子猫が擦り寄ってきていた。
「お前、ここにいたら危ないぞ。」
綾乃はふぅとため息をついて抱き上げた。
「ねぇ、綾乃。この猫ちゃん飼えないかな?」
「かすみは動物が苦手だから辞めたがいいと思う。それにコイツは人間に飼われて生活するより、外で自由に野生的に生きてる方が幸せかもしれないだろ?」
「そっか…」
優衣は少し悲しそうに俯いた。
「草刈り終わるまでは、危ないから一緒にいてもいいと思うけど。」
優衣は綾乃の言葉に顔を輝かせた。
猫を抱っこすると顎の下を撫でた。猫は気持ちよさそうにゴロゴロと鳴いている。
草刈が終わると、猫を畑にポツンと置いた。綾乃は「強く生きろよ!ばいばい。」と言うと、優衣と家を目指し歩き出した。




