彼の面影
マーガレット国内を歩くヴェルタニスは辺りに
見慣れない種族が居ることに気付く。
ヴェル「えっとあれは…?」
アトラス「ああ…彼らはエルフだな。我々の大陸や人間の大陸とは
別のもう一つある大陸に住んでいる種族だ。」
エルフ族。レオ大陸、モンストロ大陸とは別に
もう一つある大陸で暮している種族。
美しい容姿に長く尖った耳と、
人間とは少し異なった特徴を有している。
そして魔物のように魔素を扱った魔法を使用するのではなく
それとは別の不思議な力を持っているという噂が立っている。
アトラス「エルフは元来、人間や魔物とも交流を持っては
いなかったがこのように人間の国に来て我々と関係を
持ってくれるのはひとえにゲイルのおかげだろう。」
その時、アトラス腰のあたりから小さな音が鳴った。
ヴェル「…?」
アトラスは腰のポケットから
小さな板のような物を取り出し手の平に乗せた。
すると板の上に画面が浮かび上がりナキの顔が映った。
ヴェル「えぇ!?…なにこれ…」
アトラス「ん?ああ、これはゲイルが開発した遠隔通信機器だよ。
離れた位置からこうやって通話できるんだ。」
ゲイル(あの人どんだけ優秀なんだよ…)
アトラスが取り出した機械の性能に驚愕しているヴェルタニスの
様子をナキは笑いながら茶化してくる。
ナキ「これ結構前から使ってたんだけどな~、知らなかったのか!」
ヴェル(こいつ…後で覚えてろ…!)
少し苛立ち顔をしかめたヴェルタニスを横目に二人は会話を続ける。
アトラス「それで、どうしたんだ?」
ナキ「ああ、マーガレットの貴族様たちは変わらず俺たちに協力的
だったよ、いろんな物資やハーラルについての情報をくれたよ。」
マーガレットを統治している人物達からの支援を受けていることを
話した二人は酒場を次の集合場所にすると決め、通話を終えた。
酒場についたヴェルタニス達は船員たちと別れ、店の中に入る。
ナキ「こっちだぞー!」
アトラスとヴェルタニスの二人は手を振っていたナキの元に向かった。
席についた二人は店の中を見渡す。
ヴェル「もしかしてこの店の店員ってみんなエルフなのか?」
アトラス「ああ、そうだぞ。マーガレットにいるエルフ達は
みんなどこかで働いているからな。」
その後三人は今後の予定を話していた。
三人はマーガレット公国を出た後に馬車を借りてハーラル付近へ向かうこと、
ゲイルに用意してもらった入国許可書で
ハーラル内部に潜入することを決める。
ヴェル「それにしても…ゲイルさん本当すげーよなぁ至れり尽くせりじゃん。」
ナキ「というか、なんで通信機器のこと知らなかったんだ?」
ヴェルタニスはアトラスが使っていた通信機器を思い出す。
ヴェル「いや見たことなかったし…てか何でお前も知ってるんだよ」
ナキ「そりゃ俺はいろいろ顔が立つからな!お前と違って!」
煽るようにそう言ったナキの姿に思わずヴェルタニスは反論する。
ヴェル「そりゃ親の七光りだもんなぁお前は!」
二人の言い争いはその後も加速していく。
ナキ「はぁ?魔法の才能でも俺に勝てないお前が何言ってるんだ?」
ヴェル「ああ?久しぶりに喧嘩でもするか?ボコボコにしてやるよ」
大きな声で言い合う二人にアトラスは呆れた様子で飲み物を飲んでいる。
そこに一人の酒場の店員が静かに近づいてくる。
その店員は言い合っている二人をつまみ上げ酒場から締め出した。
ナキ「ちょ…!」
ヴェル「なにを…!」
状況が理解できない二人に店員は諭すように話した。
「幼い君たちが元気なのはとってもいいことだ…だけど酒場には
他のお客さんもいるんだよ。その人たちに迷惑かけちゃいけないよな~??」
店員の静かな怒りを受けた二人はその場に正座する。
そして店員の表情を改めてじっくりと見たヴェルタニスは
ある人物の面影を感じていた。
ヴェル「ユリアス…?」