表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/113

火にガソリンを注ぐ

 最初に異変に気がついたのは前線の兵士であった。


 日本軍が急に弾幕を形成する様になり、甲高い金属音が聞こえて来るようになった。


 見てみれば防御陣地を作る土嚢にできる穴も明らかに以前より大きくなっている。


 戦闘時の被害も徐々にではあるが増大してきているのである。


 そして敵の小銃を鹵獲してみれば、それは三八式歩兵銃ではなかった。


 まさか三十年式歩兵銃や村田銃の様な旧式を使っている訳がないし、かと言って当時最新鋭の九九式短小銃でもなかった。


 その正体はなんとびっくりM1ガーランドである。


 M1ガーランドの他にもM1911も鹵獲されたりする。


 さらに日本軍側にはBARからM1919・M2重機関銃もあった。


 挙げ句の果てにはM2軽戦車・中戦車まで出てくる。


 もちろん中華共同体はどういう事かとアメリカを問い詰めるが、知らぬ存ぜぬとのらりくらり躱す。


 日本だって彼らがアメリカ製の兵器を使っていることを知らなかったし、大本営は補給した分しか戦えないと思っていた。


 アラスカからソ連を経由して密かに現地の日本軍へ供給されていたのだが、日中ともに知るよしもなかったのである。


 現地の日本軍とアメリカの間では武器を提供するかわりに、中華共同体の征服後に経済圏はアメリカの物になるという密約が交わされていた。


 しかし、なんと大盤振る舞いなことだと日本軍は思ったのではないか。


 その一方でアメリカからしてみれば、それらは大した武器ではなかった。


 小火器は第一次世界大戦からその直後に作られたものばかりであり、一番新しい物は1936年に製造が開始されたM1ガーランドぐらいである。


 戦車に関してもM3軽戦車・中戦車への更新で旧式と化すM2軽戦車・中戦車が与えられている。


 ともあれ新しい武器を手に入れた日本軍は、やっと中華共同体軍と対等に戦えるようになった。


 日中両政府とも講和したがっているのにアメリカが要らない事をしたせいで日中戦争は長引いてしまう。


 そんなアメリカは日本に対して侵略戦争をしているという理由で様々な経済制裁をかける。


 なんとも分かりやすいマッチポンプである。


 中華共同体・イギリス・オランダなどは経済制裁には消極的であり、イギリスだけは満州国の経済圏が脅かされているので非難声明だけは出した。


 というかヨーロッパは極東の様子を気にする事ができる状態とは言い難く、真に平和なのはアメリカぐらいであった。


 次第に日本は否応なしにアメリカの手によって、世界大戦の舞台へと引き摺り出されていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 大本営と陸軍省すら制御不能なら、もはや大命を出して期限までに原隊復帰せねば軍籍を剥奪しなければなりませんな。 なんせ、この時空の日本は底なしの不況でもないし、軍需で経済を支える構造でないか…
[一言] 》現地の日本軍とアメリカの間では武器を提供するかわりに、中華共同体の征服後に経済圏はアメリカの物になるという密約が交わされていた。 関東軍が最早アメリカ所属になってるじゃねーか いくらなん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