過去の記憶を巡って1
どこか聞き覚えのあるその名前にヴェルタニスは
少しの間自身の記憶を巡らせる。
ヴェル(ゲイル…ゲイル…なんか聞いたことあるぞ…?)
首を傾げて考えるその姿を見たゲイルという老人は
変わらず優し気な雰囲気で話す。
ゲイル「どうされましたかな…?まぁここでは何です、どうぞ中へ」
アトラス「ああ、お邪魔するぞ!」
アトラスとヴェルタニス、そして数名の船員がゲイルが
住む家の中へと入る。ナキやその他の船員は物資や情報収集のためと
マーガレット国内へ歩き始めた。
ナキ「俺たちはある程度ここを見周ったら戻ってくるから、また後で。」
ゲイルの家、屋内ー。
その内装はこれといって変わった様子は無く平凡な様子だったものの
一つだけひと際目立っているものが飾られていた。
ヴェル「でかい…剣?」
それは部屋の奥に飾られている片手で扱うにはあまりにも
大きな一振りの剣だった。
ゲイル「?…ああ、実は私も昔は軍人でしてね…まだ小さいから
ご存じではないでしょうが…ハルジオン国王という場所に勤めていましたよ。」
その話しを聞いたヴェルタニスは過去にハルジオン王国の国王に
魔王討伐の謁見に行った際のことを思い出した。
…
ヴェル「…?」
ハルジオン王国…えっと…
ヴェル「んんん~?」
ゲイル…ゲイル…あの大剣…
ヴェル「…あっ!!」
…
ヴェルタニスはハルジオン国王のそばにいた
大男のことを思いだし胸の前で手を叩いた。
ヴェル「思い出した!!」
突然大声を出したヴェルタニスの姿に
その場にいた一同は目を丸くして固まる。
アトラス「いきなりどうした…」
アトラスに小さな声で耳打ちをされたヴェルタニスは
ハッとした表情で縮こまる。
ヴェル「えっと…すみません。」
ゲイル「ははは…構いませんよ。えっと、そろそろ始めましょうか…」
部屋の中央に置かれていた椅子に座ったヴェルタニス達に対面した
ゲイルは以前のような高圧的な雰囲気など消え去っていた。
ヴェル(二十年以上たってるからそんなもんなのかな…
どちらかというとハルジオンの国王様みたいな雰囲気になってる。)
ゲイル「現在のハーラル帝国の動向なのですが…」
ゲイルが話した内容はハーラル帝国は現在、ハルジオンやシエル大国を
含めた様々な国とその領土内にある街や村を侵略することで
勢力を拡大していたというものだった。
しかしハーラル帝国は七年前のモンストロ襲撃を皮切りに
侵略を途端に辞めてしまったのだという。
ゲイル「それがかえって不気味なんですが…」
ヴェル「えっと…ゲイルさんは軍人だったんですよね…
今はどうして俺たちの協力なんか?それにこの国も
とても友好的な雰囲気を感じるのですが。」
以前とはまったく異なる様子のゲイルに疑問を抱いたヴェルタニスは
勇者として出会った過去を隠して聞いた。
ゲイル「ああ…あなたはここに来るのは初めてでしたか…
そうですね…私は昔ある人物に助けられ、その者に仕えていました。」
…
私は生まれて間もなく両親にハルジオン王国の領地内にあった川の側
に捨てられましてね…そのまま拾われなければ間違いなく
死んでしまったことでしょう。
そこに現れたのは一人の高青年でした。
…あの暖かな手を私はいまでも覚えています。
「君は…そうか…捨てられてしまったんだね。」
その青年こそが後に私が仕えることとなったハルジオン国王様でした。