表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/32

初めての夜

日が少し傾いた頃、かすみと紫穂が家に戻ってきた。


かすみは夕飯も近いということで、みんなが戻るのを待ちながら、夕飯の支度をすることにした。


紫穂は手伝うとは言ったが、魔法道具のオーブンや、換気扇、それから、よくわからない物を夢中になって眺めては、メモ帳に図や文字を書いているため戦力外だ。

次に戻ってきたのは、綾乃と優衣だった。


「おかえり!どうだった?」


「うん。まぁまぁかな。

やる事はいっぱいあるみたい。」


優衣が答えると、歩き疲れた足を休ませるために座った。


「ねぇねぇ、紫穂ちゃん!」


綾乃は、魔法道具に夢中の紫穂に近づいた。


「………。」


「運搬車って作れそう?」


「…………。おお!」


紫穂は目の前の、ミキサーに夢中だ。


「フル無視乙!」


優衣は笑いながら綾乃に言った。


「私は運搬車を諦めないからな。」


綾乃は紫穂にぴったりとくっついている。


「他のメンバーはまだ、帰ってきてないの?」


かすみが結衣に尋ねた。


「うん。恵とももかは畑でなんか掘ってた。実咲と菜月は馬を引いて戻ってるぽかったから、もうすぐ戻って来ると思うよ。」


「なら、夕飯間に合いそうね!」


「いい匂い〜!私も何か手伝うよ。」


優衣は立ち上がると、キッチンへと向かった。


「ありがとう!でも、その前に着替えできたら?」


優衣は着ている作業着を見て、「そうね!」と言って、2階に上がった。クス聖堂でもらった私服を着るとキッチンへと戻ってきた。

かすみは、豚肉に切り込みを入れチーズを挟むと片栗粉、たまご、パン粉の順で衣をつけていた。


「優衣!サラダ作ってくれる?」


野菜はすでにテーブルに用意されていた。


「料理長!お任せください!」


「うむ。しかと頼んだぞ。」


かすみがカツレツを油の中へ入れると、あっという間に美味しそうな匂いで包まれた。


「ただいま〜!おっ、いい匂い!」


泥だらけの作業着を着た恵とももかが戻ってきた。


「おかえり!」


「汚れたから、先にお風呂に入るね〜。」


恵とももかは2階に着替えを取りに上がって行った。すぐに降りてくると、大浴場へと向かった。


「ただいま〜!みんな戻ってる?」


次に帰ってきたのは、実咲と菜月だった。


「先に、お風呂入ってくる〜。」


「はーい!ついさっき、恵とももかもお風呂に向かったよ〜」


かすみはそう言いながら、3枚目のカツレツを油に投入した。


「おお!マジか!」


「うん!ごゆっくり〜」


実咲と菜月も2階に着替えを取りに行くと、1階の大浴場へと向かった。

なんだかんだで、全員が食堂に集まったのは、すっかりと日が落ちてしまってからだった。

恵は2階の部屋からキケルから預かった、鏡を持って来た。


「どこにおこうか?」


「ここ、ちょうど良さそうじゃん!」


綾乃は木の柱から出た枝の出っ張りを指差した。ちょうどフックのように先が曲がっている。恵はその出っ張りに鏡についていた紐を引っ掛けると、目線の高さに鏡が来た。


「よし、これでOK!」


恵は満足そうに言うと、夕飯が並べられたテーブルに向かった。


8人が座ると、恵が音頭をとった。


「じゃあ、みんなお疲れ様でした〜!

