第七話 誘拐・・・・?
私が家についたのは夕方くらいだった。
家につくとメイドさんたちが何やらバタバタしていた。
「メイドさん。何かあったの?」
「それが、リオお嬢様が居なくなってしまって・・・・」
私は、息を呑んだ。どくどくと心臓が音を立てている。
気がついたときには私は走り出していた。
メイドさんが私を呼び止めていたが、そんなことは気にしなかった。
お父様に叱られても、お姉さまを守れるならそれでいい。
玄関の前に立っていたお兄様の言葉も聞こえることはなく、私はお姉さまの元へと向かうのであった。
「お姉さあ・・・・どこ?」
あたりが真っ暗になってしまった。お姉さまの気配はなく、夜を迎えてしまった。
「また、お姉ちゃんはどこかにいなくなるの・・・・?」
ぽたぽたと大粒の涙が肌をつたって、地面に落ちていく。
真っ暗になった世界に、少女の嗚咽が響いた。
ーカナ! ここにいるよ!ー
私は驚いて周りを見渡す。でも、お姉さまはどこにもいない。
私は涙を拭い、気持ちを集中させる。
「私の勘が正しければ・・・・」
私は近くにあった木を登る。木の頂上についたところで、折りたたみ傘を取り出す。
高所恐怖症とか言っている場合じゃない。
私は木から飛び降りた。
そして、落ちている最中に空間を叩き割って、その中に入る。
「お姉ちゃん!」
縛り上げられたお姉ちゃんを見て、私はプツンと何かが切れた音を聞いた。
「あははは! 君が、そこに縛り上げられている女の妹か!」
「そうだけど・・・・何?」
「姉が妹を助けに来て、妹が姉を助けに来る。そして、ふたりとも消えるのか!
あはは! 滑稽だねえ!」
「煩い!」
私はまだ4歳なのだ。精神はもっと大人かもしれないが、それでも12歳の子供なのだ。
お姉ちゃんを酷い目にあわせられて、怒りという感情を制御できるほうが難しい。
「はやくお姉さまを解放しろ! さもなくば、お前を・・・・!」
「やれるもんなら、やってみな!」
私は怒りに任せて、傘を振った。
でも、その傘は相手に届くことなく空をきった。
相手は私の背後にいた。
そもそも、勝ち目などなかったのだ。
私は折りたたみ傘。相手は刀。
どう見たって私のほうが不利だ。
そんな中私は、怒りに身を任せて動いている。
動きを読むのは難しいことではないだろう。
相手の刀が私の髪を切った。
長かった髪の毛の右側が肩に着くくらいの長さまで短くなった。
私は追撃をくらい、地面に倒れた。
「お前の姉から、妹は強いとか聞いていたが・・・・そうでもないな。君たちはもう用なしだ。ここで、消し去ってあげよう」
「やめて・・・・。お姉さまを消さないで。私だけにして・・・・」
私の言葉は届かず、お姉さまの首に刀の刃が持っていかれる。
私は、傘を取った。
そして、全速力で相手のところまで行って、刀を落とさせる。
今までは強化魔法のレベルⅡを付与していたが、私は今、強化魔法レベルⅢを付与した。
「ねえ、知ってた? 傘って武器になるんだよ。舐めないでもらえる?」
私は相手のお腹に一撃入れ、お姉さまの縛られていたものを切る。
相手は一撃では倒れなかった。でも、隙きができたので私は空間を叩き割って、あの空間から抜け出した。
相手は私達を追いかけては来なかった。
私達が家に帰ったのは朝近くだった。
私達はこってりお父様+お母様に怒られた。
「お姉さま、ごめんなさい。私が勝手な行動をしたせいで・・・・」
お姉さまは私を怒ることもなく、笑顔で私に言った。
「カナは私を守ってくれたから。カナは何も悪くないよ」
お姉さまは私の頭を優しく撫でてくれた。
「ねえ、」
正面を見るとそこにはお兄様がいた。
せっかくお姉さまとイチャイチャしていたのに邪魔するなんて!
「カナとリオはなんでそんなに仲がいいの?」
お姉さまは、首をかしげて、
「家族だからじゃないの?」
と言った。
お兄様は頭を掻きながら、そうじゃなくてな・・・・と言った。
「なんと言えばいいんだろうな・・・・。なんか、前世で繋がっていたみたいな感じ?」
お兄様の言葉に私はビクリとした。
そして震えた声で、お兄様に聞いた。
「なんでそう思ったの?」
「まあ、小さい頃からリオに懐いていたし、あとカナは何故かたまに『お姉ちゃん』って言ったりするし」
あとは勘かな、とお兄様は言った。
私はお兄様の勘の良さに恐怖を覚えていた。