表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

輪廻の狭間 (『夏のホラー』投稿作品集)

ネトゲ 追跡の終わりに。

鬼ごっこゲームを遊んでたら、突然に出会った恐怖体験。


 非対称対戦ゲームって知ってますでしょうか?

多くの対戦ゲームは、世間の団体対戦スポーツと同じ様に、対戦に参加する人の比率が同じで。例えば1対1とか、2対2や、それ以上ですと8対8や15対15等があり、1対99等の味方が一人も居ないゲームは別として、多くの対戦ゲームは互角の勝負に成る様に同じ人数同士で戦う様に成ってるのです。

しかし今回の話の舞台となる【鬼ごっこ系ゲーム】とも言われるゲームは違います・・・。

簡単に説明しますと。

数名の逃げる側の人達(プレーヤー)と、その人達を追掛けて捉える(プレーヤー)で、子供の頃に多くいの人が遊んだ事のある 鬼ごっこ を、楽しい感じや、怖い感じで表現されたのが、鬼ごっこ系ゲームです。


これは、その鬼ごっこ系ゲームでの、恐怖体験です。


 8月も終わる頃の土曜日の深夜。

私が居るエアコンが効いた快適な部屋の室温は何度かは見てないですが、設定温度は26度でした。

この夜も、最近流行っている、ある 鬼ごっこゲーム をずっと鬼役で楽しんでいた私は、13回目のゲーム・プレーを終え、少しの疲れを感じて、フローリングの床の上に敷いた2畳程の小さな絨毯の上に置いた座椅子に座ったまま、天井を仰ぎました。

そして疲れた目をグルグルと回したり、パチパチと瞬きしなが小さな本棚に置いて在る温度計付きデジタル時計を見ました。

時刻を確かめると、22時過ぎから始めたゲームは、あと5分程で翌日の午前2時に成ろうとしていました。

室温は25・7度と表示されてます。

室内でも暑いと感じる昼間と違い、夜はエアコンの設定温度と体感温度の差が少なくて助かります。

「土曜日とは言え、サスガにそろそろ寝ないと駄目かな・・・。」

実際には既に日曜日の深夜なのですが、感覚としてはまだ土曜日であった私は、特に明日(日曜日)の予定も無かったにもかかわらず、翌朝の心配をし始めて居ました・・・。

『そうだね・・・。あと2~3ゲームで今日は止めようかな・・・。』

そうして、少し休んだ私は、再びゲームを始めました。


ここで、私がやってる 鬼ごっこ系ゲーム のルールを説明します。


 このゲームのルールは、一人の殺人鬼から4人が逃げ回り、最後は逃げ回るその全員、又は誰か一人でも脱出するのが目的のゲームで、1ゲーム内に参加出するプレーヤーの数は5人。


殺人鬼は、屈強な大男。


逃げる人のタイプは、子供、10代、20代、40代、が、各一人ずつ。

舞台は、山の谷間に取り残された、とても小さな西洋風の無人の山村さんそん

1ゲームの制限時間は20分。


脱出には、20分の制限時間の最後の5分前に現れる以下の脱出ルートを使う。


一つ目は、村の中心を流れる小川の上流から流れて来る、一隻の一人乗りの木製の小舟に乗り下流へ逃げて脱出。大男は、何故かこの小舟には乗り込めないし、壊したり川に流したりも出来ないので、舟に乗り込めた時点で脱出成功!


二つ目は、村の南西に在る洞窟で。時間に成ると、その入り口を塞いでた大きな石が崩れて、体の大きな殺人鬼は入れない小さな穴が現れるので、そこから洞窟に入り、その洞窟を抜ければ脱出成功!

しかも、ここは何人でも脱出可能!