いただきまーす。」


「「「いただきまーす!」」」


8人は話す事を忘れるくらい、夢中になってご飯を食べていた。


「かすみの手料理久々に食べたけど、やっぱりめっちゃ美味しいね。」


お皿を1番に空っぽにした実咲が言うと、かすみは嬉しそうに笑った。


「みそ汁とご飯はおかわりあるよ!」


「やったー!」


実咲はお椀とご飯茶碗を持っていくと、大盛りにつぎ始める。


「美咲の胃袋は牛と同じ作りかな。」


綾乃がニヤニヤしながら言うと、紫穂が「怒られるよ。」と小さく言った。


「えっ?なになに?なんの話?」


戻ってきた実咲が興味津々に話を聞き出そうとする。


「なんか牛の話してなかった?」


「う、うん…。」


綾乃が、どきまきしていると、菜月が横から堂々と答えた。


「美咲の胃袋は牛の作りと同じじゃないかって言ってた。」


「……えへへ!やったー!」


怒られる事を予想していた綾乃だったが、意外にも実咲は嬉しそうである。


「綾乃、実咲は小さい頃、牛になりたがっていた。」


「は?…」


「そうそう。小さい頃の夢は、牛になる事だったんだよね〜。

食べてすぐ寝ると牛になるよ〜って、よく言うじゃん。

あれ、信じてて、食べたらすぐ寝てた。でも、全然角とか生えないから、すぐに嘘と気づいたけど」


「ハハハw何それウケる。」


綾乃は爆笑した。綾乃の隣にいた紫穂ぷっと笑いを漏らしていた。


8人は談笑しながらご飯を済ませると、皿を片付けて、再びテーブルに座った。


「では、これより、探索の報告会を始めます。」


恵が言うと、一同は礼をした。


「では、まず、農業チームから報告するね。

家の裏の畑では、この人数を賄える分の畑はありそうかな。明日からの作業としてはギシギシ抜き、それが終われば土壌改良と耕運をして、3月、ブールクッロくらいに作付けを目標に作業してくよ。

これから必要な物は、種イモや種子類、堆肥、耕運機、できれば石灰かな。

ももか補足する事ない?」


恵がきくと、ももかは眠そうに「うん、ないよ〜。」と答えた。


「じゃあ次は、果樹・花チームお願いします。」


恵が言うと、綾乃が話し始めた。


「果樹・花チームは、敷地の奥の方を探索して来た。

めっっっちゃ遠くに元果樹園を見つけた。

遠いので運搬車が必要です。

重要なのでもう一度、遠いので運搬車が必要です。」


綾乃は、紫穂を見て力説した。紫穂は頷くと耕耘機と書かれたメモに運搬車と書き足した。


「ちょっと綾乃。他にもあるでしょ」


見かねた優衣が綾乃に注意した。


「えー。これからの予定としては、果樹園の除草作業。数本生えているみかんの木の剪定を予定しています。それから今年中に、他の果樹の植え付けも考えています。

まっでも、収穫できるのは数年先だと思うから気長に待って欲しいです。

必要な物は運搬車と剪定鋏、肥料とかもいるかな。果樹関係は以上。

じゃあ、花関係は優衣から」


「えっ?!ああ、じゃあ。

花は、所々に球根や宿根の物を見つけたので、時期になったら増やして販売予定です。

あと、野菜畑予定地の横に空き地があり、そこにハウスを建てて欲しいですが、みなさんどうでしょう。」


優衣の問いかけに、恵が答えた。


「私は問題ないと思うけど、皆んなどうかな?」


みんな拍手をし、見事に優衣はハウス予定地をゲットした。


「ありがとうございます。

これからの予定としては、ハウス建設。

それから、花の繁殖と品種改良も視野に入れてます。

必要な物は移植ごて、ハウス建材です。」


「じゃあ、次は畜産チーム。」


恵が言うと、実咲が立ち上がった。


「はい。畜産チームは馬小屋周辺を探索して来たよ。

現在、馬関係の施設は村長さんが管理していてくれたみたいで、特に問題なく機能してるかな。

で、これからなんだけど、鶏小屋の修繕と採草地の復活。必要な物は割と倉庫にもあるし、大丈夫かな。

ただ、採草地は2人じゃ管理できるかわからないから、機械の導入を検討してほしいです。」


紫穂はまた頷くとメモをした。

実咲は菜月を見た。菜月は頷いた。


「畜産チームからは以上です。」


「じゃあ、最後は開発チーム。」


「はぁい!食品加工系はキッチンが充実しているので、商品開発までは問題なさそうだけど、大量生産になった時には、それなりの機械とか人数が必要になって来そう。

まぁ、まだ、生産物がないから、しばらくは、食事を作りながら構想を練っていく予定かな。

あと、農業機械は紫穂から。」


「えーと。

研究室見つけた。それから、みんなの意見の機器を作る。あと、整備庫ほしい。

以上です。」


「はーい。では、以上で報告会を終わります。書記の菜月記録は取れた?」


「うん。大丈夫。」


「他に何かある人いない?」


綾乃は手を挙げると同時に話し始めた。


「ねぇねぇ。恵!

