消えたスキル欄
「......リョウ、ご飯どうする?」
「とりあえず今日は俺のスキルでお腹いっぱいになった感覚にしとこう。夜で辺りも見えないし木の実とかも取ってこれそうにない」
俺は制服の胸ポケットからステータスプレートを取り出した。
スキル不発の原因も確認しようととったその行動で、俺はあり得ない光景を視界に入れる。
スキルが、ない......?
「なんだ、これ? 表示バグみたいなのか?」
ステータスプレートには変動していないMPと空白のスキル欄と天職の欄。
全くの不意打ちに俺の思考は真っ白になる。
「......何かあった?」
「俺のスキルが、無くなってて。あれ? おかしいな」
なんでだ? なんでスキルがないんだ? 天職も同じだ。なんで、なんでだ?
俺はショックに動揺する心を落ち着かせようと深呼吸を繰り返すが、冷静になればなるほど混乱が増し、何も考えられなくなっていく。
「......リョウ、酷い顔だよ。大丈夫?」
目の前にシェリーの顔がひょっこりと出てくる。だが、俺にはシェリーに微笑み、大丈夫だと言える余裕がなくなっていた。
脳内が何故で埋め尽くされ、次第に呼吸が荒くなっていく。
「なんでだ、なんで......」
いつからだ? 神代の寝殿を出た時か? いや、そのあとのジルとの戦いで使えていた。さらにそのあとのシェリーの治療にだって使えてたはずだ。
「......『サイコジャック』。眠って」
「ぇ?」
倦怠感が増し、瞼が重くなる。俺は強烈に襲い掛かってくる眠りの誘惑に耐えきれず、そのまま目を閉じた。
「朝、だ」
意識が覚醒し、周囲の景色が情報として脳に送られてくる。暗かった景色が一転して明るい日差しに包まれていた。目の前には昨晩シェリーが燃やした枝木の残骸が灰になって残っている。
「シェリー?」
周囲にシェリーの姿は見当たらなかった。仕方なく、俺は近くにあった燃えていない枝を拾い、原始的方法で火を起こす。
火を起こせれば明かりとしても、調理用としても、情報伝達用にも使える。もしかしたら少し出かけて迷子になっているだけかもしれないしな。
「......リョウ、小屋を見つけた」
「うわあ!?」
背後からぬるい息が首筋にかかり、俺は背筋を反らした。
勢いよく振り返った先には真顔で首を傾げたシェリーが立っている。
「小屋?」
「......うん。ここからあっちに向かうとあった。多少ボロボロだけど生活するには十分すぎるくらい綺麗」
こいつ、もしかしてそれを探してたのか? 俺が、寝てた間、ずっと?
俺はポン、とシェリーの上に手を置き、撫でまわした。
「......ちょっと、やめて」
まんざらでもなさそうな表情でシェリーは軽く手を振り払おうとしてくる。その姿に、撫でまわされるだけだったのになあという謎の感動を俺は味わっていた。
「ありがとうな」
「......リョウがパニックになったから昨日は大変だった。もっと感謝して」
おっと、強欲になってるな? けど、なんでだろう。断れないな。
俺は嬉しそうな表情を見せるシェリーの頭をさらに撫で、とにかく今までのことを褒めちぎった。その結果、羞恥心によってか顔を真っ赤にしたシェリーからビンタを一発もらってしまった。
なんか、小学生というよりも園児と遊んでる気分になってきたな。まあ、こんな暴力的な園児はいないが......。
「とりあえず、今はその小屋に移動しよう。そのあと、食料の調達をして......俺のスキルが消えた原因について考えていこう」
「......ジルに出会った後の私とリョウの身に起こった出来事も少し考えた方がいいと思う」
「そうだな」
俺は起こした火を踏み消し、浮遊するシェリーの体にぶら下がって小屋への移動を開始した。




