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疑問

前回、同じ内容の話を二話投稿していました。

申し訳ありませんでした。

 世界全ての輝きが消え、空気が重くなる。


「止まった、のか?」


 締めつける圧力は変わっていない。だが、押しつぶすように働く力も感じない。


「止まった」


 俺はなんの抵抗もなく動かせるようになった怪物の手をこじ開け、脱出に成功する。


 でも、こんな能力を無条件で使えるはずないよな。


 俺はポケットから液晶パネルを取り出し、ステータス画面を開く。そこには物凄い勢いで減っていくMPの量が表示されていた。


「うえ!? か、解除」


 慌てて時間の停止を解除する。即座に怪物は手の中に獲物がいないことを察知し、怒りを滾らせた咆哮を上げた。


「ヒキョウ コソク ヤハリ ジャクシャ」


 卑怯で、姑息? こいつは、俺が何をしたのか見えていたのか? それとも、ただ闇雲に適当言ってるだけなのか?


「ヨワイ ツミ オレ バツ アタエル」


 いうなり再度12の腕が俺の体に詰め寄ってきた。

 一点からではなく、様々な方向から迫る伸縮自在の腕。

 俺は、迷わず叫ぶ。


「『時間停止』!」


 再び世界から色が消え、12の腕が静止する。

 俺はステータス画面を開き、MPの残量を確認しながらスキル欄を確認する。


 操術が、2に上がってる。そして、時間操作、空間操作、二個増えてる。

 これ、もしかしたら、勝てるぞ。


「時間の停止と同時に発動だ。解除」


 おびただしい量の腕が動き出し、俺の周囲はあっという間に囲まれる。


 そういや、こんなシーンとかもあったっけなぁ。


 俺は夢のような遥か昔の記憶を思い起こしながら、意識を集中させる。


「『鉱物操作』」


 周囲の岩壁から石槍が生成され、怪物の腕をすべて貫き、空中に固定する。

 相当大きな穴が体に空いたにもかかわらず、怪物はうめき声一つあげず、ありあまる力で突き刺さった石槍を全て叩き折った。


「それ壊すか!?」


 俺としてはあのまま股間から頭部にかけて一本の石槍を突き刺してフィニッシュだと考えていただけにその行動には驚く以外の反応を示すことができなかった。

 だが、ダメージは確実に入っている。怪物の腕の動きは徐々にだが緩慢になっていた。


「ヒキョウ ユルサヌ」

 多腕を振りかざし、怪物は拳による乱れ打ちを開始した。広いとはいえない洞窟内を石槍の突き刺さったままの腕が暴れまわり、数瞬の間に洞窟の壁が破壊される。

 高速で広がっていく空間。だが、俺の体には強風こそ届くものの肝心の致命傷を負わせる拳撃は襲ってこなかった。


「急にどうしたのかしらないけど。チャンスはものにさせてもらう」


 釘を怪物の足元に生成。圧縮。拡大。


「高硬度の鉄釘に、貫かれて悶え死ね!『鉱物操作』!」


 俺は全力で右手を上空へ振りぬく。それに連動するように怪物の足元から巨大な釘が出現。射出される弾丸のように加速し、回転による貫通力をフルに生かした突撃をもって怪物の体へと突き刺さる。

 だが、貫通に至ることはなかった。



「まだだ!『磁力操作』!」


 釘の向く方向に強力な磁場を発生させる。そうすることで、釘はその磁力に引かれて――


 突き刺さるだけにとどまったはずの釘が再び動き出す。


 ――お前の体を、貫通する!


「......オマエ キョウシャ オレ ジャク、シャ......」


 釘は、怪物の体の中心を綺麗に抉り、完全なる死を与えた。

 途端、広々とした空間に一抹の静けさが訪れる。


「スキルとかを使わない純粋な力比べをしかけてきたお前の言う通り、俺は卑怯者だったな。

 だから俺はお前を倒したけど、お前より強いわけじゃないよ。自信と誇りを持って、あの世へ逝け」


 実際、操聖っていう天職が強すぎただけだしな。


 俺は血の海に沈む人型の怪物から目を背け、ステータス画面を見る。


「MPは残りわずか。スキルに増えた形跡はなし。操術の派生は広がった。レベルみたいな概念はないのか?」


 まだまだ様々な疑問はあるが、とりあえず俺は考えるのをやめた。

 倒した名前も知らない怪物の亡骸に、俺は手を合わせる。


 ごめんな。ただ殺すだけになってしまって......


 しばらく黙祷し、俺はその場所から離れるために動き始めた。


 肉食獣は血の臭いに引かれやすい。今の俺の体じゃ襲われたら簡単に死ねる自信がある。


「にしても、操聖。強すぎないか?」


 思い浮かべるのは何でもかんでも操作できる利便性と汎用性の高さ。そして、世界の理にさえ干渉できる力。ゲームなどでいえば運営公式チートのようなぶっ壊れ性能。


 なるほどな。前の勇者が悪事を働いた理由もわかる。

 これだけ便利な力があればこの力に溺れ、驕り、我慢してきたすべてをやろうと思ったりもするわけだ。


「でも、そうなると。何故あの国は俺を、操聖を、簡単にこんなところに捨てたんだ?

 俺が王なら例え大罪を犯した人が過去にいたとしてもこの天職を持ってるやつは捨てない。

 どうにかして飼い慣らそうとするはずだ。なのに、ああもあっさりと......」


 そうだ、おかしい。

 あの鎧の男の言っていること、やっていることは人族側の不利益を生んだ。

 嬉々として、というよりも真っ先に俺の排除を優先してきた理由は過去に操聖が悪さしたからなんて理由じゃおかしすぎる。

 言ってることはもっともではあるけど損得勘定が下手くそ過ぎる。


「そういえば、あの男の瞳は紅かったな」


 ん? 紅い、瞳? 人族はみんなそんな色か?


 俺はこの世界にきてから見ているはずの王様などの顔を必死になって思い出そうとする。

 だが、一切記憶から湧き出てくる情報はない。


「でも、人族と敵対する種族のもの、って考えた方が、あの男がとった行動に説明がつくんだよな」


 これといった決定的証拠は今の俺にはない。とりあえず今は、先に進んでこの神代の寝殿をクリアしよう。そして一刻も早くあの国に戻って真実を確認しよう。


 俺はステータス画面を見てMPが回復したのを確認し、急いで行動を開始した。

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