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門番

同じ話が二話投稿されてしまっていました。申し訳ありません......

んで、ここが神代の寝殿か」


 洞窟のような狭くごつごつとした空間。けれどもどこか神聖さを感じさせる空気。

 そんなわけの分からない空間が俺の今いる場所だった。


「見た感じ、ザ・洞窟って感じにしか見えないけど。異世界追放系のテンプレ展開から予想するにこの寝殿の中には様々な強敵がいるんだ。それこそ、初期装備すらない勇者には到底かなわないレベルの敵が」


 頭の中に中二病と言われたころ読み漁っていた本の内容を思い浮かべながら、俺は目の前に続く道を一人で歩き始めた。


「そうだな。この場合じっとしているのが正解、ってときもあるけど今回は別だろうな。見知らぬ世界にも救助隊みたいなのがあるとは思わない方がいいだろ。それと、武器になりそうなものなんかも落ちていることは期待しないでおこう。どこぞの吸血鬼に溢れた島と違って、ここは人が来ているような痕跡は見当たらない」


 足がピタッと止まった。


 武器無し、知識無し、経験無し。あれ? 生きて、帰れるのか?


 俺は唐突に不安になった。不安に駆られ、ステータス画面を目の前に開く。


「あれ、MP減ってる。何か使ったっけか?」


 MPが250にまで減り、操術の横の数字が1に変わっていた。


 あ、あの時スキル使ってたら......いや、俺のスキルなんも使えそうなのなかったわ。


「操聖......もしかして常にMPを消費し続ける、なんてデメリットないよな」


 俺はステータス画面に触れたりしてゲームのように詳細が見れないか調べてみる。

 結果は、そんな便利な世界はないということが分かった。


「んー? スキルの詳細とかは......?」


 ついでにスキルの欄も調べてみる。

 スキルの欄に触れた瞬間、操術1の下にズラッと○○操作の文字が並んだ。

 そのあまりの多さに一瞬驚く。

 だが、その膨大な量の○○操作はほとんどわからず、RPG初期データのスキル欄のような寂しさと見にくさで溢れていた。


「あ、もしかしてこれか!」


 俺はおそらくMPの減少に関与しているであろう原因を見つけた。

 『筋操作』そう表記されたスキル。これが俺には怪しく見えた。いや、確信してこいつが原因だといえた。

 いつの間にかあの鎧の男に外された両肩関節が治っている。


「操術関係のスキルってもしかして無意識のうちに発動するのが多いのか?」


 そんな考察をしながら俺はその場で立ち止まる。俺の視線の先には、光が差し込んでいた。

 俺は躊躇なくその光の先に進んでいく。


 あの男、馬鹿なのか? こんな近くに出口がある場所に飛ばすなんて。


「異世界に来てそうそうに死ぬなんて嫌だからな」


 俺は特段何も考えず、出口前の十字路を横切った。

 すぐ目の前に見える出口のような光の空間に腕を伸ばす。


「マテ」


 が、そこにたどり着く前に、機械のように無機質な声が俺の鼓膜を叩いた。

 バッと後ろを振り返る。だが、何もいない。

 左右を見る。......誰もいない。


「げん、ちょうか?」


 俺は特別気にせず、光の中へと手を入れる。


 直後、強烈な衝撃が俺の腹部を襲った。内部の様々に行き渡るような一撃に、俺の体は宙に浮き、そしてその場に崩れ落ちた。

 地面のでこぼこしか目に映らない俺の耳元に、こつこつと地面を叩く靴の音が聞こえた。


「ソト二デル キンシ」


 震える筋肉を酷使し、そういう声の発生源を確認する。

 そこには頭のない化け物が立っていた。


 十二本の腕を背中から生やし、腹に付いた巨大な口。人のように見えて全く異質な生物が俺の真横に立っている。


「だれだ、お前」


 歯を食いしばり、跳ね起き、距離をとる。


 戦闘に一切関わりがなかった俺でもわかる。こいつは危険だ。


「オレ モンバン ヨワイモノ コロス」

 

 弱いもの。逃げようとする者という意味だろうな。

 つまり俺は、ここから出るにはこいつを倒すか、神代の寝殿をクリア? しなければならないってことだ。


「そんなの、選択肢は一つしかないに等しいだろ」


 俺はゆっくりと両手を地面についた。

 尻を高く上げ、目線を正面の怪物に向ける。


「喰らいな、俺の最強の一手!」


 言うなり俺は地面を蹴り、全力で加速。上から勢いよく襲いかかってくる12の腕をギリギリで回避し、怪物の後ろに走り抜ける。


「なんていうとでも思ったか!」


 最初から戦う気なんかねえよ。お前みたいな化け物なんかと。

 見てろよ。100m11秒の俺の走りを。そして、獲物を取り逃がしたと悔しがれ!


 俺は足を緩めず、暗闇に突っ込んでいく。

 だが、この世界はどうやらそう簡単に切り抜けられるほどイージー設定ではないらしい。


「手が、伸び、て」


 俺の腹部を、後ろから伸びてきた巨腕が掴んだ。


「そんなのありかよ......」


 抵抗空しく俺の体はさっきの場所まで引きずり戻されてしまった。

 しかも、さっきとは違い、足は地面についておらず、身動きが取れない。

 この拘束を外すだけの力もない。


「は、ハロー」


 ぎこちない笑みを浮かべて俺は腹部の口に向かって挨拶をした。


「ニゲタ オマエ ヨワイ オレ オマエ コロス」


 嘘だろ!? 今の俺は握りつぶされただけで死んじまうって!


 俺はなんとか脱出を試みるが、あまりの筋力の差に何もすることができない。

 その間にも締め付けは徐々に強まっている。確実に死が近づいてくる。


「く、離せ!」


 全身の骨がミシミシと声を上げ、あまりの圧力にひびが入り始める。


 一か八か。かけてみるしかねえ。中二病なら、いや、誰もが一度願ったであろうあの現象。

 それを、スキルで、発現させる!


「いくぞ怪物!」


 狭苦しいなか、精一杯息を吸い、俺は叫ぶ。


「『時間停止』!」

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