三つ目は、村の北東に在る2人迄乗れるトロッコ。屋根が崩れて無くなってる小屋に仕舞われて車輪が錆び付いて動かなかったトロッコに、小屋のレンガの壁が崩れてトロッコに当たり、その拍子でトロッコの車輪の錆が落ちれトロッコが使える様に成り、それを押し出して村の坂を下って行けばトンネルに入り脱出成功!


対して殺人鬼の目標は。

この山村から一人も脱出させずに、4人全員を捉えて鉄の檻に閉じ込める事。

すると、その後は・・・!?



 休憩中に目薬を差し、一休みを終えた私は、さっそく次のゲームにエントリーする為に、ゲーム機のコントローラーのボタンを押しました。

今回のゲーム内での役も、勿論と言っては何ですが、殺人鬼です。

2分と待たずに次のゲームが始まりました。

逃げ回る他のプレーヤーを探し回った私は、殺人鬼の特殊能力も使ってゲーム開始から2分と経たずに身軽な20代の女性キャラを殴り倒し気絶させました。それかが直ぐに担いて運びます。そして、熊を捕まえる罠の檻の様な物の中に入れて古びた鍵を掛けて閉じ込めます。

閉じ込められたプレーヤーは、その使ってるキャラの能力や、それまでに集めた道具アイテム等に寄りますが、大体は5分から9分で脱出してしまいます。

仲間が錠前(じょうまえ)を開くのに協力してくれると、更に1分程も早く脱出される事もあります。

早速、私は次の獲物である別のプレーヤーを探しに行きます。

殺人鬼をプレイする私が勝つ条件は、ゲーム終了時に1人以上のプレーヤーを檻に閉じ込めて、脱出者を1人以下にしなければ成らないと決まってました。

なので、早ければ5分で逃げてしまうプレーヤーを相手に、廃村の中を走り回り、プレーヤー・キャラを捕まえて檻に入れなければ成らないのです。

私は首尾良く二人目を見付けます。相手は40代の筋肉質な男性キャラです。

このキャラは、殺人鬼には及びませんが、素手でもソレなりの戦闘力が有りますので注意が必要でした。

しゃがんだ彼の後ろ姿を発見した私は、そこからは足音に気が付かれない様にして、ゆっくりと静かに近付きます。

彼はまだ気が付いてません。近くに小川が流れてるので、その川音が私の足音を掻き消してくれてるのです。

『ここを隠れ場所に選ぶなんて、まだこのゲームを余りプレイした事が無い人だろうな・・・。』と考えた私は、建物の影に隠れてる彼の前に至近距離からのダッシュで近付き、彼の後ろから一気に殴り倒して捕まえました。

私が操作する殺人鬼に担がれてる間、私に捕まえられたプレーヤーは2分間の間は何も出来ずに、自分が運ばれてる画像を見てるしかありませんが、2分間も担がれてる事は普通は無いので、動ける様になった時は大抵は檻の中と言う訳です。

倒したキャラを運んでるあいだ

それは、私としては至福の時で、内心『この人。私があんな風に飛び出して一気に襲って来るとは思わなかったのだろうから、きっと悔しがってるだろうな。』等と思いながらゲームを続けて居ました。

画面左上には、各プレーヤーの名前とキャラの顔が小さく表示され、どのキャラのが気絶してるのか、或いは行動を間違えて、怪我をしたり、水に浸かったり、崖をよじ登たりして体力を削って一時的に弱ってる等が分かる様に表示されてます。

ですから、今、私に担がれてる彼が気絶して檻に運ばれてるのは、他のプレーヤー達にも見えてるのです。

ですから、逃げ惑う側のプレーヤー達は、檻に閉じ込められた仲間を助けに行き、一人で錠前(じょうまえ)を開くより、協力して少しでも早く開いて一緒に逃げるかどうするかも、このゲームの悩みどころなのでした。

そうして担いで例の檻に戻ったのは、最初の20代女性を檻に閉じ込めてから3分30秒程後の時でした。

なのにでした・・・。

私は驚きました。

何故なら、最初に檻に閉じ込めた女性が既に脱出してたからです・・・!

