質問攻め
「なあシェリー、今まで聞くのを堪えてきた質問していいか?」
「......いいよ。ただ、私がそれに全部答えれるとは限らないから」
背中にシェリーをおんぶし、俺は陽が沈んでいく方向に歩いていく。
「まず何から聞こうかな。......シェリーは魔王の娘なんだって?」
「......うん。ただ、血の繋がりは薄い。私は第五王女、お父さんには他に4人の王子がいる」
魔王も子孫を残すのに必死か。だったら血縁は相当遠いだろうな。
「魔王は、シェリーの何倍強いんだ?」
「......わかんない。でも、お父さんはとにかく強い。直近10代の魔王よりも圧倒的に」
うーん。直近10代の魔王の強さを知らないからなぁ。いまいちわかりにくい。
にしても、何を根拠にほかの魔王より強いって言ってるんだ?
「なあシェリー、お前歳いくつなんだ?」
言ってから俺は無意識のうちに漏らした質問の迂闊さを後悔した。
女性に対してしてはいけない質問の一つをしてしまった!
「......10歳」
「え? あ、そうなのか」
あれ、気にしてないのか? まあ、10歳だからっていうのもあるのかな。
「......今、疑ったでしょ。あんなにいろんなこと知ってるのにそんな若いわけないって」
「いや、疑ってないよ」
背後からの謎の圧を感じ、俺の背中が少し湿った。
「......嘘」
「ほんと」
「......嘘」
「ほんとだってば」
「......ふうん」
なんでこんなに疑われるんだ? でも、確かにシェリーの知識は10歳にしては多すぎる。いや、この世界では常識なのかも知れないのかもしれないけど。
じゃあ今の発言は何だったんだ?
「でも、確かにシェリーは物知りだよな。やっぱり魔王の娘だと英才教育でも受けるのか?」
「......ううん。魔王家の人はみんな先代魔王たちの記憶を植え込まれる。その記憶を基にして常識を知り、攻撃手段を覚えたりする」
記憶を植え込む......。人格を失わせずに他人の記憶を埋め込むなんてことできるのか。
もしかしてこの世界は地球とできることが逆だったりするんじゃないか?
「つまり、シェリーの中には自分の知らない記憶があるわけか」
「......うん」
不意に、シェリーのお腹が鳴った。
「......リョウ、ご飯」
「わかったって。てか、シェリーも探すの手伝ってくんない?」
時間は日本でいう夕方に近づき、次第に空気も冷え始めた。
野宿になるのかなぁ。空腹、二人、地形わからず。
危険だと思うんだけどな。
「探知魔法みたいなのないの?」
「......探知、魔法?」
あ、そうだ。魔法で思い出した。
「シェリー、風魔法ってグレンと戦うときに使ってたと思うんだけどあれなんだ?」
この世界は火法、水法、風法、土法、聖法、魔法っていう俺の知る魔法に限りなく近いものが存在している。けれどもそれらはあくまで別々のもので風魔法のようにくっついたりすることはないと思うんだが。
「......簡単。風法と魔法を組み合わせただけ」
シェリーは地面へと降り立ち、自信の体に風を纏わせ始めた。
「......これがウィンドドレス」
シェリーはすぐにそれを解除し、今度は紫のもやもやとした雲のようなものを纏う。
「......これがダークドレス」
シェリーの周囲に風が巻き起こり、闇色の雲が風と共にシェリーの周囲を包み込む。
「......そしてこれが暗纏舞踏。少し古代魔術の知識を必要とするけど本当に少しだから比較的使いやすい」
すぐにそれを解き、シェリーは俺の背中へよじ登ってきた。
疲れたとでも言うように肩の上に顎をのせてくる。
「シェリー、風法と古代魔術を使ったら探知みたいなことできないかな?」
「......リョウ、風法とか魔法とかは攻撃しかできない。だから多分リョウの言う探知の力はできないと思う」
そうなのか。意外と簡単な事ではないんだな。
「......リョウ、もう暗くなる。野宿するなら平野のほうがいい」
「あ、わかった」
いつの間にか暗くなっていたことに気づき、俺はどこか寝られそうな場所を探して速足で動き回った。
Q何故空間操作を使わないの?
Aすぐに帰ったら面白くないから