鳴動
ベルル要塞城壁
「ん?」いち早く異変を察知したのは老将軍のグラハムである。
壁上で真っすぐと仁王立ちする体が微かに揺られたのを感じた。近くの防衛兵器をがカタカタと音を慣らしだす。
「揺れか?珍しい・・・」そう呟きかけたとき、ゴォォォォォという地鳴りと共に縦に突き上げるような激しい揺れが要塞を襲った。
「うわぁ!」
「何だ!」
「揺れてるぞ!」部下の兵士たちが動揺し浮足立っている。
グラハムの下、実戦経験も豊富な精鋭たちが思わず声を上げるほど揺れは激しく立っているのが精一杯だった。
敵は眼前、まず己が激を飛ばし兵士たちを落ち着かせなけばならない。
他の兵士がへたりこむ中、グラハムはひとり城壁のより高い場所に駆け上る。とっさの判断力と行動力は将軍の地位に相応しいものである。
「しぃずまれぇい!」
年相応にかすれながらも野太い声による一喝。瞬間兵士たちの視線がグラハムに集まる。
「揺れはじき収まる、持ち場を離れず隊列を乱さず、敵への注意を怠るな」
片手片足で体を支えながらも、毅然と指揮を振るう上官の勇姿に兵士たちは落ち着きを取り戻し始める。慣れない地震を前に逃げ出そうとしていたものもその場に留まり続けた。
この場においてこの指示、この判断に落ち度はなかったといえる。その時が訪れるまでは・・・・
ガタガタ ズドォォォン!
「ぎゃぁぁぁ!うわぁぁぁ!」
地鳴りと明らかに異なる轟音と兵士の悲鳴、グラハムの目に信じがたい光景が飛び込んでくる。
「壁がっ・・・崩れおった!・・・」
その様子を、フィオーネ軍陣地の先頭で騎士団長オルカが不気味な眼差しで見つめていた。