「えー!?・・・何!?・・・チート?」

自分一人しか居ない部屋の中、私は声を上げました。

ゲームをしてる人なら知ってると思いますが〖チート〗とは、ゲーム会社が提供するゲームのプログラムを改ざんして、主に自分が有利に成る様にする行為です。

しかし、ゲームと言うものは、予告が有る無しにかかわらず、ゲームのバランスを調整する為にゲーム会社自らがプログラムを書き換える事も良くある事なので、今、起きてる事は調べて見ないと分からない事かも知れません。

しかし、今はプレー中です。そんな悠長な時間はありませんから、逃げたのなら、又追掛けて捕まえるだけです!

時間的に考えれば、逃げた彼女はまだ遠くには行けて無い筈です。

私は、担いで来た男を前とは別の檻に投げ入れて、素早く鍵をしました。

そして直ぐに逃げた女性を探します。

そんなに広く無いとは言え、本当に通常の音と視覚情報だけで、逃げ回るプレーヤーを探すのはかなり難しい事です。それが、一人か二人を探し当て、捕まえれば良いだけなら20分の時間でも何とか成る村の広さと作りでしょう。

しかし、相手は4人です。しかも、先の通りに、捕まえても7分前後で逃げられるし、同時に4人が檻に入ってないと、自分が操作する殺人鬼の勝には成らないのですから、実は、それを助ける為の【特殊能力】が使えるのでした。


使える能力は。


【2分間、周囲の環境音等の雑音を減らし足音を聞こえやすくする(インターバルは6分)】


【1分間、周囲20メートルの熱源が赤色等になって見える(インターバルは3分30秒)】


【2分間、付けられてから2分以内の足跡が見える(インターバルは8分)】


以上の3つ。


インターバルとは、一度その能力を使った後に、次に使えるまでの使用できない時間の事です。

殺人鬼は同時に全てこの能力を使う事も可能ですが、インターバルの時間を考えると、それをすると返って探す効率が悪くなるので、使える能力の中で今選択するべき能力をピンポイントで使うのが勝利への近道となります。

追跡する殺人鬼役がそうなのですから、追跡される側のプレーヤーも、このゲームが発売されてから何カ月も繰り返してきたプレイの経験で、様々な逃げ方や、反撃の方法を学んでいるので、最近では、私が好きな殺人鬼の方が少し不利なゲームバランスだとネットでは言われ始めてました。

それでも私は、他者を追掛け追い詰める殺人鬼側の方が楽しいので、ずっと殺人鬼をプレイしてるのでした。


 檻の近くから【足跡を見付ける能力】を使った私は、画面に浮かび上がった彼女の足跡を頼りに、逃げた20代女性キャラを追跡します。

身軽な彼女の足跡は、私が足跡を追跡する事を分かっているからなのでしょう。ジャンプを使って足跡が付かない石場に入り、その姿を暗ませようとしてました。それでも私は、このゲームを何百回とプレイしてます。ですから、こうしたプレーヤーは何処に隠れる事が多いかとか、どんな方法で反撃の準備をしてるのか等が予想出来るようになってました。

そこで私は、その石場の先にある小さな滝を目指しました。

その滝の裏には小さな穴があり、それを知ってるプレーヤーが隠れて反撃の体制を取ってる事が今まで何回とあったからです。

私は、石場に落ちてる石を拾い、武器にしました。

更に、木の枝も拾い武器にします。

こうした道具は、ゲームの画面では見付け易くする為に少し光って表示されてますから、慣れると殆ど無意識に拾ってたりします。

しかし、まだ拾える筈だった他の石は既に拾わてました・・・つまりそれは、洞窟の奥に逃げ込んだプレーヤーが拾ったのだろうと推測がつきます。

私は、滝の裏側に流れ落ちる川水を浴びながら入った私は、過去の戦いからの感を頼りに、暗がりに向かって拾った石を投げ付けました!

