デスマーチはある意味(仕事との)デスマッチ
制服は自らの所属を表すものである。軍隊だったら軍服、警察だったら警官服といった具合だ。
そんな軍服でも警官服でもない、保安隊と分かる制服を作らなければならなかった。
デザインを任されたのは千野財閥の被服部門。もちろん制服などのデザイン経験は無い。
差別化が一番の目標とされ他は二の次にされた。
「まず立襟はやめて折襟にしよう。」という案が出され、その次には「いっそのこと開襟にして背広型にしよう。」ということになった。
「色はどうするのか」と問われれば「陸軍や海軍が使っている色以外で」と返ってくる始末だった。
しかし制服は保安隊だけでも正装や礼装・略装・戦闘服があり、更には上級職用と一般職用を別に作る必要があった。
保安隊だけでも大変なのだがその他の保安局職員の制服も作らなければならなかった。
そんな状況に追い込まれた被服部門は徹底的な簡略化を行った。
「デザインは灰色の背広型で決定したよ。」
「いちいち正装と礼装でデザイン変えてられるか、どっちも同じデザインに統一するぞ!」
「略装もデザイン流用して、上着の裾を短くしたりしてマイナーチェンジすれば良いでしょ。」
「階級によってデザイン変えるの面倒臭いから、装飾の有無で分ければ良いよね?」
「戦闘服?そんなもん同じ色の作業服みたいな物で十分でしょ。」
「外套?既製品のデザインを流用しろ!」
「保安局用はどうします?」
「デザインはダブルボタンの背広型にしたよ。」
「とりあえず正装と礼装は統一。」
「いっそのこと略装と戦闘服も統一しよう。」
「戦闘服に上着を着せたのを略装にするか。」
「帽子はどうします?」
「保安隊は官帽と戦闘服用に野球帽を、保安局はケピ帽とハットで良いだろう。」
といふうに被服部門によって制服が決まっていった。
では完成した制服を紹介しよう。
保安隊用の制服は灰色の開襟(背広)型になり、軍隊や警察との差別化を図った。
細かい所にも目を向けると黒い帯革や銀色のボタン等があり、これらも差別化に一役買っている。
制帽は流石に一般的な官帽が採用された。しかし制服と同じ様に銀色の装飾がされている。
全体的に見れば日本らしく無いという感想になる。でも結果的に差別化はできたんだから良いんだろう。
戦闘服はまんま灰色の作業服であり、とくに言うことは無い。
特筆すべきは帽子で略帽には野球帽が採用されたが、ピルボックス・キャップというタイプが採用された。
ピルボックス・キャップとはケピ帽子に似た野球帽である。どちらかと言うと後のパトロールキャップに似ているだろう。
一方保安局用の制服は保安隊と区別するために、開襟型でもダブルボタンになっている。
色は茶色と黒が用意され、それぞれの部署に割り振られた。(部署については後々語ることにしよう)
茶色の制服の場合は保安隊とは違い、上着とズボンがダークカーキであり、シャツは白などでは無くライトカーキだった。
黒の制服の場合は戦闘服のシャツは黒いが、上着を着る場合には白いシャツを着用した。
帽子も保安隊と区別するために官帽では無くケピ帽が制帽に採用された。
また略帽にはキャンペーン・ハットという物が採用された。(ガニー軍曹やボーイスカウトの帽子と言えば分かるだろう)
ちなみに帽子を担当した人はアメリカ旅行によく行っており、そこで見た帽子を取り入れたらしい。