くそザコナメクジの信号機を吹っ飛ばしたら、なんで感謝もしねぇんだこの狸野郎は
様子でも見るか?
こんな茶番。
「――やっ、やめてください!」
手を引かれ、女の子が叫んでいる。
………。
ククッ。まあいい。こんな面白いもの、様子見で終わらせる訳にもいかない。
「おら、お前ら」
迷わず武曽は声を掛けた。
「あん?」
三人がオレ様に気づき、こちらを振り返る。
そして、よく分からないというか、どーでもいいが、三人がいちゃもんをそれぞれ言っている。
あーハイハイ。分かりますよ。分かりますよその気持ち。
お楽しみ中がどうだがか。そうね――で?このサル風情が。
青髪が何かを腰から取り出す。
お?白いピストル?
白色の、片手に収まる程の自動式拳銃だった。
撃ってくるな。
それは案の定、迷いもなく引き金を引かれ放たれた。
パンッ――‼
抜けた音が裏路地に響く。
だが――なんだこれ?豆鉄砲じゃん。
弾丸は、武曽の体に当たることはなく、寸前のところで見えない何かに阻まれ、弾けた。
「なっ――!?」
撃った青髪は勿論。さっきまで、笑っていた他の二人の笑いも止まった。
「なんなんだ!?」
連発して撃たれる。
だが、オレ様には通じない。すべて、見えない、何かが阻み、はじけ散る。
いいよ。いいよ。その反応、アホみてぇだ。
なにせ、オレ様の周りには常に、一定の遠距離攻撃を防ぐバリアーが張ってある。そんなおもちゃじゃ当たりはしない。
さて――。
「昼間っからチャカ振り回してんじゃねぇぞ」
飛び込む、それも常人には見えない速度。武曽が高速で移動し、青髪を蹴りつけ、金髪を投げ飛ばし、赤髪には渾身の右ストレートをくらわしてやる。
三人が唐突に吹き飛んだ。
はっ、雑魚がっ!
近所迷惑なんだよ!
さてと。
「おい。お前」
しゃがみこんで、頭を抱えてしまっている。女の子に声をかける。
けれど、そのまま、動こうともしない。
訊いちゃいねぇな。めんどくせぇ。
「おい――」
「きゃっ」
腕を掴み無理やり立ち上がらせ、こっちを向かせる。
「お前、なんで弱いふりなんてしてやがる。異世界から来てるなら簡単にどうにかできるだろ」
「――っ」
なんだよこいつ。
急に振り払われた。
それから、女の子はバックステップで下がり、メガネを外し、こちらをにらんで警戒の姿勢を見せた。
は?
まあなんだよ、メガネ外した方が可愛いじゃんか。
その表情は、メガネをかけていた時とは違う。鋭い表情となっている。
メガネを媒介に性格が変わるタイプか。
二重人格か。それともただの自己暗示か。どうでもいいが――なんだこれ?
「お前、なんでこんなくそ雑魚ナメクジどもに、抵抗もしない」
「それは、こちらの質問です。何故?アナタ、ワタシを異世界から来たものと分かりました?」
答えによってはと――
いっちょ前に、腰から青髪が持っていたのと同じようなピストルを出し、構えてくれる。さっきので、オレ様に効かないって分かんねぇかな?
なんだ、こいつもバカか?
まあいい。答えてやろう。オレ様は優しいからな。
「簡単な話だろ?オレ様も異世界から来たってだけだ。まあ、ついさっきここの神様吹っ飛ばしたばっかなんだけどさー」
答えた武曽に、女の子は怪訝な顔をした。
「神を吹っ飛ばした?」
「ああ、ザコだったぜ。神のくせにレベル500、レアティ世界に着ちまうとは。ああ――それと、オレ様は異世界転移じゃない。異世界転生。まあ、神を吹っ飛ばしてみたらこれだから、こどもからやり直してないのを見ると、空間から無理やりこの世界に落とされたってわけだ」