すると「ウ!」っと言う女性キャラの呻き声が、滝の音よりも大きな音と成って暗い穴の中に響きました。

手応えを感じた私は、すかさず走り込み、薄暗い中でうずくまって居る女性キャラを木の棒で殴ります。その女性キャラは、私の見事な奇襲に寄り僅か数秒でダウンしてしまいました。

取り敢えずは、私の大勝利!しかも、彼女は2度目のダウンです!!

私は直ぐに彼女を担いで滝の穴を出ます。

そして、あの檻が在る場所まで急いで戻るのです。

何故なら、それは先に書いた通りに、5分以内に戻らないと、檻に入れた40代男性キャラが逃げてしまってるかも知れないからです。

閉じ込めた40代男性キャラがにげ出せる時間よりも早い4分程で檻に着いた時、又しても私は驚きました・・・。

何故なのか、男性キャラが脱出してるのです!

「ええ~・・・さすがに、それはゲームバランスの崩壊じゃないかな?」

ガッカリした私は、20代女性キャラを檻に放り込み、鍵を掛けました。

ゲームの残り時間は11分程です。

40代男性キャラが逃げてしまったので、私は他に、小さな男の子キャラと、30代女性キャラを追わなければ成りません。

しかし、数百回もこのゲームを遊び続けてる私には、今の状況が相当に変だと感じました・・・。

このペースでは、私の負けになる・・・。

そう思いながら、もう一度、逃げられた40代男性キャラを探しに行こうとしたのですが・・・。

驚いた事に、その男性キャラがゆっくりと歩いて、こちらに近付いて来たのです・・・。

「これは何?・・・。こんなんじゃ、このゲームは成立しないのだけれど・・・。」

部屋で一人呟いた私は、この男性キャラがとった行動に最初は驚いたものの、今となっては、ここから殴り合いでもしようとの煽り行為か何かなのかと思い始めました。

しかし、彼は勝手にさっき自分で逃げた筈の檻の中にゆっくりと歩いて入ってしまったのです・・・。

私は、又しても呆れ、そして怒りを覚えました。

ゲームが崩壊した瞬間を見てしまったと思ったのです。

「なんだコイツは!こちらを馬鹿にして煽ってるのか知らないけど!そんな事するならゲームに参加するな!!」

怒った私は、ソイツが望むままに、鍵を掛けて閉じ込めてやりました。

「お前の事はもう、いいわ・・・!」

画面内の男性キャラに向かって独り言の文句を言った私は、その怒りのままに残りの二人を探しに行きました。

しかし、でした。

驚いた と、そう何度も書いて恐縮なのですが、驚いた事に残りの小さな男の子キャラと30代女性キャラは、この2分後にそれぞれの通信が切れたのです・・・。

画面左上に、各プレーヤーの名前とキャラの顔が小さく表示されてましたが、先の2人の表示には|シグナル・ロスト(通信途絶)の表示が出たので分かりました。

一人の通信が切れてるのなら過去に何度か経験があり、それでも最後までゲームが成立した事が何度もありまが、2人以上の通信が切れた場合は、ゲームが無効となり、自動的に終了する仕様の筈です・・・。

にもかかわらず、驚く私が覗き込む画面の中では、鬼ごっこゲームが継続してるのです・・・!?

