『最強』の過去2
カジム様はレオ大陸に渡った際の事故の影響で思ったように
声を発することが出来ませんでしたが、
アダマス様はそんな些細な事を気にすることなど無く
互いに支えあって生きていました。
しかし二十七年前、人間との争いが始まって以降
強力な力を持っている『鬼人』であるお二人は
自らその戦いに身を投じていきました。
アトラス「…お前達は何も争いに参加することは無い…
モンストロの中心で静かに暮らしてればいい、
私がこの争いを終わらせやる。」
そんなアダマス様に当時のアトラス様は前線を
退くよう提案してくださいましたが、
アダマス「いいえ、あなたが戦うというのであれば
私たちはどこまでもついていくと決めています。」
しかしアダマス様を含め、多くの魔物がアトラス様と共に
戦う道を選んでいったのです。
…
ガイアの話しを四人は親身になって聞いていた。
ヴェル「お前、めちゃめちゃ好かれてたんだな。」
過去のアトラスの様子を聞いたヴェルタニス、ナキは
胸を張って自慢げな表情をしているアトラスの方を見る。
アトラス「まぁな!!お前達ももっと私を尊敬していいんだぞ!」
ナキ(めちゃめちゃ得意げ…)
アルス(アトラスって何者…?)
…
それから一年後、前線で戦っていたハズのアダマス様が
モンストロに帰還されました。
その姿は片腕を無くし、カジム様の衣服を握りしめ
瞳の奥からは憎悪を溢れさせておりました。
…
その話しを聞いた時、とあることがナキの脳裏によぎる。
ナキ「それから一年後ってまさか…」
ガイア「そう、アトラス様が勇者一行との戦闘に敗れた頃です。
それ以降アダマス様は人間を何よりも憎むようになってしまわれました。」
ガイアがそう語っている間、アトラスはどこか悲しげな表情で下を向いている。
ヴェル「…?」
ガイア「私は以前のように私たちに笑いかけるアダマス様に戻ってほしい…!
ハーラル帝国を止め、昔のような世界を取り戻したいのです!
そのために中立的な立場にある皆さんのお力をお借りしたいのです!」
そして現在ー。
アルス「俺はアダマスという魔物が人間を愛していたという事が
いまだに信じられないのが…」
アトラス「…それは本当だよ。私がよく知っている。」
過去のことを話すアトラスは、やはりどこか悲し気な表情で語る。
そんな彼女を見たヴェルタニスは空気をかえるよう明るく振舞った。
ヴェル「まあ、ガイアさんが俺たちが武闘大会に参加できるよう
手引きするしてくれるみたいだし、いいんじゃないか!」
アトラス「あ」
武闘大会参加について何も計画を立てていなかった
様子のアトラスは思わず声をあげた。
ヴェル(こいつ、さては何も考えてなかったな…)
アルス「ま、それならいいか!ほら、鍛錬を再開しよう!」
アルスからの呼びかけに答えたヴェルタニスはもう一度剣を握った。
…
それから一年後ー。