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踏切にて

作者: 停滞

 あれはセミがみんみん鳴いてる夏の暑い日だったなぁ。地平線の向こうがグネグネ歪んじゃって地面からも空からも熱い空気が充満していて、いやぁ辛かった。

 あぁ、でね。その日俺はまあちょっとした用事でトボトボその炎天下の中を歩いてたんだけど、そこで開かずの踏切にぶつかってね。

 いや開かずってのは言い過ぎだけどちょうど着いた時カンカンカンカン踏切が鳴っててさ。

 暑いんだから勘弁してくれよってボンヤリ電車が来るのを待ってたのさ。

 でも何故か、いくら待っても電車が来ないんだよ。ジリジリジリジリ白い光が世界で瞬いてると錯覚するような暑さの中で待たされるとか冗談だろってイライラして地面を蹴ったりして暇を潰していて、ふと気付いたら向かい側の踏切の先に白いワンピースを着て麦わら帽子を被った女の人がいたんだ。

 何か変わった人で、顔を地面に向けて体を小刻みにグネグネとずっと動かしてんの。

 いつからいたのか分かんねぇけど、暑さにやられてた俺はそこまで気にしてなくて、ただ、こいつ暑いから気が変になってんのかなぁなんてカンカンうるさい踏切の音を聞きながら思って見てたんだけど、薄気味悪いからすぐ視線をそらしたんだ。

 それで電車はまだかなぁって踏切の矢印が向いている方向とは逆の方をずっと見てた。その間もずっと踏切はカンカン鳴っていた。視線の端では女の人が動いているのが何となく見えた。

 そうしているとやっと電車が見えてきた。ゴ―っと音を立てて電車が目の前を横切っていく。

 やっと先に進めると安堵して電車が過ぎるのを待って、電車が通り過ぎたらさ。

 目の前にさっきの女の人が腰をぐいっと曲げて俺の事を下から見上げてきてたんだ。

 うわって俺びっくりして飛び退いたらそこに誰もいなかった。

 周りを見渡してもだんれもいないの。

 もう暑さも忘れて背筋に悪寒が走ってさ。踏切が上がると同時に慌てて駆け出したよ。いやぁ、怖かったね。結局あいつが何だったのか分かんないけど、あれ以来白いワンピースとか麦わら帽子がちょっと苦手でさ。見かけるたんびにゾワゾワしちまう。

 でも気になるんだよなぁ。あの女の顔、あの目がさ。

 なんかこう言うのも変だけどさ。あれは道連れを探している顔だったって、思い出すたびに感じるんだよ。

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