「これはいったいて、どういう事・・・!?」

今、このゲームで一緒にプレイしてるのは、私を含めて3人です。

このゲームは、鬼ごっこを盛り上げる為に、通信で繋がって同じゲームに参加してるプレーヤー同士ではボイスチャットが出来ない仕様なので、逃げ役の彼ら同士でも会話は出来ません。

ですから、今のこの奇妙な状況を理解するには、自分が見ている画面とスピーカーから伝えられる音だけが頼りでした。

見ると、檻に閉じ込めた40代男性キャラは、扉の方に近付いてましたが、錠前を外そうともしてませんでした。

それに対して、その前に閉じ込めた20代女性キャラは、必死に錠前を外そうとしてます。

「今、錠前を外せても、私が直ぐに捕まえて、檻の中に戻してあげるけどね・・・。」私は奇妙で呆れた状況への怒りを含めて、そう呟きました。

それで、逃げる事でゲームを楽しんでる残りの人達には悪いので出来ない事だったので普段はしない行為でもあったのですが、チートで無く正攻法だとしたら、どんな方法を使って超短時間で錠前を開けてるのかを見たくなりました。

それは、チート行為なら分かりませんが、そうじゃないとしたら、鍵の掛かった錠前を破る動作は、それなりにキャラの動きの何パターンに分類されてるからでした。

『最速は40代男性キャラの【針金開け】しか無い筈ですけどね・・・。』

そう思ってる私をよそに、その40代男性キャラは錠前を開ける気が全く無いらしく、ただ立ったままま動きません。

対して20代女性キャラは、必死な感じで錠前を開こうとしてます。

女性キャラが開錠を試みてから2分が経ちました。

「おかしいねぇ?さっき迄の感じだと、そろそろ開いてないとね・・・。」

私は少し、意地悪に呟き、そしてこれからどんなチートで開錠するのかとニヤニヤして居ました。

すると何か、白い影が画面の奥からこちらに向かって来ました。

『何だろう・・・?』

見慣れたゲーム画面内の見た事無い光景に、私の目は釘付けになりました。

「何だろう?隠しキャラ!?」

私は、興奮しました。

何百回と繰り返しやってきたゲームに、未だ見た事が無い隠し要素があったなんて驚きです!

その白いキャラクターは、私達が居る檻の近くへと段々と近付いて来ました。

それはどうやら、全身が白と青を基調として描かれた子供のキャラクターの様でした。

すると、さっきまで動かなかった男性キャラが檻の中で振り返り、その子供キャラに向かって指差しのジェスチャーをしたのです・・・。

私は、自分が操作する殺人鬼を動かして、その奇妙なキャラに近付く事も忘れ、ゲーム機のコントローラーを握り締めたままで居いました。

それは、驚きと興奮によるものでした。

『ああ・・・!こんな驚きの隠しキャラが居たなんて情報は知らない!もしかして・・・。』

「もしかして、ここに居る3人が第一発見者なら、それならこの画像を録画してネット配信したら、きっと凄い事に成るのでは・・・!?」

私がそんな思いを描き、そして口にした時でした。

その青白い姿の子供のキャラが、とても不気味な姿だと分かったのは。

「気持ち悪・・・!」

恐怖もののゲームの隠しキャラにしても、非常に悪趣味なデザインだと私は思いました。

それは、左手が肘から無く血がしたたり落ち、それが歩いてきた後に点々と続いてました。

そしてクネクネと頭を回す頭は、頭蓋骨が半分割れて脳が描かれてるのです。

極め付けは、その目でした。

黒く窪み、まるで深い井戸の様な目の奥に、生者を招き入れその深みへと引き込もうとするような湖の様に揺らめく青白い淡い光を放つ不気味な瞳が描かれてたのです!

ゲームとは言え、得体の知れない恐怖感が伝わり、私の背筋は冷たくなりました!

「何!?・・・何なのこれは!?」

気が付けば、その不気味な子供は、檻からの脱出をしようとしていた20代女性キャラの檻の前に立ってました。

そして、その錠前に手を掛けたのです!