せっかくだから、あの鏡作動するか確認しよう。」


「そうだね!」


恵は立ち上がって鏡の前に立った。


(どうやって使うんだろう)


戸惑っている恵の横に紫穂が来た。鏡をじーっと眺めると「ぶどうの飾りの1番下のところ押して。」と言い、席に戻った。

恵は言われてみた通りに、ぶどうの房の1番下の果実を押した。

すると鏡から黄色い光が溢れて、知恵の神オシエルの姿が現れた。


「おお!みなさんご健勝でしたか?」


「はい!」


「ああ、私に気を使うことはありません。どうぞお座りください。」


恵は席に戻り他のメンバーも、椅子に座った。


「ちゃんと、鏡が使えたようですね。

何か不便はありますか?」


「いいえ。ただ。ちゃんと使えるか試してみたくて、お忙しかったら申し訳ありません。」


「いえいえ、私もみなさんの顔が見れて安心しました。もう、ダンオン村の家に着いたのですね?」


「はい。」


「あぁ、そうだ。お伝えするのを忘れていました。

3回の書物庫に特別な本を置いております。

1番奥の右下です。今、持って来れそうですか。」


紫穂は頷くと3階に上がった。


「それから、戸締りはしっかりしていますか?この辺りは野生動物や魔獣が出ることがあります。動物小屋や家、柵に囲まれた畑には魔獣避けが施されていますが、それ以外のところには、危ないので、夜は戸の鍵をかけ、外には出ないようにお願いします。」


「わかりました。」


トントントンと軽快に階段を降りる音が聞こえ、紫穂が本を抱えて降りて来た。


「ありました。」


紫穂は、本をテーブルの上に置いた。


「では、紫穂様。そちらの本を開いたまま、持ち上げてください。」


紫穂は言われた通りに、本を開き持ち上げた。


すると開かれた本は一度白紙になり、紫の文字が浮かび上がった。


"回路知見

見ただけで、魔法道具の仕組みが瞬時にわかる。"


「「おぉ!」」


8人は一斉に驚いた。


「こちらの本には、加護とその加護の効果が記されます。加護が増えたり、加護の効果を使えるようになると、そのように記されます。

この本は聖堂にも内緒ですよ。

普段は、普通の本と同じように、文字が記されていますが、使者様達が本を開いて持ち上げると、加護を確認できます。


では、そろそろ皆様もおやすみのようですので、これで失礼しますね。」


オシエルはにこりと笑うと、すうっと消えた。


「私達も寝ようか?

って、ももかはもう寝てるし…。」


「私達はお風呂に入ってくるね!」


かすみが言うと、紫穂と綾乃、優衣が立ち上がり、2階へ着替えを取りに行った。


「実咲、ももかを部屋まで運ぶの手伝ってくれる。」


「うん。この子、夜寝たらもう朝まで起きないもんね。」


2人はももかの腕を肩にかけると、2階の部屋まで運んだ。

部屋に入ると、ゆっくり、ベットに寝かせると、ももかは気持ちよさそうに毛布の中に潜り込んだ。


「じゃあ、私も歯磨いて寝るね〜。

明日は早起きしないといけないし。」


実咲はあくびをしながら言った。


「うん。おやすみ。」


「おやすみ。」


綾乃はお風呂を上がると、玄関と窓の鍵がしっかりと掛けられているか確認した。


「よし、戸締りはOK!」


「意外と細かいとこあるよね。」


優衣が濡れた髪を拭きながら言った。


「鍵、開いてたら魔獣入って来て死ぬかも知れないんだぞ。普通に怖くない?」


「まぁ、言われると確かに。」


「だろ〜。じゃ、また明日!おやすみ〜」


「「「おやすみ〜」」」


こうして、お風呂組の4人も就寝した。


(さて、寝るか…。)


綾乃は、照明を消すと布団の中に潜った。

トントンと部屋のドアが鳴った。


「寝てまーす。」


「……。」


もう一度、ドアがトントンと鳴った。


ふぅ。とめんどくさそうに起き上がると、綾乃はドアを開けた。ドアの前には、紫穂が枕を抱え立っていた。


「……不安で眠れない。」


「しょうがないな〜。一緒に寝る?」


紫穂は黙って頷くと、綾乃より先にベッドに入った。やれやれと言いながら、綾乃が紫穂の隣に入ると、静かな寝息が聞こえて来た。


「寝てんじゃん…。」


綾乃は小声で突っ込むと、電気を消した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