向日葵と太陽
「も、もう走れないっ」
クマはふらふらと草原に寝転がった。
その先には向日葵がいた。
ピンっと背筋を伸ばした頂点にボクの掌より大きい顔が咲いている。
「も、もう走れないっ」
クマはふらふらと草原に寝転がった。
その先には向日葵がいた。
ピンっと背筋を伸ばした頂点にボクの掌より大きい顔が咲いている。
「やあ」
向日葵は渋い声で話し掛けてきた。
「こんにちは」
「お疲れのようだね、少し休んでいくと良い」
「有難う御座います」
向日葵の顔はボク達では無く遠い場所を見つめていた。
「何を見ているのですか?」
「太陽さ。私は彼女が大好きでね、毎日恋に落ちているんだよ」
「素敵です」
「一つ頼みがあるんだが、いいかな」
「なんでしょう」
「もうすぐ夏も終わる。次の夏に私の種を、
彼女がよく見える場所に撒いてくれないだろうか」
「わかりました」
「有難う。私の子供達にも彼女を見せてあげたくてね。
君の大切な人にも、この種を渡してあげるといい。
私にはカッコイイ花言葉が付いているからね。喜ぶに違いない」
「どんな花言葉なんですか?」
「憧れ、あなただけをみつめる、情熱、熱愛だよ」
向日葵の言葉と横顔は凜としていて太陽と同じ位眩しく見えた。
あまりの眩しさに眩暈がして、ボクは少しの間目を閉じた。
「カッコイイです」
此処は時間の流れが穏やかで気持ちが良い。
こんな爽やかな気持ちは、久方ぶりだ。
「ところで、君の目は左右で色が違うんだね」
「あ・・」
ボクは慌てて前髪で目を隠そうとした。島民の嘲笑する姿が脳裏を過ぎる。
「何で隠すんだい、宝石の様で綺麗だよ」
その言葉に驚き、ボクの体温は一気に上昇した。
向日葵の生き様が花言葉の通りカッコよく美しくて、
成長しない姿や色違いの両目を気にしながら、
怯えて生きる自分が途轍もなくチッポケな人間に感じた。
前髪を握る手がじわっと汗ばんだ。