なんだよこのガキ! ふざけたことをぬかしやがって、ああん?じゃあてめーはなんだって言うんだ!
キーの高い声にオレ様は振り向く。
(こいつ……)
気配なんてなかった、誰かがオレ様の背後に立った。そんな気配は。
けれど――その子はオレ様の後ろに笑顔で立っていた。
11、12程の小さな女の子、まだ幼い顔立ちに見た目の小ささにあった無邪気の蒼い大きな瞳。幼い笑顔。そんな彼女の髪は美しく、赤い薔薇の髪飾りをつけており、ツヤのある金髪で腰下まであるだろう長い髪が、風に緩やかになびいている。けれど、服装は違和感だらけだ。ファンタジー溢れたこの世界には当てはまらない恰好。白いキャミソールに紫色のダボっとしたパーカーを羽織い、黒のヒラミニスカート。胸には金のペンダントをしている。そして――一番違和感があるのは、彼女の腰に巻くベルトだ。二つの太いベルトをクロスする形で止めており、その左右にはガンホルダー、その中には勿論、銃――彼女の手には収まらないであろう蒼銀の銃が収まており、ベルトには他に謎の緑や青の液体の入った試験官やフラスコがいくつもぶら下がっていた。
ありえない――ありえない。
何がありえないかというと、この世界には銃はないのだ。
無論、オレ様の知り合いではない。
知らない子だ。
何人も人がオレ様たちをすれ違っていく中で、女の子はオレ様に笑顔をニコニコと向けている。
「なんだ?なんでこないんだ?」
女の子の言ったことに、オレ様はそのまま訊き返した。
女の子はそれにニカッと笑って。
「全員つかまっちゃったよ?」
(何言ってやがるんだこいつ……)
「お前は……」
(オレ様を他の連中のように捕まえに来た、奴か?ハッ――だったら舐めやがって。このオレ様がこんなガキに捕まる訳がなだろがっ)
だいたい――他の連中は何をしているんだ。そう思う。オレ様の仲間はそれなりにやり手だ、それを捕まえるとなると、相当な力を持った奴がいることになる。
だが――それと同時に妙だとおも思う。何故、なんの騒ぎも起きていないのだろうか。
街はガヤガヤとしているが、なにか事件が起きたという感じではない。
仲間なら――間違えなく何かの信号を出すはずだ。それなのに何もないのだ。
それに――わざわざこんな女の子が出てくるのもおかしな話だ。
普通なら、兵士でも出てくるところだろうに。
「まあ――フィーはその捕まえている奴らと何の関係もないけどね?」
「はあん?」
訳の分からない事を言ってくれる。
関係のないのなら、なんだというのか。そもそも――何故そんなことを知っているのか。




