魔王がくそざこ過ぎて同省もねぇ。もっと強いやつとかいねぇのかよ?あ、居たわ
「貴様、人間の分際でここまで来るとは、いい度胸である。いいだろう、相手をしてやろう」
相手をしてやろう?
「ばっかじゃねぇ!?相手をしてやるのはオレ様だよ!」
武曽が駆け出す。右手と左手に力を込め、何かを掴むように、して魔王へと襲い掛かる。
「侮るな!」
魔王が冷静に右腕を武曽へと向け、力を放つ。
闇だ。
真っ暗な闇が、魔王の手の前には現れ、ソレは波動のごとく放たれる。
その闇は、衝撃となり、辺りを響かせて、闇が武曽を飲み込まんと、広がった。
広がった。
そう――。
広がっただけだった。
「む?」
消えていた。どこにもいないのだ。
武曽はどこにもいない。
広がった闇が晴れると、そこには何もなかった。
「本当の闇ってのはこう使うんだよ」
「上だと!?」
魔王の頭上、そこに、武曽は左右の手に黒と紫の稲妻の塊を手にして、佇んでいた。
「<ビックバン>」
両手の闇を魔王に向かって放つ、ソレは雷撃のように。もしくは、深い霧のように。魔王を覆いつくし、はじけた。
この程度かよ、ザッコ!
闇は晴れ、玉座は吹きとんだ。無論――魔王も。
武曽は着地する。
あーあ――魔王ならもうちょっと、楽しめると思ったが、これ一撃でおわるのかよぉ。
外の雲から光が射す。
これはまた。
魔王を倒したことで、ここを覆っていた。闇が晴れたのか……。
なんだこれ。
こんな、ザコに神も手を焼いていたとか。はっ――
これで世界は救われました。
ハイハイ。めでたしめでたし。で?
オレ様が望んていたのは、こんなつまらないことじゃないんだがな。
「………」
そうだ。いい事思いついた。
おそらく、この世界にはもう一人、時空管理者がいる。さっきは忘れていたが、二人一組なのだ。
時空管理者。そいつを潰しに行くのも楽しかもな。
いや、それだけじゃない。そいつを逃がして、仲間でも呼ばせれば?
はっ、楽しめそうだ。
手始めに、そいつを見つけるか。
オレ様が直々に出向いてやろう。
「<サーチコンソール>」
目を瞑り、感覚を研ぎ澄ませ、この世界の力の強いものを探す。
時空管理者なら、この世界の者よりも大きな力を持っている。これならばすぐに見つかる。
さっきの街に323の奴……。なんだよ、オレ様が凍らした奴より弱いじゃないか。
いや、まて。
まだ二人、強い奴がいる。
しかも、ここに向かっている?
片方は760。もう一人は――930!?
こいつは面白い!
そして――見ている間に、二つが到着する。魔王の玉座があった場所を向く、オレ様の背後に。コツッ――と二つの足音が響いた。
「随分と、派手にしましたね」
「あらぁ。どんなのかと思ったけれども……意外と、普通の人間なのねぇ」