宝石剣ナイリング③
「そや――できるやろ?」
シノが言うと、オルデリアが深くため息をつく。
「できるけど――こんな忙しい時に来なくても……」
だらりと、肩を落として言うオルデリア。
依頼を受けるのは嫌そうだ。
「金は弾むで?」
右手の親指と一刺し指を繋げ、円を作りそれをオルデリアに見せつけるシノ。
「いや……守銭奴のアンタと一緒にしないで……」
よけい気を落としてんぞ……。
「まあまあ――できるやろ?」
「できるけど……面倒じゃないでしょうね……」
シノに疑いの目向けるオルデリア。
信用されてないな……。
「ないない」
言うシノに、オルデリアが脱力して――、
「いいわよ――でも、五日は待ちなさいよ。これだけの質量、いじるの結構大変なんだから」
「いいで――ほな、行こうか」
言って、シノは扉を開けて出ていく。
自由だな。
「頼むぞ」
「ええ」
オレ様もシノに続き外へでた。
外へ出ると、シノはオレ様を待っていた。
「ほな、次いくで」
「次?」
今度は行こうってんだ……。
「っても、どこに行くわけやないけどな。少し歩きながら話そか。まだ、あんさんの原点を戻す方法について説明することがあるだけや」
言ってシノは歩いていく。
オレ様はその後とつけ、横並びに歩く。
「で?まだ説明してないことって?」
どこに行くのかは知らないが、シノについていきながら、問う。
「あんさんが原点を最強にするのに倒さなかん相手についてや」
「ああ――あのロボットとか、ドラゴンのことか?」
「いいや?あれは――ただあんさんに身の程を教えるために用意しただけや」
「はあ?」
「あんさんが戦う相手は七人――その七人を倒せばあんさんは晴れて全世界、異世界最強って訳や。まあ――それなりに七人も強い強敵やけどな」
「で?その七人って?」
「傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰――これらの原点を持つ最強と戦ってもらう」
「どこの七つの大罪だよ……」
「よくしっとるな。7つの大罪ってのは、力が強い上の大罪。世界の意思さえもその存在を大罪と指定したもんや。やから――強い。普通の物とは異なる」
「んだよ――もっと特殊な奴らが敵かと思ったら、案外普通なんだな」
「んにゃ?そうでもあらへんで?大罪を原点として持ってるのは珍しいことや。ぶっちゃけそれだけでも普通の世界じゃ世界最強クラスやからな。大罪にくらべれば、転移や転生なんてものは大罪に比べればそうたいしたことあらへん」
「へー」
「で?じゃあさっさとそいつら倒しに行こうじゃねぇか」
「やから――そのために剣頼んだんや」
「別にそんなもんなくても問題ねぇよ。オレ様ならそんな連中一ひねりで追わせてやる」
「はあ……。あんさん自分が弱いのいい加減理解した方がええで?」
「はあ?なんだと!?」
そこでオレ様は立ち止まった。
気づけば、街の大通りを出て、広場のような大きな池がある場所へと出ていた。
宝石の光に照らされた水面が、キラキラと輝く、美しい宝石の手すりに囲まれた池だ。




