飲みに行くまで
集まった仲間たちのことと飲みに行くまでの流れについてです。
※飲酒は20歳から
そう、あれは所謂ワンナイトってやつだ。
あれからホテルに急いで帰り、チェックアウトを早々に済ませて、電車を待っている間に私はそれまでの整理を頭の中で必死にした。
仲間たちと会うとなった日、少しだけ早起きをして日頃は薄化粧で済ませている顔を、化粧ではっきりとさせてみた。
大人っぽさをがんばって出してみようとしたのである。
しかし、日頃からキラキラしている女子には敵わない結果となった私の顔面なので、少しばかり意識を地球の裏側まで飛ばしてみたりなどした。
そして、仲間たちと夜には飲むことになったために宿泊用のバッグとハンドバッグを持って家を出た。
新幹線で数駅の場所が集合場所だったが、少しばかり時間がかかった。
その間、仕事に使うニュースのピックアップをタブレットで行いながら、メッセージアプリのやり取りを仲間たちと行った。
『新幹線なう』
『もう着いた』
『集合時間より一時間早く着くとかどんなに楽しみなの?笑』
『お土産求む』
『安心しろ、お前の分はない』
『嘘だ!ほら、乗り換えの駅に寿司売ってたから買ってきてくれてるんだろ?』
『そんなものはない』
『ごめーん、少し遅れる』
『駅に着いたとして、集合場所に辿り着けるか分からない』
『分かった、着いたら教えろ』
みんな変わらなくて笑ってしまう。
社会人になると色々と薄汚れていく感じがしたが、気軽に話せる友人の存在はありがたい。
駅に着くと改札口にて集合とメッセージアプリに残されていたため、向かうと既にほとんどが揃っていた。
残るは私とよく話す女友達のみ。
「いやー、迷子防止対策ありがとう!イケメンの気遣いやん!」
「せやろ!もっと崇めろ!そして彼女に伝えてくれ!」
「おう…君の彼女にちゃんとフォローしてあげとくから…うん…」
相変わらず彼女最優先の友人であるのが佐伯和人である。
大学一年のときに英語の講義で被ったのをきっかけにずっと友人関係を続けており、同じ学部でもあった。
「さっきから彼女の惚気ばっか聞かされて飽きたわ…」
そして、和人の惚気話被害者が相本琢磨。私のツーショット写真の相手である。
元々は別の大学に通っていたが、和人の高校時代の同級生であり、途中から一緒に遊ぶようになった一人である。
「ごめん!私が最後やったか!」
最後に合流したのが私の女友達であり、大学のときに同じ学部で仲良くなった東城優花。
傍目から見ると男女4人のダブルデートとか思われるかもしれないが、和人の彼女はこの中にはおらず、単なる友人の集まりなのである。
ちなみに和人は彼女に全て報告する忠犬のため、今回の集まりも了承済みとのこと。
本当に変な接点で友人関係となったが、卒業して4年になるのにまだ集まれるのはとても嬉しかった。
集合してからは駅前のコインロッカーに荷物を預け、そして食べ歩きへと向かった。
「あわよくば、今度の彼女とのデートにくるわ!今日は下見させて!」
「はいはい、彼女とは良好そうで何より…」
「佐伯くんの彼女最優先は相変わらずだね。」
「2人が来るまでずっと惚気話でな…もう既に疲れた…」
「まあ、美味しいもの食べろ…その気持ち分からんでもないから…てか、名物食べたいんだけど、どうやって行けばいいの、これ?」
「はい、各自スマホでリンク貼ってけ!良さそうな店は保存!」
「道案内任せまーす!」
なんだかんだざっくり食べたいものや名所は女性陣が提案して、男性陣が取りまとめて連れていく。これがいつもの私たちの遊び方なので慣れたものなのである。
ついでに男性陣の行きたいとこはさりげなく挟んでくるので、大人しく着いていく。
デートの下見と騒いでいた和人の意見もあり、定番スポットを回りながら名物ご飯を食べ、夕方には有名な観覧車に乗ろうということになった。
「観覧車…懐かしい…佐伯くんが1人で乗って、その次のに私たち3人が乗ったという変な遊び…」
遠い目をしながら私がぼやいた。
「あったなー。4人で乗らないんだ!って案内の人がビビってたよなー。」
琢磨も遠い目をした。
「あったあった。あれ面白かったわー。1人なのにめっちゃ佐伯くん写真送ってくるの笑った。」
優花が声をあげながら笑う。
「あの時はフラれたばっかりだったけど、今はかわいい彼女おるから!今日はしないからな!」
和人がムッとさせながら言うも、私たちは笑いが止まらなかった。
観覧車が動き出すと夕方だったのもあり、夜景に変わりつつある景色を眺めながら写真を撮る。
「そういえば、彼氏できた?」
「佐伯くん、相変わらずいきなりくるな。私はいない。優花ちゃんは?」
「私もいない。仕事と家の往復だわ。」
「えー、つまらん、琢磨は?」
「おらんなぁ。弟が今度結婚することになって、妹も結婚しそうやけど…」
「あー、下の子に視線がいってるから今はまだ追求がきてないパターンだ!」
「そう、それ!でも、下に先越されるって中々に精神的にくる…」
「親から言われない方がまだいいよー。私はまだなの?って最近すごくて…」
「優花ちゃんのとこもか…私もこの間言われかけたけど、体調崩してたから逃げることに成功した。オタ活は相変わらず楽しい。アニメ捗る。」
「清香ちゃんは体調気をつけて?ちゃんと寝て?」
時折、和人が挟んでくる恋人状況確認にはいつもドキッとさせられるものの和人以外恋人がいない3人というのがいつものパターンだ。
まあ、自然消滅したばかりなのでやり過ごしやすくて何よりの状況だった。
運は私に味方したとこの時は思った。
「そういえば、この間琢磨は職場にかわいい女の子おるって言ってたやん?どうなったの?」
「和人さ…いや、まあ、業務時間違うし、別部署だから何も無し。」
おう…まあ、さすがにみんな大学生のときより時間は進んでるよね。
「街コンとか行ってみたら?女の子寄ってくるんじゃない?」
「清香ちゃんはこの間行ってたよねー。」
「連絡先は交換したものの結局何ともならんかったけどね。でも、男性の勤め先と雰囲気で女の子たちは群がると観察してて思った。」
「あー…というか、清香ちゃん、何してたの?」
「最近の同年代の人間観察と私の今の沼への布教活動行ってた。」
「ねえ、街コンの意味知ってる?」
街コンの意味は知っていたが、趣味を聞かれて説明せざるをえなかったのだ。
私は素晴らしいものの良さを伝えたかったんです…アニメってスゴいんだもの…サブカルチャーありがとう…グッズと円盤は貢ぐ…
というか、街コン勧めてしまったな…
「琢磨、行ってきたら?俺は彼女おるから同伴できんけどな!」
「えっ?うーん、考えてみる…」
おっと、検討ということは今後行くのか…。
まあ、みんな恋愛できるときにして、そのうち結婚していくんだろうし、他人が口を挟むべきではないなと思い、それ以降は街コンの話はしなかった。
一度、ホテルにチェックインして荷物を預けた後、再度集合して飲みに行くことにした。
優花は次の日に家の用事があるらしく少し飲んだら帰るらしい。
和人も彼女のとこに遊びに行くから二日酔いにはならない程度にとのことだった。
一軒目で飲んだ後に優花は帰るとのことで3人で駅まで見送り、その後3人で飲んだ。
それからがまずかったのだ。