「こいつがチートの正体・・・?ハッキング的なチート行為?それともNPC(コンピューターが操作するキャラクター)?いや、もしかして・・・バグ!?」

私が画面に向かって、そう叫んだ時。ゲームの残り時間は7分を切ってました。

ゲーム内で起こる規格外の展開に、私は恐怖感を覚えながらも、この結末がどうなるのかとても興味が沸いてきました。

スピーカーからは、不気味な子供が錠前を外そうとするカチャカチャという乾いた音が異様に響いてきました。

それから間も無くガチャンっと言う錠が開いた音がしました。

それは不気味な子供が開錠を試みてから、たった10秒程の事です。

「そんな・・・。」

私は驚愕しました。

それは二つの意味でです。

一つは、これが隠しキャラならゲームバランスの崩壊が起きたということです。

そして、もう一つは、これがこのゲーム制作会社のプログラムによるもので無かったとしたら、セキュリティ・システムの脆弱さに因って、外からの改ざんが行われてしまったのではと思ったからです。

「私は・・・とんでもないモノを見てしまったの・・・。」

そう落胆した時でした・・・。

不気味な子供に錠前を外され、扉を開かれた20代女性キャラの通信接続が切れたのは・・・。

「何で・・・。一応は逃げられるのに・・・。」

私は、まだこのゲームを続けるつもりで居た自分に気が付きました・・・。

しかし、その直後【このゲームを続けても大丈夫なの?】と思ったのです。

というのも、気が付けばコントローラーを握る手には、じっとりと汗が滲み、振動機能が作動してる訳でも無いのに、ガタガタと震えていたからでした・・・!

『これは、もしかして・・・!?』

「最後まで見てはいけないゲームでは・・・!!」

それは本能的な判断だったのだと、後になって思いました。

私は、直ぐにゲームを強制的に終了させるボタンを押しました。

しかし、それが全く反応しないのです!

『これは、ネットに時々書かれてる、ゲーム機が霊界か何かと繋がってしまった状態なのでは!?』

コントローラーでゲームから抜け出せないのであれば、本体のスイッチを切るか、インターネットに繋がるランケーブルを引き抜くかしか無いと思いました。

私は、本当ならゲーム画面から遠ざかりたいのに、ゲーム機はテレビの前に置いてました。

テレビの青白い不気味な子供のキャラが、まだ檻の中に居てオンラインで繋がってる男性キャラの前に歩き始めた時、ゲーム機の前の座椅子から前へと飛び出した私は、目の前に差し迫る恐怖を振り払い除ける様にして這い、ランケーブルをゲーム機から引き抜きに行きました!

それは先に書いたとおりにテレビの近くなので、私はその不気味な光景を見上げる様にして間近かに見たのです。

そして私は、その光景に恐怖しました。

ランケーブルを引き抜く寸前に、画面内の不気味な子供は私の方を振り向こうとしていたからです・・・!

ケーブルを引き抜くと同時に〖インターネットの接続が切れました!〗という表示が出た後に画面が黒くなり、一人っきりの部屋の中での長い沈黙の時間をジッと耐えて待ちました。

するとやがて、鬼ごっこゲームのタイトル画面になりました。

それはとても長い時間に感じられたのですが、実際の時間にすると多分10秒程だったのでしょう。 

私が覆いかぶさる様にしてインターネットのケーブルを引き抜いた黒いゲーム機の表面には、私の額から顎先へとつたわって落ちた脂汗が数滴落ちてました・・・。


そのままゲーム機の電源を落とし、更にはゲーム機のコンセントも引き抜いてテレビも消した私は、怖さのあまり部屋の明かりは点けたままで、ベッドに入りました・・・。

そうして、なかなか眠れない中で、鬼ごっこゲームでの不気味で不可解な出来事を思い返し、頭の中で整理しょうとしました・・・。

しかし、結局、何があったのかは分かりません。

それでも、眠りに落ちる少し前に。

『でも、結局はゲームの中での事だから・・・きっと何日かしたら、多くの人達が知る【怖すぎる隠しキャラが出た!!】とかなって・・・普通の事になるんじゃないかな・・・。』と、私は考えたのでした。

すると、そんな自分の結論で、やっと安心できた私は、急に眠くなったのです。

それで後は何事も無く、翌朝までぐっすりと眠ったのでした・・・。


 その翌日の日曜日の夕方でした。

私はスマホを使って自分のアカウントがあるSNSを見てました。

その中には、自分がフォローしたり、されたりしてる、様々な人達の書き込みや、フォローしてるニュース等が流れていました。

そうして鬼ごっこゲームの中で起きた昨日の深夜の恐怖体験を誤魔化すようにしてた反面、あの出来事がゲームの中にプログラムされてて、レアな隠しキャラとして見付けられてないかとも期待して探しました。

そうした事を、休日の終盤に部屋のベッドで寝ころびながらして居たのですが・・・。

その中の一つのニュースを見た時、私の目は釘付けになりました・・・。

それから、それを読み始めると同時に、エアコンで快適に保たれてる筈の部屋の空気が、急激に下がっていくのを感じました。

そして、更にその記事を読み進めていく内に、部屋の温度が下がってると感じてるにも拘わらず、気持ちの悪い汗が額と背中に染み出してくるのを感じ始めていました・・・。


そのニュースの見出しはこうでした。


〖ネット中毒で死亡か?人気の【鬼ごっこゲーム】を止められずに・・・。〗


私が鬼ごっこゲームをしていた時間、今日の午前2時頃に、同じゲームをしてる最中に死んだ人が居ると書いてあるのです。

その人は27歳の女性で、最近では仕事から帰った後は、夕食も取らずに部屋に引き籠り、朝方までずっと鬼ごっこゲームをして、2時間程度の仮眠をした後に朝食も取らずに出社する日々だったそうです。

そして、この日は連休だった事もあり、不眠不休で食事も殆ど取らずに鬼ごっこゲームに没頭してたとの事でした。

しかし、私が恐怖したのはそうした事では無かったのです。

午前2時にも拘わらず、家族がその人の死の間際に部屋に駆け付けた理由でした。

その家族の話によると。

彼女は自室でゲームをしてて、家族は皆、寝ていたのですが、突然「キィー!!」と言う奇声を聞いた母親が飛び起き、娘の部屋に入ると、娘がコントローラーを握りゲームをしてた体制のままグッタリとしていたのだそうです。

椅子に座る娘に何度も呼び掛け起こそうとした母親が言うには「あんな気持ちの悪い青白い子供が出てくるゲームをしてたから、娘は精神が病んでたのかも知れない。」と言う事でした・・・。

ニュースでは、ゲーム名は伏せられてましたが、記事の内容を照らし合わせると、私がやっていた鬼ごっこゲームだと推測出来ました。

あの鬼ごっこゲームに、青白い不気味な子供が出たのは、あの時だけです。

一緒にゲームをしてた彼女は、私の代わりに、ゲームに存在しない筈の真の鬼に捕まったのかも知れません・・・。

このニュースを読み終えた時、私は恐怖しました・・・そして亡くなった彼女の事を思うと後悔もしました・・・。

それは、私は彼女を自分の身代わりにしてしまったかも知れないとも思ったからです・・・。


それから私は直ぐに、その鬼ごっこゲームをゲーム機から削除しました。

また次に、あの鬼ごっこゲームをして、もしも、あの青白い不気味な子供が現れたりしたらと思うと・・・。

そう・・・前回は、私は逃げ切れました。

それはきっと、恐怖におののきながらも、体を動かしてコードを引き抜けたからでしょう。

しかし、次回も同じく逃げ切れるとは限らないのかも知れません・・・。

現実に犠牲者が出てるって事は、あの子供が現れたゲームでは、参加者5人の内の誰かが、あの子に捕まって、あの世へと連れ去られてしまう事があるのかも知れない・・・ということなのですから・・・。


 

 せめて今は、ゲーム内のあの彼を操作してた彼女の魂が救われる事を願うばかりです・・・。





最後まで読んで頂いて有り難う御座いました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